瀬戸内の夕日が美しい兵庫の「きらきら坂」できらめくガラス

穏やかな海や美しい島々、豊かな食文化が息づく瀬戸内は近年、若い世代から移住や旅行先として注目されています。兵庫、岡山、広島、徳島、香川、愛媛各県を対象に、ここで暮らす女性たちにライフスタイルや夢を語ってもらう企画。今回は、兵庫県が舞台です。

瀬戸内海を望む赤穂御崎あこうみさき(兵庫県赤穂市)に「きらきら坂」と名付けられた、海に向かうしゃれた坂道がある。その坂の途中、「御崎ガラス舎」を営むガラス工芸作家のオカモトヨシコさん(38)は海と朝日、夕日の美しさに魅せられて9年前、赤穂に移住した。作品づくりと地域づくりに励む。

スナメリが顔を出す心和む風景

海がぐ日没の時間帯。柔らかい夕日の光が差し込む中、イルカの仲間のスナメリが海面から顔を出して、優雅に泳いでいるのが窓から見えるんです。穏やかな風景を眺めていると、心が和みます。コロナ禍でも工房を続けられるのはこの景色があるから。

瀬戸内海の夕日
夕日を背景に赤穂御崎に立つオカモトさん

ガラスとの出会いは兵庫県内の食品会社に就職が決まった大学4年の時です。視野を広げたいと、カルチャースクールのガラス工芸講座に通い始めました。熱中するうち、講座にはなかった吹きガラスの工房を紹介されました。

でも、初めて体験した吹きガラスはイメージした作品ができなかった。悔しさを感じながら3年半通って技術を磨きました。ガラスが面白くなり、「若いうちにやりたいことをやってみよう」と会社を辞めて、別の工房に正社員ではないけれど就職しました。

ただ1年で契約更新してもらえなかった。その帰り道。携帯に登録していた工房に片っ端から電話して、兵庫県相生市が運営するリサイクルのガラス工房で講師を募集していることを知りました。

せっかく入った道、貧乏でもいいかな

会社を辞める時、父から「辞めるのならガラスで食べていけるようになれ」と言われ、私も「せっかくこの道に入ったのに……」という思いがあったので相生へ。そこでは家庭ごみとして回収された瓶を洗って砕き、溶かして作品を仕上げていて何でも試しました。違う瓶と混ぜる際は膨張係数などを考慮して、溶け方や色のテストをしながら何が作れるかを考え、体験教室を続けました。

そうして苦悩した経験と知識が今に生きています。相生での活動が評判を呼び、隣の赤穂、きらきら坂とのつながりが生まれました。

きらきら坂
きらきら坂の途中にある御崎ガラス舎の前で

きらきら坂にある、伝統織物の「赤穂緞通だんつう」のギャラリーに作品を卸すようになり、御崎からの景色にひかれました。そんな中、ちょうど空き店舗ができ、「何をするにもお金がいるけど、この海の景色を眺めながら仕事できるなら貧乏でもいいかな」との思いが込み上げて決意。2014年2月、伊和都比売いわつひめ神社から海へ向かう坂道に御崎ガラス舎を開業しました。

海の色の展示会

ランプシェード
注文を受けて制作した青のランプシェード

海や夕日を感じる色をテーマにした展示会なども開いていて、今年2月には黄色の作品ばかり集めてみました。ランプシェードの受注で、濃い青と淡い青を使った2灯を作ってともすと、瀬戸内の海の昼と夜がイメージできる雰囲気に仕上がったこともあります。

ガラス作品
季節ごとにテーマを設けて作品展も開催

きらきら坂は御崎の先端にあるナポリ料理店「SAKURAGUMI(さくらぐみ)」のオーナーが名付け親です。路面を石張り、階段には幾何学模様のタイル張りと、1年前、おしゃれな雰囲気になりました。

赤穂で落ち着こうと決めてから野良猫を保護して減らすチャリティーにも協力させていただいてます。私も地域づくりの一端を担うことができればと思っています。

私のオススメ

赤穂市特産の塩を使った「塩味饅頭しおみまんじゅう」です。赤穂御崎に近い三島屋本店は市内で唯一、まきで炊いたあんが、しつこくなくて絶品。甘さが口の中でパッと広がります。ガラス体験教室のティータイムでお茶菓子にも使っています。

三島屋本店3代目の三島弘之社長(48)によると「素材の味を生かすため添加物を使わず、不要になった乾燥した建材を利用して炊いています」とのこと。

(読売新聞姫路支局相生通信部・田辺貴司)

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オカモト ヨシコ(おかもと・よしこ)
御崎ガラス舎代表

神戸市生まれ。赤穂市に移住したのは29歳の時。ガラス舎では初心者向けのガラス工芸体験教室や、季節に合わせて企画展も開催。他の作家の作品も展示・販売し、交流を広げている。

読売新聞大阪本社は21年2月に、瀬戸内ブランドコーポレーションと包括連携協定を結びました。読売新聞の記者が、せとうちのライフスタイルを大手小町でも紹介していきます。

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