転職トラブル、入社時にサインした誓約書は有効?

弁護士ドットコムニュース

 転職の際、前の職場とのトラブルが起きることがありますが、その1つが、新しい職場との関係です。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、リラクゼーションサロンに勤務していた女性から、誓約書をめぐる相談が寄せられました。

 投稿者はそのサロンに入店する際、誓約書を書かされたのですが、そこには「当社で取得した技術の店外持ち出し禁止」とあったそうです。さらに、この店のメニューを他店で使用することや、退職後1年間、他店で勤務することを禁止することも記されていたそうです。

 投稿者は、「こういった業界ではどこも似たようなもので、著作権のようなものがない以上、どこのお店の技術か分からないですし、罰金または慰謝料を払わなくてはいけない程の明確な証拠も出てこないのでは?」と不安を抱いています。

 誓約書にサインした以上、他店への移籍や独立は諦めなければならないのでしょうか。林浩靖弁護士に聞きました。

●「競業避止義務」の観点から考えると?

 問題となっている誓約書の法的な意味は、退職後の「競業避止義務」を定めるものと言えるでしょう。

 このような、退職後の競業避止義務に関する合意の有効性は、以下の6点などを考慮したうえで、企業の利益と従業員の職業選択の自由の調整として、適切かどうか判断されます。(1)守るべき企業の利益の有無(2)従業員の地位(3)地域的な限定の有無(4)競業避止義務の存続期間(5)禁止される行為の範囲(6)代償措置の有無

 このような観点から、誓約書の内容をみてみましょう。「退職後1年間、他店で勤務することの禁止」は、あくまで期間が1年間と限定されていますし、「他店」というのは同業他社という意味でしょうから、勤務しているリラクゼーションサロンに企業秘密ともいえるような技術が全くない場合を除き、有効とされる可能性が高いと思われます。

 これに対して、「当社で取得した技術の店外持ち出し禁止」という部分については、勤務しているリラクゼーションサロンに特有の、もしくは、特徴的な技術やメニューについては、企業秘密に近い面があるので、誓約書は有効ですが、リラクゼーションサロン業界で一般的な技術やメニューについては、守るべき企業の利益はないものと考えられますので、この点については、誓約書の効力は及ばないものと考えられます。

林 浩靖(はやし・ひろやす)弁護士

 東京弁護士会所属。企業法務を中心に取り扱う事務所、金融商品被害を中心に取り扱う事務所を経て、事務所を開設。中小企業の企業法務、金融商品被害などを中心に業務を行い、原発被災者弁護団団員として、福島第一原発被災者の問題にも携わっている。

事務所名:林浩靖法律事務所