「黒子として投資家や企業をサポート」  野村アセットマネジメント 中川順子CEO兼代表取締役社長

活躍する女性CMA(3)

野村アセットマネジメント株式会社 CEO兼代表取締役社長 中川順子

 CMA(日本証券アナリスト協会認定アナリスト)と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。CMA資格を持ち、各業界の第一線で活躍する女性に、現在のお仕事や資格を通して得たこと、勉強方法などについてお聞きします。

 証券会社の地方支店での店頭業務から始まり、野村グループの中核企業のトップへとキャリアの階段を駆け上がってきた中川順子さん。入社後まもなくチャレンジしたCMA(証券アナリスト協会認定アナリスト)資格は、その後の自信の裏付けとなっただけでなく、顧客への提案の際にも、信頼の裏付けとして役立ったと言います。金融機関は「黒子」という中川社長の仕事への考え方をお聞きしました。

支店の店頭からグループ会社社長へ

 今年4月、野村アセットマネジメントの社長に就任。「自分に仕事を任せてみようという人がいる。それならお請けしよう」と決意をし、資産運用の専門家集団を率いることになりました。
 大学は文学部専攻でしたが、就職ははじめから金融機関を志望していました。その理由は「金融機関とは黒子の仕事だと思ったから」。主役はあくまで投資家と投資先企業であり、両者をつなぐ役割を担う金融機関という立ち位置に、漠然と憧れを抱いていたといいます。1988年に野村證券に就職した後は、配属された奈良支店の店頭でお客さまと向き合う投資相談業務からスタート。新入社員だった当時の中川さんは、金融の知識はほとんど皆無。「最初は借方も貸方も分かりませんでした」。しかし実務や研修を通して着実に業務を自分のものにしていくことで、「黒子」としての役割にやりがいを深めていきました。

パズルのピースを埋める知識があってこそ、1枚の絵が見えてくる

 CMA資格の取得に挑戦しようと考えたのは、入社後1年が過ぎようとしていた時でした。「金融機関で働く以上、この資格の知識は、社外の人に対して納得感の得られる説明をするために必要だ」と考え、一念発起しました。しかし手元に通信教育テキストが届いた時には、文学部出身で簿記も分からず経済学を体系的に勉強したこともない中川さん、「大丈夫か?」と不安になったそうです。そこで、いきなり全科目の合格ではなく、1科目ずつでのクリアを目指すことに。帰宅した夕食後や週末などの時間を使って勉強したそうです。「当時はカフェにテキストを持ち込むなんてスタイルはありませんでしたから」と、もっぱら自宅でのコツコツとした地道な学習が続きました。


 ですがしばらくすると、日常業務や社内研修で得てきた断片的な知識が自然に頭の中で組み合わさって、「ああそうだったのか」という気づきがたびたび得られ、楽しさを見いだすように。それはまるで、「手元にあったパズルのピースが、CMAの知識でつなぎ合わさり、1枚の美しい絵として見えてくるような感覚」だったといいます。1992年末に必要科目すべてに合格し、実務経験を経て1993年に資格取得となりました。

CMA資格が自信の裏付けに

 資格取得後、上司からの最初の指示は「得た知識を使って、お客さまのことを考え分析し、提案書を作りなさい」だったそうです。つまり有資格者らしく、結果を出せ、ということでした。足りない法律の知識は更に勉強することになります。まだ実務経験が不足していた時期でしたが、CMA資格は自信につながっていきました。「必須知識に基づいて提案資料を作成し、網羅的に勉強もしている。どう質問されても答えられる」。そんな気持ちが支えになっていたそうです。実際、CMA資格で得た知識は顧客企業の資金調達・プロダクト提案・オプション活用・財務企画などの提案で、有効な道具として力を発揮しました。
 投資銀行部門で働いていた時は女性社員も少なく、顧客から簡単には信頼を得られないこともありました。でもこうした自信ある姿勢が顧客に伝わり、好感触を得られたことも多かったと感じるそうです。担当先も増え、扱う案件も多様になり大きい案件も増えていきましたが、「お客様の信頼や期待に最大限応えるよう努力する」、この軸を守りながらキャリアを歩んできました。

常に新しい技術や知識を習得し、実務で使って磨き上げる

 今は、ITが急速に進歩し、金融業界の分析手法にも大きな影響を与えています。「CMAのプログラム内容も私の受験当時からは相当変わっています。常に新しい技術や知識を習得していかないと、時代のニーズに対応できなくなります」。中川さんはご家族の海外赴任に伴い一度野村證券を退職していますが、世の中へのアンテナを張り続け、4年後に野村證券の子会社でキャリアに復帰したのを皮切りに、現在のポジションにいたっています。
 中川さんはまた、「知識は実務で使いながら磨き上げていくことで、かなりの場面で対応できる」と、自信をもって話してくれました。時代の急流の中で力を発揮するには、資格取得に甘んじることなく、終わることのない向上心が必要な時代とも言えそうです。
 最後に、金融機関のトップとして志のある若い人たちに「私たちは主役ではなく黒子です。企業や投資家のサポートをするという地道な努力を厭わない方なら大丈夫です。また、この資格はアナリストに限らず、企業財務やIR部門などでも役立ちますので、数学が苦手などの理由でちゅうちょせずに挑戦していただきたい」とのメッセージをいただきました。

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