オンナの幸せ、考えさせられました。OTEKOMACHI読者と語る映画『Red』の魅力とは

誰もがうらやむ夫(間宮祥太朗)とかわいい娘とともに、”何も問題のない”生活を送っていたはずの主人公、塔子(夏帆)。ある日、かつて激しく愛した男・鞍田(妻夫木聡)に10年ぶりに再会する。鞍田は、塔子の行き場のなかった気持ちを少しずつほどいていく…。そして塔子が勤め始める職場の同僚・小鷹(柄本佑)と出会ったことでさらに塔子は解放されていく。鞍田との禁断の恋愛に堕ちていく塔子は、ラストに誰も想像しなかった”選択”をする—。

30歳の主人公、塔子の”選択”をめぐって、すべての人に女性の生き方を問いかける島本理生原作の映画『Red』。今回、人生の決断と選択の渦中にあるOTEKOMACHIの20代と30代の女性読者3人(一部仮名)が、「ワタシが思う女性の幸せ」を考えながら、本作についての思いを語り合った。司会は、OTEKOMACHI・小坂佳子編集長。

塔子と3人の男性との関係は、私たちが心の奥にしまった感情を呼び起こす

小坂 みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございます。最初に、本作を観て印象に残ったことを教えてください。

鮎川 夫婦生活や家庭内で行き場のない思いをかかえながら生きている塔子が、鞍田との再会をきっかけに自分の人生を見つめ直し、女性として生き生きした姿を取り戻す様子を見て、夫婦や家庭の在り方の難しさについて考えてしまいましたね。塔子が終始、夫や義母に気を遣っている姿が切なかったです。夫・真は、自身の言動に決して悪気はないのですが、女性としてはイラっとする場面がたくさんありましたよね。

奥浜 そうですね。日本で生活していると、男性と女性の役割分担のようなものが知らず知らずのうちに染みついてしまっていると感じています。恋人だった時はひとりの女性として接していたはずなのに、いつのまにか「妻」「母親」はこうあるべきだ、という考えを押しつけてしまう。実際、私自身も「この人なら大丈夫」と思って夫と結婚したのに、「今の発言、ひっかかる」と思うことも時々ありますよ()。でも、完璧な家庭なんてどこにもないですよね。

小坂 塔子が新潟に仕事で出張をした際、猛吹雪で家に戻れないことを真に電話で告げるシーンがあります。真は「母親なんだから帰ってこい」と言いますが、塔子が言うように「娘の親は夫婦二人」。子育ては母親がするもの、真のそんな価値観が露呈した場面でしたね。

鮎川 見方を変えれば、真も可哀想な人なんですよね。自分の両親の姿を見て育つ中で、きっと「夫婦とは、親とはこうあるべき」というのを植えつけられちゃったんだろうなって。

男性に求める幸せとは

小坂 みなさんは、男女のパートナーシップの理想をどう考えますか?

川口 言葉で話さなくても、相手の意図がくみ取れること。お互いを察することの時間が多ければ多いほど理想です。

鮎川 一緒にいて楽しそうだから、小鷹のようなキャラクターには憧れますし、理想の男性像ですね。でも実は、私の彼は鞍田に似ていますね。私自身、塔子のようになりがちな一面があって()。「とりあえず相手に合わせておこう」と考えてしまう傾向にあるんです。それで長続きしているので、結局彼との関係が私の理想なのかもしれません。

奥浜 私の尊厳を傷つけない、生き方を否定しない人が理想ですね。夫のことですが。 

小坂 女性の人生って、結婚や出産、仕事を含めて、きっと男性の人生よりも自分が思った通りにいかないことが多いですよね。みなさんは、女性として、どんな時に幸せを感じますか?

奥浜 夫婦でお互いに1人の時間を大事にできた時に幸せを感じます。具体的に言うと、お互いの意見を持ち寄って同じ気持ちになれた時ですね。私にとっては、いつも一緒にいることが幸せではなく、自分が経験したことやその感想を共有できることが幸せですね。

川口 最近結婚が決まったのですが、私は彼とお互いの家族の話を共有できることが今の幸せですね。自由に恋愛をすることも幸せだったけれど、落ち着くところに落ち着いて、自分だけではなくて周りの人も含めてみんな幸せと感じられる状況が、今の私にとっての幸せですね。

鮎川 私は、恋人と同じ時間を共有したり、同じ場所にいること幸せです。楽しいと思えることを共有したいんです。本作では、塔子と鞍田はそれができていて、塔子と夫はそれがなかった。それでいうと、私の幸せの価値観は塔子に近いのかもしれません。

色気に溢れた俳優陣と、三島監督ならではの”こだわり”

小坂 映画では、塔子にかかわる3人の男性が登場します。元恋人は妻夫木聡さん、職場の同僚は、柄本佑さん、夫は間宮祥太朗さん。3人の俳優さんの演技も見どころの一つですね。鞍田を演じる妻夫木さんは、多くを語らない中で陰影をうまく表現されていましたよね。「こんな素敵な大人の男性になっていたのか!」とドキドキしてしまいました(笑)。

奥浜 わかります。鞍田が塔子に「帰ろう」というシーンがありますが、私だったら、「うん帰る!!」と即答ですね()。でも、小鷹を演じる柄本さんの演技もとても心に残りました。小鷹の色気がすごいんです。バッティングセンターで塔子を後ろから抱きしめるシーンがあるのですが、その小鷹がエロい()!服だって着ているのに、セックスシーンと同じくらい色気がありましたね。さすがだなと思いました。

川口 私も柄本さんの演技は好きでしたね。塔子の心をうまくほどいて、全体の空気を軽やかにしてくれていましたよね。それに、塔子の自由への扉を開いたのは、実は小鷹なんじゃないかって。「心から自分が楽しいと思うことはなんだろう」と、ふと我にかえって考えさせてくれるキャラクターなのかな。

鮎川 私は、〝ムカつく夫〟を絶妙に演じていらした間宮さんの演技に引き込まれました。ひとつ気がついたことがあったのですが、塔子が真になにか語りかけた時、真は必ず、「うん」と頷いてから自分の意見を言い始めるんです。これって絶対、「とりあえず聞いてるふり」ですよね。こういう男性、きっとたくさんいるんじゃないかなって()。台本には書いていないのかもしれないけれど、こういう小さな部分も工夫して演じてらっしゃったのかなって。

全員 気づかなかった!!()

小坂 俳優さんの美しさはもちろんなのですが、本作では三島有紀子監督ならではの映像の美しさも印象に残りますね。

奥浜 とても上品な仕上がりでしたよね。セックスシーンでは塔子の顔のアップが多くて、男女の関係性によって女性がどう変わっていくかを描きたかったのかなと思いました。実際、塔子の表情は、鞍田とのかかわりの中で女性として魅力的なものに劇的に変わっていきます。そのことが強く印象に残りましたね。三島監督ならではの視点かもしれません。

この映画が「自分とはどんな人間か」を教えてくれる

小坂 そして最後のシーンは、「原作と違うらしい」と聞いていましたが、こういうラストはかなりびっくりしました。女性は、仕事の有無をはじめ、結婚や出産といったライフのイベントの状況もばらばらです。最近よく、「ワークライフバランス」っていいますよね。でも私は、バランスって結局とれないんじゃないかなと思うんです。日常的にバランスをとることなんてきっと不可能で、人生トータルで見たときに、バランスがとれてるかどうかかもしれません。
最後に、女性の人生を考えながら、この映画に対して思うことを教えてください。

鮎川 塔子に起こったことは、実は誰にでも起こりうる話だと思います。周囲を大切にすることと、自分を大切にすることや自分の選択を尊重することって、両立できるんでしょうか。そんなことを考えながら観られるんじゃないかな。

川口 結婚や出産をして、妻・母親という自分を生きてしまうと、自分ひとりの人生だった時と比べると我慢しなくちゃいけない場面も増えてくるんだと思います。でも、我慢に我慢を重ねていると、塔子のように、どこかで大きな間違いというかボタンの掛け違いが起きてしまうのかなって。忙しい日常の中でも時々立ち止まって、日々自分らしい決断ができているかということを自分に問いかけなきゃいけないなと、この映画を観ながら思いました。

奥浜 この作品を観る中で、自分が嫌悪感を抱く場面や共感する場面はどこなのか、敏感に把握してみてほしいと思います。それがわかった時、自分が何を大切にし、何を優先的に選ぶ人間なのかがよく見えてくるでしょう。それから私は、ぜひとも男性にも見てもらいたいですね。塔子の姿や家庭のシーンを見て、「俺もやばいかも…」と思える人はまだ大丈夫。仮にピンとこなかったとしても、「こういう言動は地雷だよ」と映画が教えてくれますから()、まずはみなさん足を運んでみてください!