仕事か、恋か…フランス女性の答えがこの一本に

一足の靴との出会いがジュリー(写真右)を変えた

「フランスは、働く女子にやさしい」?

 仕事と子育てが両立しやすいなど、働く女性に「やさしい国」のイメージのある、フランス。
 確かに、日本の少子化問題の引き合いとして語られるフランスの出生率は、主要先進国で最も高く、子を持つ女性の社会復帰制度も充実しています。
 しかし一方で、現在のフランスの失業率は10%近く、特に若年層(25歳未満)では4人に1人が失業状態。実際に仕事に就いている若年層の半数は非正規雇用とされ、もちろん、女性も例外ではありません。

働くフランス女子の多くは非正規雇用

‘働くフランス女子’の心の叫び

 そんなフランスの働く女子の現実をコミカルなミュージカル調で描いたのが、映画「ジュリーと恋と靴工場」。
 舞台はフランスの田舎町。主人公のジュリーは25歳で、非正規の仕事を点々とつなぎながら生活しています。彼氏と別れ、仕事の契約を打ち切られ、銀行口座も空っぽに…。求人広告で探し当てて、ようやく決まった仕事先は老舗靴メーカーの工場。「正社員への道が開ける」との喜びもつかの間、工場は製造コストの安い中国に生産拠点の移転を検討するトップの方針によって閉鎖の危機に直面していたのです。

 ジュリーが求人広告でマーカーを引くのは、正社員を意味する「CDI」と「未経験者歓迎」の文字。ジュリーも、雇用環境の荒波に、仕事も人生も流されているフランス女子の1人です。「未経験者歓迎」の仕事を選ばざるを得ないのは、非正規の仕事を続けていても、次の仕事につながるスキルを積むことができないから。
 「私、ジュリーです。仕事を下さい!」「何でもやると、何もできないと思われる」。ジュリーが発する言葉は、多くのフランス女子の心の叫びといえます。

「戦う女」は毅然として輝く

 そんな社会への批判をコメディで描くのがフランス流。軽快なテンポで心地の良い音楽とともに、自然とジュリーに引き込まれていきます。そのまま切り取って部屋に飾っておきたくなるようなカラフルで美しい光景が続く中、カギとなるのは赤い靴。「靴を見ればその人がどんな人間かがすぐにわかる。靴は社会的な目印でいろいろな解釈が可能なシンボル」(監督のポール・カロリ&コスティア・テスチュ)といいます。

「戦う女」と出会うことで、ジュリーの考えに変化が

 「私たちは羊じゃない。ライオン」。工場閉鎖を阻止するために、立ち上がった熟練の靴職人の女性たち。繊細で確かなフランス職人の手によるヴィンテージモデル「戦う女」の生産工程は、軽やかで鮮やかです。真っ赤なフラットシューズ「戦う女」は、毅然として輝いて、柔らかくてしっかりしていて、フラットだけど女らしい。自ら声を上げて自らの人生を変えていく女性たちそのものなのです。
 映画の舞台となり、実際に撮影が行われたのはフランス南西部のロマン市。戦後に靴産業が発展し、外国製品との厳しい競争などの危機を乗り越えて、現在も老舗ブランドやこだわりを持つアトリエなどが靴の製造を続けています。

ジュリーの仕事と恋と人生の行方は?

サミーとの恋愛模様からも目が離せない

 ジュリーはいつしか、靴工場で出会い、「アメリカに行く」と夢を語るドライバーのサミーに魅かれていきます。ジュリーの仕事と恋の行方はどうなるのでしょう?ジュリーの決断を、靴工場の先輩女性たちが皆で見守ります。マダムたちの温かい笑顔は、ともに「同士」として戦ったジュリーへの敬意であり、「戦う女」を選んだジュリーがその先、切り開いていく人生に自らを重ねているように映るのです。
 年齢や社会的な立場など、さまざまな壁を越えて生まれた「女性の同士」たちの清々しさに触れることができるのもこの映画の魅力。仕事やプライベートでふと、「同士」が欲しくなった時にもおすすめの一本です。

【映画情報】
ジュリーと恋と靴工場
25歳、職なし、金なし、彼氏なしのジュリーがやっと手にしたのは、ロマン市にある靴工場の仕事。しかし、そこは近代化の煽りを受けて工場閉鎖の危機だった。ジュリーと女性靴職人たちは、“赤い靴”を武器にこの危機を乗り越えようとする。
【監督】ポール・カロリ、コスティア・テスチュ
【出演】ポーリーヌ・エチエンヌ、オリヴィエ・シャントロー、フランソワ・モレル
9月23日(土・祝)、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
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