「ニュートン」「ダーウィン」に間近で出会う秋の上野の森

 科学技術の希少本で世界有数のコレクションを誇る金沢工業大学の蔵書約130点を厳選した「世界を変えた書物」展(KIT.金沢工業大学、上野の森美術館主催)が東京・上野の森美術館で98日開幕します。科学の重大な発見の歴史を物語る初版本とともに、人類の知をめぐる旅を体験できます。会期は924日までで、入場無料。 

初版本は国内外から収集

希少本を所蔵する「工学の曙文庫」

 金沢工業大学の「工学の曙(あけぼの)文庫」は、15世紀以降の科学技術に関する希少本など約2000点を所蔵しています。1982年の開館以来、工学の観点から科学的発見や技術的発明の原典初版を国内外から収集したものです。

 このコレクションを多くの人に間近で見てもらおうと企画されたのが「世界を変えた書物」展です。会場は3部構成で、最初に本と出会う「知の壁」、メインの「知の森」では、初版本約100冊を展示し、アリストテレスにはじまり、17世紀にヨーロッパで起きた科学革命の主役、ニュートンから20世紀のアインシュタインへと科学の発見の連鎖を見せていきます。全体を通して科学技術の発展を系統的・体系的に知ることができるようにしています。

 エピローグの「知の繫(つな)がり」は、本を通じて人類の知が過去から未来へと伝わる様子を3次元で表現しています。ダーウィンの「種の起源」の初版本やメンデルの「植物―雑種についての研究」の初版本など生物学上の歴史的発見に関連した希少本の特別展示も行われます。

ダーウィン「種の起源」1859年
メンデル「植物―雑種についての研究」1866年

世界を変えたストーリーが見つかる

 「工学の曙文庫」設立時からコレクション選定に関わってきた金沢工業大学ライブラリーセンター顧問の竺覚暁(ちく・かくぎょう)教授によると、コレクションは「人類の科学史、世界を変えた発見と感動のストーリーそのもの」だそうです。竺教授は、今回の展示の魅力を「この本があったからこそ、次にこの本が存在する。この人とこの人が出会っていなければこの発明は生まれていなかった。そんなストーリーが必ず見つかる」と教えてくれました。会場入り口には大きな本の扉絵が登場します。「上野の森」の本の扉を開けると、人類の知のつながりをめぐり、本の存在を知る旅が始まります。 

「理系女子でなくても楽しめる」展示

会場の構成・展示デザインについて話し合う金沢工業大学の宮下准教授(左)と学生たち

 金沢工業大学が主催する展覧会として、会場構成と展示デザインは、金沢工業大学建築学部の宮下智裕准教授と宮下准教授の研究室の学生らが手がけています。全体を「本と科学の発見に触れる旅」とイメージし、宮下准教授は、「本とは何かを考え、世界を変えた本が持っている世界を見せたかった」と話しています。

 展示の製作にあたった大学院1年の松井勇介さんは、「初版本は、図などビジュアルも面白く、工学や科学をあまり知らなくても楽しめるような展示方法を心がけた」といい、学部4年の名倉由莉さんは「教科書で見た科学者らの名前がたくさん登場する。本と本、知識のつながりが一目でわかるように配置した」そうです。大学院2年の山﨑洸希さんは「電子書籍も読むが、紙の本の素材感とは違う。本について意識的に感じる機会になってほしい」と思いを語ります。 

パスカル「液体の平衡及び空気の質量の測定についての論述」1663年

過去の来場者数は延べ約10万人 

 「世界を変えた書物」展は金沢工業大学が主催し、2012年に金沢で最初に開催され、名古屋、大阪でも開かれています。来場者数は延べ約10万人を記録しました。関東地区での開催は今回が初めてです。「工学の曙文庫」が所蔵する広島・長崎原爆の調査書やスペースシャトル・チャレンジャーの事故報告書も、過去の失敗から学ぶねらいで展示しています。

 

「世界を変えた書物」展公式HP