世界のトップシェフも注目! 福井県の隠れた名物食材とは

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仏料理店「カードル」のアミューズ。ヤリイカ、越前アナゴ、イチジクなど福井の特産をフィンガーフードに

日本海側の食どころとして知られる福井。冬の味覚の王者と言われる越前がにが知られていますが、おいしいものを育てるのは冬の海だけではありません。一年を通じて、海、山、大地からふんだんに食材がもたらされています。そんな福井の食に注目しているのが、第一線で活躍する料理人たちです。春の福井をフレンチのトップシェフが訪ね、えりすぐりの食材で料理を作るイベントを取材しました。

京都の料亭や永平寺御用達のブランド食材が、フレンチでも大活躍

福井を訪ねたのは、東京のシャトーレストラン「タイユヴァン・ロブション」でエグゼクティブ・シェフとして活躍した後、2016年から「レストラン ナベノイズム」を率いる渡辺雄一郎シェフ。「ミシュランガイド東京2021」で3年連続2つ星を獲得したナベノイズムは、多くの女性にとって憧れのダイニングです。

旅は、現地で活躍するシェフとのコラボからスタート。会場となった福井市内の「カードル」は、東福正登シェフによる独創的な料理でファンを集めるフレンチレストランです。福井の食材とフランス料理が融合した料理は、見た目も美しく、心を弾ませてくれます。

福井のシェフ
渡辺シェフ(右)と東福シェフによるコラボ料理は、作る過程もゲストに公開
若狭ぐじを使った一品。かつて若狭(福井県)から京都に続いていた鯖街道や、そこで運ばれた若狭ぐじを、渡辺シェフがイメージして料理に
若狭ぐじを使った一品。かつて若狭(福井県)から京都に続いていた鯖街道や、そこで運ばれた若狭ぐじを、渡辺シェフがイメージして料理に

コラボ料理の食材として選ばれたもののひとつが、若狭湾で取れる「若狭ぐじ」。昔から最高級食材として知られているブランド魚です。アマダイの一種ですが、一本釣りか、はえ縄漁(1本の幹縄に多くの釣り糸をつけて漁獲する漁法)で取れたものであること、鮮度が良いこと、姿形が美しいことなど、さまざまな条件をクリアして初めて「若狭ぐじ」というブランドを名乗ることができます。生産から流通まで徹底した鮮度管理が確立されているため、フレッシュなまま消費者の元へ届くことも、若狭ぐじの特長です。柔らかく脂が乗った身は淡泊な中にも上品な甘さがあり、ひと塩して焼き上げる若狭焼きが定番の調理法ですが、今回はフレンチに。

昔から人の手で大切に作られている、福井秘蔵の食材も登場しました。越前漆器に盛られたのは、冷たいそばがき風の一品。フレンチで登場するのは意外ですが、ジュレに仕上げたそばがきは、「レストラン ナベノイズム」のシグネチャー料理のひとつでもあります。この日のために渡辺シェフが考案したスペシャル版には、永平寺町で収穫された完熟のそば粉、1871年(明治4年)創業の「奥井海生堂」の蔵囲昆布、1804年(文化元年)創業の「天たつ」で作られる粉ウニなど、老舗の食材が使われました。

美しい越前漆器に盛られたジュレ風のそばがき
美しい越前漆器に盛られたジュレ風のそばがき

蔵囲昆布は、専用の蔵で数年寝かせたもの。昆布臭や磯臭さが取り除かれ、うま味が増しています。永平寺の精進料理にも使われているビンテージ品なのです。粉ウニは、しおうに(バフンウニの卵巣に塩を用いて、保存用に加工したもの)を乾燥させ粉にしたもので、200300個のバフンウニから100gほどしか作ることができない貴重な食材です。ぜいたくな福井の恵みとシェフとのコラボにより完成した一品は、滑らかでプリンのような舌触りの、新感覚のそばがきでした。

ところで、昆布というと、フレンチとはかけ離れた食材のイメージがありますが、うま味成分のグルタミン酸を豊富に含む昆布だしは、ミネラルや免疫力を高めるフコイダンをたっぷり含んでいることから、世界のシェフが注目しています。海外での和食ブームを支えるだしのなかでも、最もうま味成分が含まれているのが昆布だしなのだそう。

ぎゅっと詰まった山の香りに感動! 原木しいたけが育つ森へ

イベントの一環として、渡辺シェフと東福シェフは食材の産地にも足を運びました。ここには、50年も原木しいたけを育て続ける「姉崎椎茸しいたけ園」があります。しいたけが育つ榾木ほだぎが整然とそびえる光景は、まるでブドウの木が並ぶワイン畑のよう。

50年間、自然のなかで、無農薬、無肥料で原木椎茸を育て続ける「姉崎椎茸農園」の姉崎さん夫妻。出荷先は、全国の個人。一度食べた人がリピーターになり、いつしかファンが増えていったのだそう
「姉崎椎茸園」の姉崎さん夫妻。全国の個人向けに販売しています。

しいたけを育てているのは、姉崎敏明・裕美子さん夫妻。山林から原木を伐採し、それを約1メートル間隔に切り分け、ドリルで穴を開けて種駒(しいたけの菌)の打ち込みするところから収穫、出荷まで、ほぼ二人でこなしています。

まるでメロンパンのような形と大きさをしたしいたけは、手に持つと想像以上にどっしり。栽培に最適な大きさの原木を厳選することで、肉厚で味の良いしいたけに育つのだそう。

栽培法には、人工的に育てる「菌床栽培」と、原木に菌を打ち育てる「原木栽培」とがあります。原木栽培は、流通量の5%とごくわずか。それもそのはず、より手間がかかるうえ、種駒から収穫まで、2年もの歳月を要するのです。それでも姉崎さんが原木栽培にこだわる理由は、「自然の中で、自然のまま育ったしいたけを食べてもらいたい」という思いから。

福井のシイタケ
炭火にして塩だけでパクリ。まるでお肉のような食感と存在感

「原木で育てたしいたけは身がぎゅっとしまっていて、火を通しても小さくならないんですよ」と、姉崎さんが炭火を起こして焼いてくださいました。みんなで円になって、焼きたてをハフハフ。新鮮で肉厚で、香ばしい! シンプルな料理なのにしいたけってこんなにおいしかったかなあ?と思えるほど、心もおなかも満たされました。

それにしても、1.5ヘクタールもある農園でひとつひとつ丁寧に栽培をする手間は、想像を絶します。「何度もやめようと思ったけれど、やっぱりこの仕事が面白くて、シーズンになるとまた種駒を打ってしまうんですよねえ」と姉崎さん。福井の食の恵みは、自然環境だけでなく、生産者によって支えられているのだと実感しました。

福井の食材については、「旬の里ふくい」もチェックしてみてください。

(取材・芹澤和美/写真・上田順子、協力・福井県)