西馬音内(にしもない)盆踊りの幻想的な世界を体験

秋田の旅

 秋田県南部の羽後町で毎夏、行われる西馬音内盆踊りは、徳島県の阿波踊り、岐阜県の郡上踊りとともに日本三大盆踊りの一つとされています。黒い頭巾や編み笠で顔を隠した踊り手たちが、優美でしなやかな踊りを見せ、町は幻想的な雰囲気に包まれます。西馬音内盆踊りを東京で体験するイベント「幽玄!西馬音内盆踊りで非日常を体験」が3月19日、東京・大手町で開かれ、あでやかな非日常の世界が広がりました。

「そらっ」 掛け声に歓声

 「見れば見るほどやさしい踊り。さらさっさ。あーどっこい」。イベントの最初に、西馬音内盆踊り首都圏踊り子会による踊りのデモンストレーションが行われました。踊り手の「そらっ」という威勢のいい掛け声に会場から拍手が沸き起こり、テンポの良いおはやしに合わせて、参加者が一緒に歌詞を口ずさむなど会場は熱気に包まれました。
 続いてのトークショーでは、西馬音内盆踊り首都圏踊り子会の吉田幸子(こうこ)さんと秋田県出身の橋本五郎・読売新聞特別編集委員が登壇し、小坂佳子・OTEKOMACHI編集長の司会で西馬音内盆踊りの魅力について語りました。

「いつかはちゃんと踊りたい」

吉田幸子さん(中央)と橋本五郎・特別編集委員

 首都圏踊り子会は、西馬音内出身者で東京近郊に住んでいる人たちで組織。吉田さんは、実家の前が西馬音内盆踊りの会場で、子供のころから近所の幼馴染(おさななじみ)と一緒に踊っていたといいます。「年上の人たちの踊りを見て、『いつかは自分もあの人たちのように踊りたい』と思っていました」と吉田さん。
 橋本・特別編集委員は「日が落ちて、かがり火のパチパチという音が印象的。物悲しく何とも言えない郷愁に誘われ、ある種のあでやかさがあり、とてもひき付けられます」と西馬音内盆踊りへの思いを語りました。
 西馬音内盆踊りは、毎年8月16日から18日までの3日間行われます。午後7時半から午後9時までは「子供の時間」で、「音頭」という曲だけを流し、豆絞りのハチマキをした子供たちが踊ります。午後9時を過ぎると、「音頭」と「がんけ」という曲が交互に流れ、大人の踊りに変わります。

「顔を隠して大胆に」

 吉田さんは「午後10時半くらいからは大人の時間です。すべて西馬音内の方言で東京の方たちが聞いてもわからないでしょう。しっとりしたいい歌詞です」といいます。
 現在、女性の踊り手が多く用いるのが「端縫い衣装」です。様々な絹布を縫い合わせています。橋本・特別編集委員は、「日々、農作業で大変な思いをしているので、『この時だけは華やかに』との思いが込められているのでしょう」と説明。端縫い衣装は編み笠、踊り浴衣は彦三(ひこさ)頭巾と呼ばれる黒い頭巾と合わせます。「暗闇で身分も年齢も隠れ、笠や頭巾で顔を隠すことで大胆になれます」と吉田さん。
 会場には、明治から大正ごろに作られた貴重な端縫い衣装などが展示され、雰囲気を盛り上げました。
 その後は、メインプログラムの踊りの体験です。「音頭」が流れ、「手と指先をしっかりそろえてください。指を少しそらせます」と、吉田さんに順番に動作を教えてもらいます。最後に全員で輪になって踊り、掛け声を合わせました。

会場一体となって踊りを練習

若い世代にも人気

 プログラムの最後に、実際に衣装を身に着ける「衣装体験」も行われました。豪華な手絞りの藍染めや、端縫い衣装など、現地で代々、女性たちに受け継がれてきた衣装を身に着けて写真撮影を楽しむ姿が多くみられました。

イケメンの踊り子も

 参加した20代の女性は、「踊り体験がとても面白かったです。実際にはなかなか上手に踊ることができませんでしたが、ぜひ、練習して現地に行って踊ってみたい」。別の20代の女性は「実際に踊りを教えてくれた方がみなさん若い方だったことに驚きました。盆踊りというと年配の方のイメージが強いけれども、若い世代にきちんと受け継がれていると感じました」と感心した様子。30代の女性も「気分転換になった。現地で踊ってみたいです」と笑顔を見せました。
 西馬音内盆踊りは、収穫に感謝し、さらなる実りを祈願する豊年踊りとして始まったという説と、落城した城主の慰霊の踊りが豊年踊りと一緒になって伝えられたという説があります。深い歴史に思いを巡らせながら踊りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

衣装を身に着けて写真撮影

「踊りの町」をじっくり味わう

 西馬音内盆踊りの現地練習を行うツアーがインターネット限定で発売されています。出発は5月18日(土)、東京駅発着で旅行代金は69,800円(大人1人税込み)。
 1泊2日の日程で、秋田新幹線で大曲駅まで乗車し、貸し切りバスで秋田県羽後町へ。初日は、西馬音内盆踊り会館で、盆踊りの基礎レッスンを受けるとともに、実際に衣装を身に着けます。秋田では漬物(漬物は秋田弁で「がっこ」といいます)とお茶でお客さまをもてなす「がっこ茶っこ」という習慣があり、地元の人たちとの合同練習を通した「がっこ茶っこ」の交流など、ゆったりとした時間も楽しむことができます。
 昼食は名物の「西馬音内そば」を味わいます。江戸時代から伝わる代表的なメニューは、冷たいかけそば「冷やがけ」です。このほか、「羽後牛」は黒毛和牛ならではのすぐれた肉質が魅力です。
 羽後町のキャッチフレーズは「緑と踊りと雪の町」です。今回のツアーには含まれていないものの、「そば打ち体験」や「染め物体験」など時間をかけてじっくり楽しめる観光資源が多くあります。羽後町は豊かな自然の恵みを受けて、スイカなどの農業やトルコギキョウなどの花き栽培も盛んです。例年1~6月頃にはイチゴ狩りも体験できます。羽後町の人たちは、「盆踊りをはじめ、さまざまな体験を楽しんでもらい、何度でも訪れてほしい」と語ります。

発酵食のやさしさに触れる

「くらを」の昼食(一例)とあまざけ

 ツアーの2日目は、隣接する横手市増田町を訪ねます。増田町は、明治から昭和初期に建てられた「内蔵」と呼ばれる土蔵が現存し、「内蔵」のある町並みとして人気を集めています。かつては各家の宝として外に見せることがなかったものの、近年は公開される「内蔵」が増え、「インスタ映えする」と写真撮影スポットとしても人気を集めています。
 昼食は、この増田町の中心部、「中七日町通り」に位置する「旬菜みそ茶屋 くらを」でいただきます。メニューの主役は、「麴がいっぱい入ったおみそ汁」です。
 横手市をはじめ秋田県南部は全国有数の米どころで雪が深く、古くから保存食としてのみそやしょうゆ、漬物といった発酵食の文化が育まれてきました。メニューには、「発酵食を毎日食べることで体の内側から調子を整えてほしい」とのお店の思いが込められています。いぶした大根をさらに漬け込んだ秋田名物「いぶりがっこ」は、麴で甘みを付けています。「西馬音内そば」や「羽後牛」、そして発酵食のやさしい味わいをじっくり感じる「食」の楽しみもこのツアーの魅力です。

マンガの原画の聖地へ

横手市増田まんが美術館のマンガウォール

 また、今年5月に「マンガ原画の収蔵日本一」を掲げて改装オープンする横手市増田まんが美術館も訪れます。マンガ原画の収蔵数が約20万点の「原画の聖地」となります。マンガの原画から、作者の息遣いを感じることができるでしょう。横手市出身で「釣りキチ三平」の作者の矢口高雄さんが名誉館長を務め、日本で唯一のマンガ原画の収蔵をテーマとした美術館として知られています。
 このほか、パワースポットとしても人気の湯沢市の小安峡も訪ねます。白い湯けむりを上げる大噴湯と渓谷のながめを楽しむことができます。ほかにもサプライズな楽しみが、みなさんのお越しを待っているかもしれません。非日常とさまざまな体験が楽しめる秋田県南の旅を満喫してみませんか。

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