ネット上の悪質な書き込みで名誉毀損、対応策は?

小町のリーガ~ル道場

 剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、インターネット上の書き込みで名誉毀損を受けた場合の対応策などについて解説します。

 有名・無名を問わず、個人や企業がインターネット上で中傷を受けたり、勝手に個人情報をさらされたりするケースが後を絶ちません。法務省の調査によると、全国の法務局が2016年に扱った人権侵犯事件のうち、ネットへの投稿を巡る事件は前年比10%増の1909件に上り、10年前の6.8倍に増えています。このようなネット上での攻撃に対し、私たちはどんな対応をとったらよいのでしょうか。

 壱本目! 画面を証拠に残し、警察に相談を!

 ネット上の攻撃には、「馬鹿」「死ね」といったいわゆる悪口や、「殺すぞ」「火を付ける」といった脅迫じみたもの、「〇〇は不倫している」といった名誉毀損、プライバシーをさらして侵害するものなど、色々なパターンが考えられます。

 これらの書き込みは、その程度や状況によっては侮辱罪、名誉毀損罪、脅迫罪、威力業務妨害罪といった犯罪に当たる可能性があります。もしも被害を受けたら、書き込まれた内容が分かる画面を保存して証拠化し、警察に相談するというのは対応策の一つになるでしょう。

 中でも「名誉毀損」については、ネット上に社会的評価を低下させる情報が流布されたままだと、被害が長期化、拡大化する場合があり、深刻な人権侵害です。そこで今回は、ネット上で名誉毀損を受けた場合、警察に相談する以外の対応策にはどんなものがあるのか、取り上げてみたいと思います。

 弐本目! 事実を書き込んでも名誉毀損になる!

 名誉毀損とは、ある人物に関する事実を不特定多数の人に向かって示して、その人物の社会的な評価を低下させることをいいます。ポイントは、ここでいう「事実」は、真実であるかどうかを問わないということです。偽の情報ならもちろんのこと、たとえ本当のことだとしても、「〇〇は会社の金を横領した」とか「□□部長は△△と不倫している」といった情報をネット上に書き込めば、名誉毀損に当たります。ただし、過去の判例などによれば、「公共の利害に関わる内容について、書き込みの目的が専ら公益目的であり、かつ真実であると証明できた場合」には、名誉毀損罪で処罰されたり、損害賠償請求を受けることはないということになっています。

 参本目! 情報発信者を特定し、損害賠償請求も!

 話を対応策に戻しましょう。もちろん警察に相談するのも一つの手段ですが、それ以外の対応策としては、「削除請求」と「損害賠償請求」が考えられます。

 削除請求については、書き込まれた情報によって「人格権が違法に侵害されている」という要件を満たせば、情報の発信者が分かっている場合は発信者本人を対象に、発信者が分からない場合には、その情報が掲載されているウェブサイトの管理者やサーバー管理者などを対象に、情報の削除を請求することができます。

 損害賠償請求については、管理者が削除請求に正当な理由なく応じなかった場合などを除いて、発信者本人を対象とすることになります。ただ、匿名の掲示板などだと、発信者が誰なのか分からないことがあります。

 そんな場合に備えて、「プロバイダ責任制限法」という法律が2002年に施行されました。この法律には、一定の条件を満たせば、発信者の住所・氏名などの情報を有しているプロバイダー(インターネット接続業者)に対し、名誉毀損の被害を受けた人の求めに応じて、発信者情報を開示する義務を定めています。匿名といっても表面上のことで、ネット上で何らかの情報を発信すれば、IPアドレス(ネット上の住所)などから発信者を割り出すことが技術的に可能となっています。書き込んだ人が分からなくても、泣き寝入りをせず、まずは弁護士に相談してみてください。

◇リーガ~ルポイント◇
 ネット上の悪質な書き込みで名誉毀損を受けた場合は、警察への相談のほかに、ウェブサイトの管理者に書き込みの削除要求をしたり、情報発信者に損害賠償を請求したりできる。発信者が分からない場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づいて、プロバイダーに発信者を割り出す情報を開示させることができる場合がある。

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。

 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。