シングルマザーで収入減、「養育費不要」の約束変えられますか?

小町のリーガ~ル道場

 剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、シングルマザーの養育費について考えてみます。

 結婚をしないまま子供を産んだ女性が、別れた男性から養育費をもらえるかどうかを尋ねる投稿が、掲示板「発言小町」にありました。

 交際していた男性と別れた後、妊娠に気付いた女性は、中絶を求める男性に対し、「養育費も認知もいらないから」と告げて出産に踏み切ったといいます。しかし、子供が4歳になろうとする頃、自身の収入減を理由に、「養育費が欲しい」と男性に連絡。すると男性は「結婚して子供もいるから困る」などと言って拒否したそうです。ちなみに、男性の妻は、「隠し子」の存在には気付いていないようです。

 投稿主の女性は「養育費もらわないなんて口約束しかしてないし、もらえますよね」と問いかけていますが、どうすれば養育費を受け取ることができるのでしょうか。

壱本目! 認知すれば扶養義務が発生、子供に相続権も

 子供の養育費を請求するには、請求先の親(多くの場合は父親)と子供との間に法律上の親子関係があることが必要です。投稿主の女性のように未婚の母として出産した場合、子供は母の戸籍に入り、法律上の父親は不在の状態になります。

 父母は結婚していないけれど、父がその子を法律上の自分の子であると認めることを「認知」といいます。認知によって、父親には法律上、子供を扶養する義務が発生し、子供の母親は養育費を請求できるようになります。また、もう一つ大切な効果として、認知された子供には、父親の他の実子たちと同じように相続権が認められるということも覚えておきましょう。

 父親の戸籍には認知した旨の記録が残ります。ただし、他の市区町村に転籍をすれば、新たに作られる戸籍には、認知のことは記載されません。これは、今の家族に「隠し子」がばれないようにする“裏技”になり得ますが、転籍前の戸籍を確認すれば認知したことが分かるので、ずっと隠し通すのはなかなか難しいでしょう。

弐本目! 養育費を請求する権利は勝手に放棄できない

 投稿主の女性は出産前に「養育費も認知もいらない」と告げて出産しています。このような出産前の約束は有効なのでしょうか。

 答えはNO。養育費を請求する権利も、認知を請求する権利も、子供のための権利です。民法881条には「扶養請求権の処分の禁止」が明記されています。「扶養請求権」とは、扶養を必要としている人が、扶養が可能な人に扶養を求める権利のこと。たとえ日頃、子供の面倒を見ている母親であっても、その子の権利を勝手に放棄することはできないというわけです。また、認知請求権についてもその性質上、放棄することはできないとの最高裁判例があります。

参本目! 認知に応じない時は裁判所で「強制認知」の申し立てを

 父親が自発的に認知に応じてくれる(任意認知)場合は問題がありませんが、今回のケースのように、父親が認知に応じてくれない場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

 認知に応じない父親に対しては、最終的には裁判で認知を強制する「強制認知」という方法が認められています。具体的には、まずは家庭裁判所に「調停」(第三者を交えた話し合い)を申し立てます。これを「調停前置主義」といい、いきなり裁判を起こすことは認められていません。

 調停で話し合いがまとまらなかった場合には、認知の訴えを起こし、最終的には裁判で認知すべきか否かが言い渡されます。 認知調停、認知訴訟の現場では現在、DNA鑑定が行われるケースが多くなっています。その費用は20万~30万円といったところでしょうか。

 もしも、父親がDNA鑑定に応じなかったら? 母親側が、その他の事実(例えば、子どもを妊娠することのできる時期に性交渉があったこと、父親と子の血液型が矛盾しないことなど)を主張・立証して、勝訴することはあり得ます。父親がDNA鑑定を拒否すると、裁判官の心証に影響するといわれています。「鑑定を拒否するということは、鑑定した場合、自分に不利な結果が出ることを確信しているのでは? 怪しい!」と裁判官も考えるというわけです。

 男性が認知や養育費支払いに応じなくても、決して泣き寝入りする必要はありません。戦う道は残されているのです。

◇リーガ~ルポイント◇
 別れた男性に子どもの養育費を請求するには、男性の「認知」が必要。養育費を請求する権利は子供のものなので、母親でも勝手に放棄することはできない。男性が認知に応じない場合は、家庭裁判所で「強制認知」の申し立てを!

発言小町のトピはこちら↓
元彼ムカツク

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。

 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。