マカオの料理はおいしいだけじゃない!「シティ・オブ・ガストロノミー」の秘密

 ポルトガル風情が薫る世界遺産の街並みで知られるマカオ。日本の3都市から直行便があること、治安がいいことから、女性にも人気の旅先となっています。近年は開発区に統合型リゾートが続々と誕生して注目を集めていますが、今、マカオで最もにぎわっている旬のカルチャーといえば、グルメ。2017年10月、マカオはユネスコの「食文化創造都市(シティ・オブ・ガストロノミー)」に認定され、目下、「食べること」を楽しみに、各国の人々が街を訪れ、グルメを謳歌しています。

今、マカオで旬の話題といえばグルメ!

 ポルトガル料理に本場の広東料理、飲茶、そしてマカオ料理。街中のローカル食堂からミシュラン星付きのファイン・ダイニングまで、食のチョイスが多様なマカオは、食の楽しみも無限大。でも、マカオが全世界に26都市しかない「食文化創造都市(シティ・オブ・ガストロノミー)」のひとつになった理由は、単に美味しさや店舗の多さだけに終わりません。

「2018年マカオ美食年」のキックオフセレモニー

 もともと、肥沃な土壌に恵まれているマカオ周辺では農業が営まれ、海に面していることから漁獲も盛んに行なわれていました。米に野菜に魚…。そんな食材豊かなマカオへ16世紀にやってきたのが、大航海時代を迎えていたポルトガルの船。船乗りたちは、航海の終着地であるマカオに、故郷のチョリソーやバカリャウ(塩漬けにして乾燥させた鱈)、経由地であるアフリカやインドのスパイス、マレーシアのココナッツミルクなどの食材を持ち込みました。これらとマカオ元来の食文化と融合して生まれたのが、世界で唯一無二のグルメ、マカオ料理なのです。

ポルトガル船の航海図

食と歴史が融合したダイナミックなマカオ料理

 かつての宗主国ポルトガルとも、隣接する中国・広東省とも異なるマカオの料理。日本ではなかなか食べる機会がなく、イメージするのはちょっと難しいかもしれません。そこで、人気料理研究家のコウケンテツさんに、代表的なマカオ料理「アフリカン・チキン」と「ミンチィ」を作っていただきました。

 TVのロケで、まさに大航海時代の航路を辿り各地のローカルフードに触れてきたというコウさん。もちろんマカオにも訪れたことがあるそうです。初めてマカオを訪れたその旅では、一流レストランだけでなく家庭料理も味わい、マカオ料理の持つ奥深さに驚いたことを今でも鮮明に覚えているのだそう。「マカオの家庭料理は家族によってさまざま。先祖がポルトガルからどういうルートでマカオへたどり着いたかによって、使うスパイスも、レシピも全く違う。家庭料理を見れば、その家のルーツが分かるんです。“この一皿に長い歴史がぎゅっと詰まっているんだ”と、深く感動しました」。

 マカオを旅する人たちに絶大な人気を誇るのが、「アフリカン・チキン」。香ばしく焼き上げた鶏肉と、ココナッツの甘み、スパイスやガーリックの香りが絡み合って、パンにもお米にも合う一品です。この料理にも、コウさんの体験に裏づけされるように、いろいろな国の食文化がミックスされています。たとえば、インドのターメリックやポルトガルのパプリカ、マレーシアのココナッツミルク…。「各地の食材が反映されているアフリカン・チキンこそ、かつて海を介して各国の人々が交流してきたことの証しですね」とコウさん。

鶏肉のグリルに、スパイスやココナッツミルクから作るソースをからめた「アフリカン・チキン」

 「ミンチィ」は、甘辛く炒めた豚挽き肉とタマネギ、素揚げポテト、目玉焼きををご飯に乗せた料理。醤油味がベースで、日本人にはちょっと懐かしく、馴染みのある味わいです。料理名は、英語の「to mince(挽き肉にする)」が由来で、香港の英国系インド人がマカオへ伝えたとも言われています。こうした家庭料理でさえも、ルーツを辿ると他国に行き着くのが、マカオ料理の面白さです。

目玉焼きを崩し、混ぜながら食べるといっそうおいしい

旅をすればさらに深まる、マカオ料理のおいしさ

キッチンでいい香りを漂わせながら、コウさんがこんな旅の話をしてくださいました。

――タイを訪れたときのこと。福岡の郷土菓子「鶏卵そうめん」とまったく同じものを見つけて驚きました。さらに別の旅では、ポルトガルのカステラ店でもまったく同じものを見つけて。「鶏卵そうめん」は南蛮菓子由来だということは知っていたのですが、そのとき、ポルトガルが世界に出て行った歴史というのは、こういうことなんだなと、肌で感じたんです。その驚きは、それこそ鳥肌ものでした(笑)

 ポルトガルからアジア、日本へ…。まさに、こうした歴史のダイナミズムをひしひしと感じられるのが、マカオ料理。コウさんも「歴史を体感できることこそ、マカオで料理を食べる醍醐味です!」と言います。

 完成した「アフリカン・チキン」と「ミンチィ」は、さまざまなスパイスや調味料の香ばしい香りがふんわりと漂って、食欲を誘います。「ぜひ、これをマカオで食べて欲しいなあ。本場で食べて感動したものを自分で再現するからこそ、料理も楽しくなる。旅をしたときの空気だって、味の思い出になるものですから」。

 「アフリカン・チキン」や「ミンチィ」以外にも、マカオに行かなければ食べられないものはたくさんあります。選択肢が多いマカオで、食を思い切り楽しむ秘訣はどんなことなのでしょう? 「ホテルのダイニングやアットホームな食堂、どちらも味わえるのが、マカオの面白さ。いろいろなスタイルのレストランを試して、マカオ料理を存分に満喫してほしいですね」。

 今年は「マカオ美食年」と銘打ち、さまざまな食のイベントで盛り上がるマカオ。旅をしたときは、ぜひ、一品に凝縮された歴史を感じてみて。そうすればきっと、マカオ料理はいっそうおいしく感じられるはずです。

<イベント情報>

 「食文化創造都市」認定を記念して、「シティ・オブ・ガストロノミー マカオ美食フェア」が5月6日より開催。マカオのタイパ地区に本店がある「O Manuel」のシェフが監修したマカオ・ポルトガル料理の特別コース(四ツ谷店のみ)やアラカルト(全店)が、都内で堪能できます。

「シティ・オブ・ガストロノミー マカオ美食フェア」
期間/2018年5月6日(日)~9月2日(日)
場所/ポルトガル料理店「マヌエル」都内3店舗(四ツ谷店、丸の内店、渋谷店)
※フェアのお問合せはマカオ政府観光局03-5275-2537(午前10時~午後5時、土日祝除く)へ

コウ・ケンテツ
コウケンテツ
料理研究家

大阪府出身。旬の素材を生かした簡単でヘルシーなメニューを提案。テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。一男一女のパパでもあり、自身の経験をもとに、親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通してのコミュニケーションを広げる活動に力を入れている。

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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