第1回では、職場のセクハラの法律上の定義を学びました。
今回はその続き、法律上定められているセクハラの種類と判断基準を学んでいきます。
いざ勝負! 職場のセクハラの種類 対価型、環境型って何?
職場のセクハラの種類は二つあります。
1.「対価型」セクハラ
セクハラへの対応(例:拒否する、苦情を言う)で、解雇や降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進昇格からの除外、不利益な配置転換などの扱いを受けること。典型例としては、「社長が社員に性的な関係を要求し、断った社員を解雇する」とか、「上司が部下にボディータッチをして抗議されたので勤務評定の評価を下げる」などが挙げられます。
2.「環境型」セクハラ
労働者が働く上で、見過ごすことができない支障が生じること。「同僚に性的な噂をわざと流されて、つらくて仕事に手がつかない」「事務所内にヌードポスターを貼られて、苦痛に感じて仕事に集中できない」などが挙げられます。
例えば、掲示板サイト「発言小町」に届いた「職場の女性用トイレに社長が入ってきます」という投稿を参考にしてみます。社長が職場の女子トイレに「社長室に近い」という理由で入ってきて、出社が苦痛というトピでした。この場合、悩むあまり就業意欲が低下してしまっており、「環境型セクハラ」に当たると考えて良いのではないでしょうか。
「リーガ~ルポイント」
職場のセクハラには「対価型」と「環境型」がある
弐本目! セクハラの判断基準を伝授!
では、セクハラとセクハラでない境界線は、何を基準に決めるのでしょうか? 次の事例で考えてみましょう。
1.部下を気に入った女性上司の場合
係長のA子は、新入社員で部下のB男に一目惚れ。就業時間中もついつい彼をじっと見つめてしまう。そのうち何度も食事に誘うメッセージを送るようになった。B男はそのたび断ってくるのだが、いつも「また誘ってください」と絵文字の付いたメッセージを返してくる。A子は脈があると思い、部下の中でもB男を特別扱いして、はばからなくなった。
ケース①部下の不満はない
B男もまんざらでもないため、好意的に捉えていたが、駆け引きとして断っていた。気に入られていることで、仕事上も優遇され、不満はない。
ケース②部下はストレスを感じて鬱病に
B男にとってA子はタイプではなく、かと言って上司なので邪険にもできず、悩んだ末の反応であり、正直もうやめてほしいと思っている。A子が自分を特別扱いするので、同僚から嫉妬され、ストレスを感じ、鬱病になってしまった。
①の場合は「不満はない」、つまりB男の意に反していないので、セクハラにはならないでしょう。
一方で②の場合、具合が悪くなるほどに嫌な思いをしているのですから、一般的な意味でのセクハラであることは間違いありません。
では、「訴えてやる!」級のセクハラだったかどうかを考えてみましょう。
参本目! 客観的に「セクハラ」を判断する。厚労省の基準を知る
単純に考えれば「意に反する」かどうか、というのは受け手の側の主観の問題であり、その人が苦痛や嫌だと感じればセクハラに当たると言えそうです。
しかしながら、物事の捉え方は年代、性別、育ってきた環境、文化、感受性等によって、様々です。法律の適用(つまり、犯罪になったり、損害賠償請求が認められたりすること)のためには、全てを主観に委ねるわけにはいかず、一定の客観性が求められることになります。
そこで、厚労省は、セクハラの判断基準について「平均的な労働者の感じ方」を基準に考えるべきとしています。
つまるところ、最終的に裁判となれば、その裁判官による「平均的な労働者の感じ方」で判断されるということ、だと理解してもらえればよいのではないでしょうか。
そしてその具体例を学ぶためには、「裁判例」(過去の具体的な裁判の結果のこと。最高裁判所のものは特に「判例」という言い方をすることもあります)を知っておくと役立ちます。次回は実際の裁判例を掘り下げてみますね。
「リーガ~ルポイント」
判断基準は時代によって変わる。裁判官の感じ方で判断されると考えて
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