「定期代」もらいながら自転車通勤…返還義務や処分の可能性は?

弁護士ドットコムニュース

 通勤のための定期代を、会社から支給されている人は多いでしょう。もし定期代をもらいながら、無断で自転車通勤した場合、どうなるのでしょうか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも「昔の自転車通勤を告発されてピンチ」という相談が寄せられています。

  相談者は、定期代をもらいながら、1年前まで約2年間に渡って会社に無断で自転車通勤をしていたそうです。会社の雇用契約書には、通勤手当について、「会社が定める最低廉となる定期代を、月上限3万円まで支給」と定額で支払われる旨が書かれています。また、就業規則には「特別に認められた者以外の自転車、バイク、自家用車での通勤は禁止」となっていました。

  支給された定期代を使わずに通勤する社員は、会社に交通費を返還する義務があるのでしょうか。また懲戒処分の対象になってしまう可能性もあるのでしょうか。大部博之弁護士に聞きました。

●交通費の支給基準があるかどうか

 「支給されている通勤定期券代が『賃金』にあたるのか、あるいは、会社が『業務費』として実費の弁済をしているにすぎないのかの問題です」

 大部弁護士はそう指摘しています。それぞれどういった違いがあるのでしょうか。

 「ポイントは、交通費に関する支給基準があるかどうかです。たとえば、会社の最寄り駅と自宅の最寄り駅を結ぶ公共交通機関の1か月定期券代相当額などというように、実際にどの交通機関を利用しているかどうかに関わらず、住所地から想定される合理的な金額をあらかじめ会社で決めている場合があります。この場合は『賃金』とみなされますので、実際には、自転車通勤をしたとしても、返還の必要はありません」

 では「実費相当額の交通費を支給する」と定めた会社では、どうなるのでしょうか。

 「この場合には、支給基準というものがありません。あくまでも実際に従業員が利用した交通手段に従って、実費相当額を支給するというものです。この場合は『業務費』とみなされます。したがって、自転車で通勤しているのであれば、電車通勤をしたことを前提とする交通費の支給は受けられないのが原則です」

●返還義務はなくても、懲戒処分の対象にはなる

 今回の相談者のケースはどうなりますか。

 「雇用契約書で通勤手当について『会社が定める最低廉となる定期代を、月上限3万円まで支給』と規定されていることからすると、会社が金額を決めて、払っているようです。交通費に関する支給基準が定められていますので、先ほど説明したように賃金とみなされます。したがって、自転車通勤をしていた期間について、当該通勤手当の返還をする必要はありません」

 相談者の交通費は「賃金」扱いなので、返還する必要はないのですね。

 「そうなります。ただし、賃金の問題とは別に、就業規則には『特別に認められた者以外の自転車、バイク、自家用車での通勤は禁止』との規定がありますから、この相談者が会社の許可を取らずに自転車通勤をしていたのであれば、禁止事項に違反したとして、懲戒処分の対象となりえます。

 この場合、違反の内容としてはかなり軽微なものに属するといえ、処分については、就業規則の定めによりますが、戒告ないしはけん責といった処分が相当でしょう」