食の宝庫・福井は日本酒もおいしい! 若手杜氏のモダンな老舗とは

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福井の酒

ミシュランガイドで3年連続二つ星を獲得している「レストラン ナベノイズム」(東京都台東区)の渡辺雄一郎シェフが、福井県の食産地を訪ねる旅を取材しました。この地で日本酒を造り続ける、老舗の酒蔵では、フレンチにも合う辛口に出会いました。

日本有数の米どころ、福井で生まれる美酒

越山若水えつざんじゃくすい。これは、福井県の自然を表す言葉です。「越山」は越前の豊かな山の緑、「若水」は若狭の水の美しさを指しています。

まさにこの表現を形にしているのが、上質の地酒。日本有数の米どころでもある越前地方では、白山山系を水源とした清らかな水から日本酒が生まれています。

福井県が日本有数の米どころと聞いて、意外に思う人もいるかもしれません。実は、「コシヒカリ」も福井県が発祥の地。「越前の国に光り輝く米」との願いを込めて命名されたのだそうです。知らなかった!

そんな米どころで1804年に創業した常山とこやま酒造が造るお酒の銘柄は、常山じょうざん。山々に囲まれた地で育てた米のうまみを十分に引き出した超辛口が、根強い人気を誇っています。

長い歴史を持つ常山酒造には、2度の危機がありました。1度目は第2次世界大戦中の大空襲。2度目は、焼け跡からようやく立ち直った3年後の1948年(昭和23年)、福井大地震によって再び壊滅的な被害を受けてしまったのです。それでも、酒造りを諦めず連綿と伝統を守ってきたからこそ、今の姿があります。

老舗のモダンな仕込み蔵

常山酒造
9代目から酒造りについて説明を受ける渡辺シェフら

常山酒造では、大量生産をせず、昔ながらの手作業で日本酒を醸しています。伝統的な手法、ましてや老舗の酒蔵と聞いて、渋い仕込み蔵を想像しながら訪れてみると、とてもモダンな雰囲気。先代から引き継いだ9代目の常山晋平さんが、「魅せる蔵」をイメージし、改装したのだといいます。

といっても、けっして奇をてらってはいません。「おいしい日本酒を造るためには、造り手の気持ちも大切である」という考え方から、スタッフがりんとした気持ちで働けることを考慮した設計にしたのだといいます。そして、とても清潔。同時に、照明は見学に訪れたファンも楽しめるようにと、雰囲気あるものに工夫されていました。たしかに、仕込み蔵にいるのに、舞台にいるかのよう。

常山酒造社長
常山晋平さん

製造過程には最新技術も採用されていますが、ほんの数年前までは、超アナログな手法で造っていたのだそうです。「温度調節のために、深夜に起きて蔵に入ることもたびたびありました。でも、造り手の心身が健康でないと、おいしい酒は造れません。夜はしっかり休んで、酒造りは昼に集中しています」と晋平さん。この言葉には、私も深く共感しました。

常山酒造

渡辺シェフが試飲した日本酒のひとつが、「常山 純米大吟醸 特別栽培米美山錦」。フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2020・純米大吟醸酒の部」で金賞を受賞した銘酒です。酒米は、福井市美山みやま地区で減農薬栽培されたものを使用しています。美山地区は、山々に囲まれた中に川が流れ、田畑と集落が広がるのどかな場所だと聞きました。ここもいつか訪れてみたいものです。

フレンチにとてもマッチするお酒が、「常山 純米吟醸さかほまれ 直汲生」。福井県が約8年の歳月をかけて開発した酒米「さかほまれ」を使用した生原酒を搾ってすぐ瓶詰めしたもので、発酵由来の自然な微炭酸がシュワシュワと口に広がります。「これはフレンチに合うね!」と、渡辺シェフも味わっていました。

ちなみに、この「さかほまれ」からは精米歩合35%ほどの大吟醸酒が造れるのだそうです。通常の大吟醸酒の精米歩合は50%以下。より磨かれることで、雑味のない、洗練された味わいのあるお酒を造ることができます。

かぐわしい大吟醸の香りをかぎながら、私が想像したのは、大好物の若狭ぐじ(アマダイ)を使った一品。日本酒で味わうフレンチは、自然が美しく豊かな福井に似合うなあと思いました。

(取材・芹澤和美/写真・上田順子、協力・福井県)

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