「パワハラ」の証拠、録音できず…それでも立証するための秘訣は「迅速な動き」

弁護士ドットコムニュース

 パワハラにより精神的な被害を受けたことから、仕事をやめることになるかもしれない。パワハラをした上司や会社に対して、損害賠償を請求したい――。そんな悩みを抱えた人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せました。ただ、その人は証拠として有効な「録音や録画」は持っていないため、「他に有用な証拠になるものはありますか?」と聞いています。

  録音や録画が、パワハラの被害を立証する上で役立つものだという認識が広まっていますが、急な発言をされた場合には、録音録画が難しい状況も想定されます。録音、録画以外にどのような証拠を集めると良いのでしょうか。古屋文和弁護士に聞きました。

 ●録音・録画なければ泣き寝入りするしかない?

  「パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)の立証のために、パワハラの直接の証拠となる録音・録画が有効であることは言うまでもありません。もっとも、録音・録画ができない場合でも、それ以外の証拠を複数集めることで、パワハラの事実を間接的に立証することが可能です」

  具体的にはどのような証拠が有効なのでしょうか。

  「パワハラをした上司や会社がパワハラの事実を否定する可能性があるため、パワハラの被害者としては、具体的な被害日時、パワハラの態様などを客観的に証明する必要があります。そのために有効な方法について、具体的に説明します。

 (1)会社内の相談窓口を利用する

  会社内にハラスメント等の相談窓口がある場合には、パワハラを受けた後、できるだけ早期に相談を行うことで、相談実績を残すことができます。

 (2)書類やメールを残す

  業務に関係する指示等の形でパワハラが行われた場合は、その業務に関する書類やメール、LINEなどSNSでのやりとりを残しておくことで、パワハラの立証に役立つ場合があります。

 (3)医療機関で診断書やカルテに残す

 パワハラを受けた結果、うつ病などの症状が発症することもあり得ます。その場合には、心療内科等の医療機関で診察を受け、その際に医師に対して詳細に事情を話しておく方法があります。後に、診断書やカルテ等がパワハラの立証に役立ちます。

 (4)目撃者を集める

  実際にはなかなか難しいことも多いですが、パワハラを目撃していた同僚等の第三者から、パワハラの事実があったことを証言してもらったり、陳述書にまとめてもらう方法も有効です。1人だけではなく、複数の目撃者の証言があると、立証に成功する可能性が高くなります。

 (5)日記に残す

  日記等にパワハラの事実を残しておくことも考えられます。訴訟になった場合、日記等だけでは直ちにパワハラの事実があったと立証するのは困難な場合が多いですが、上記(1)から(4)などの客観的な証拠と合わせて残しておくことで、立証に役立ちます」

 ●「できるだけ早く行動を起こすこと」が重要

  なお、古屋弁護士は続けて、証拠を残すための行動をとる上で、重要なポイントがあるといいます。

  「これはパワハラに限ったことではありませんが、法的手続に向けて有利な証拠を残す際のポイントは、証明したい事実(今回のケースではパワハラの事実)が発生したときに、できるだけ早く有効な証拠を残すための行動を起こすことです。

  例えば、今回のパワハラのケースで、パワハラが発生した後、数か月たってから、会社のハラスメント相談窓口を利用したり、医療機関を受診した場合はどうでしょう。

  せっかく証拠を残したにもかかわらず、期間が経過してしまった分、『なぜパワハラを受けてつらい思いをしたのに、数か月もハラスメント窓口に相談をしなかったんだ』とか、『うつ病の本当の原因はパワハラではなく、他にあるのではないか』などという反論の隙を与えてしまうことになります。

  被害者側からすれば、証拠を残すための知識を有しているかいないかで、後の法的手続の結論を大きく左右することになるため、決して他人事とは考えずにこれらの知識を備えておく必要があります」

 ●会社側の対応は?

  「パワハラを含む多くのハラスメントの増加が叫ばれている状況からすれば、ハラスメントが起きた後にどのように対処するかといった事後的な対応だけでは不十分です。

  今回お話ししたように、被害者が証拠化を行う場面も以前に増して増えています。会社としては、職場の人間関係の把握と調整に努め、ハラスメントが発生する可能性をいち早く察知し、事前に対処できる体制を整えることが重要です。具体的には、会社内にハラスメント相談の窓口を設置することなどが考えられます」