変わる結婚、夫婦と認められる基準は何?

小町のリーガ~ル道場

 剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、法律上の結婚(法律婚)と事実婚の違いについて考えてみます。

  6月は「ジューンブライド」のシーズン。最近、結婚式は挙げたとしても婚姻届を出さない「事実婚」や、子供ができてから結婚を決める「授かり婚」など、様々な結婚の形があります。でも、結婚の形によって、法律で認められること、認められないことがあるのを知っていますか?

壱本目! 夫婦と認められるには二つの条件が必要

  最近は「事実婚」という言葉がよく使われますが、法律上は「内縁」という言葉が慣用的に使われています。ほぼ同じ意味ですが、「内縁」には、「親が反対するので婚姻届が出せない」「日陰の身」といった印象があり、「事実婚」が広まっているようです。

  事実婚は、婚姻届を提出した夫婦(「法律婚」と呼びます)と同様、一定の条件を満たせば、健康保険の被扶養者や遺族年金の受取人などになることができ、離婚の際に慰謝料を請求する権利なども認められています。

  その一定の条件とは、(1)「婚姻意思」がある(2)社会的・習俗的にみて夫婦と認められる実質がある――という二つの条件が必要です。

  (1)は「二人で夫婦として暮らしていこうという意思を相互に持っていること」。(2)は、「夫婦と言えるような共同生活の実態がある」ということ。具体的には、結婚式や結納などを経ているか、二人の関係が継続している期間、周囲(親族や友人)の認識などを考えて、条件を満たしているかどうかを判断します。つまり、二人が思い合っているだけではダメで、周りが納得するような「夫婦の形」も必要だと言うことです。

  ただし、子供の出生などのように戸籍の記載に関することや、夫婦以外の第三者に影響を及ぼすことは、事実婚には認められていません。

 弐本目! 婚姻前の夫婦の子供は戸籍上、母親とだけ「親子関係」にある

  最近では、「できちゃった婚」「授かり婚」で、生まれたばかりの赤ちゃんや子供と一緒に式を挙げるケースも珍しくなくなりました。実は入籍のタイミングで、法律的な親子関係は違った形になります。

  民法772条1項には「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」とあります。つまり「法律婚」の夫婦であれば、生まれた子供は、出生届を出せば自動的に「夫の子」として扱われます。

  ところが、入籍しない場合、子供は母親の戸籍に入り、戸籍の父親の名前を記載する欄は空白になります。つまり、戸籍の上では母親と子供だけが「親子関係」にあり、夫との親子関係は認められないのです。

  この場合、夫と子供が「法律上の親子関係」になるためには、夫が役所で「認知」を届け出る必要があります。そうすれば、母親の戸籍に子供の父親の名前が記載され、「夫と子供の親子関係」が認められます。将来、父親の財産を子供が相続する権利も得られます。

  その後で、もし父親と母親が入籍したとすれば、子供は「法律上結婚している夫婦の間に生まれた子」、つまり、夫婦の「嫡出子」と変わるのです。

 参本目! 事実婚では、夫または妻の財産を相続することはできない!

 「相続権の有無」も、法律婚と事実婚との違いの一つです。

  法律婚では、民法890条で「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定められています。しかし、事実婚の場合は、かりに内縁関係と認められていたとしても、配偶者は相続人にはなれません。

  ただし、周囲(親族など)の理解が得られている状況で、事実婚の妻または夫に財産を遺贈する旨の遺言書を残すことによって、事実上、法律婚の夫婦の相続に近いことを実現できる可能性はあります。

◇リーガ~ルポイント◇
 事実婚には法律上、「生まれた子供を『夫の子』と見なすこと」「夫または妻の死後、その財産を相続すること」が認められていない。ただし、子に関しては「認知」という制度があり、相続は遺言書で「法律婚」の夫婦の相続に近いことが実現できる可能性もある。

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。

 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。