上司を味方にすると、ぐんと仕事がしやすくなる

楽しく働くための社内政治力

 「仕事をしていて、どんな時に“うれしい♪”と感じますか?」。先日、20~30代の働く女性たちが集まったセミナーで尋ねてみました。こんな答えが返ってきました。
 「上司から信頼されているんだな、と感じた瞬間」
 「上司にそれがどんなに些細ささいなことであったとしても、認められ、口に出して褒められたとき。もっと頑張るぞ~って思いました」
 「上司から仕事で評価され、お給料が上がったとき」
 上司の言葉や態度が、いかに私たちの働くモチベーションに影響するかがわかります。
 社内政治力って、ちょっとドキッとする言葉ですよね。自分とは縁がない遠い世界の話だと思う人もいると思います。だけど、実は私たちの身近にある話なのです。新規プロジェクトに参画するという大げさなことではなく、例えば「この仕事のやり方を、もっとこうすればやりやすくなるのに」といった、働いていれば自然に思いつく改善案を現実にしていく力です。
 「お客さんの目に留まりやすいようにパンフレットを置く場所を変えようか?」
 「人の動きがスムーズになるように、机の配置を変えてみない?」
 「ここに目安箱を置いて、社員の率直な意見を拾ってみては?」
 などの自分の意思を現実にしていく力、これが社内政治力だと私は思います。人を動かしていく力とも言えますね。その力を発揮するために上司との関係がとても大事になります。

理想の上司像と現実のギャップ~自分だけの正論(本音や美意識)は仕事と切り離す

 毎年理想の上司ランキングに芸能人やスポーツ選手の顔ぶれが並びます。思い描く理想の上司像は人それぞれ。しかし、目の前にいる現実の上司は、理想の上司とは別人です。理想と現実のギャップがつい私たちをイラッとさせます。
 私が銀行で仕事をしていたとき、直属の上司Aが毎朝デスクで朝ごはんを食べていました。始業時間前とはいえ、食べ物のにおいが朝の新鮮な空気を汚しているようで、「嫌だなー」と感じていました。「上司がこんなふうでは新入社員に示しがつかないではないか!」とも思っていました。
 このときの私の正論は、「朝ごはんは家で済ませてくるもの」です。正論というより美意識だったと思います。そんなイライラした気持ちは、つっけんどんな態度に表れ、上司に伝わります。上司はいつも「なぜ彼女は朝から不機嫌なんだろう?」と思っていたはずです。会社には、「机でモノを食べてはいけない」という規則はありませんでしたから、私は一方的に自分の美意識を上司に押し付け、不機嫌になっていたんですね。

上司のメンツをつぶさない~上司に嫌な思いをさせれば損をするのは自分である

 こちらが「働きづらい」と日々思っていると、上司も「彼女ってとっつきにくいし、働きづらいなあ」と感じるかもしれません。上司だって気持ちよく働きたいはず。一緒に働きやすい部下の方を可愛かわいがるようになります。
 上司Aは、私の後輩である新人B子をランチに誘うようになり、2人で楽しそうに仕事をしていました。私がランチに誘われることはありませんでした。その結果、どうなったか? B子は自分の希望する部署に異動が決まりハッピーに。私は希望も通らず昇格もせず、同じ仕事を続けることになり、げんなりしました。
 部下に不機嫌な態度をされるのは、上司にとって嫌なものです。それは、自分が部下を持つようになって、わかったことでした。

フォロワーシップを発揮する~上司はあなたの仕事を評価する人であることを忘れない

 「フォロワーシップ」のフォロワーは、皆さんよくご存じのSNSのフォロワーと同じ意味です。フォロワーシップを発揮するということは、上司をサポートしていきましょう!ということです。
 「上司なんだから」と、何もかも完璧であることを部下は求めてはいません。むしろ弱い部分、正直なところ、人間的にほっとする突っ込みどころがあるほうが親近感がわくというもの。親近感がわくと、人は会話をしたくなります。
 上司の気持ちを同僚や部下にわかりやすい言葉で伝え、チームの力を高めていくのも、あなたにとって大切な仕事です。上司の立場でモノを考える癖をつけておけば、いざ自分がそのポジションになったときのトレーニングにもなります。
 上司は(あなたより)権力を持つ人。そして、あなたの味方になってくれる人。あなたの考えが正論であっても、それを振りかざして上司を追い詰めてはいけない。上司に恥をかかせない――これは、社内における「ビジネスマナー」とも言えます。

フォロワーシップを発揮して、自分のキャリアのドアを開く

関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
著作家・キャリアカウンセラー

 亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「伸びる女の社内政治力」(さくら舎)、「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)「伸びている女性がやっている感情整理の新ルール」(KADOKAWA)、「シティバンク人事部で私が学んだ一生使える「気づかいの基本」が身につく本」(大和出版)「仕事も人間関係もうまくいく!マナードリル」(総合法令出版)「反学歴の成功法則」(経済界)などがある。

伸び悩む女の独りごと~異文化の交差点