しまなみ海道、ゆるりと「島時間」が流れる本と自家焙煎珈琲の店

穏やかな海の青や島々を眺めているとどこか心落ち着く。そんな瀬戸内は近年、移住者も増えてきました。兵庫、岡山、広島、徳島、香川、愛媛各県を対象に、ここで暮らす女性たちにライフスタイルや夢を語ってもらう企画を始めます。

夫婦で「こりおり舎」を営む、看板は2つ

広島と愛媛をつなぐしまなみ海道にある大島(愛媛県今治市)で、千々木涼子さん(33)は夫の大介さん(34)と、古民家を改装した本と自家焙煎ばいせん珈琲コーヒーの店「こりおり舎」(今治市吉海町仁江)を営む。島で唯一の書店として昨春オープン。至福の時を提供している。

こりおり舎
こりおり舎で文庫を担当する千々木涼子さん(右)とコーヒーを販売する大介さん

本とコーヒーのどちらも専業で大切にしたくて、ブックカフェではなく、私は「こりおり文庫」、夫は「こりおり珈琲」と看板や入り口を分けて担当しています。

本は子どもの頃から好きでした。東京の広告会社勤務を経て、大型書店の社員として古里、北海道函館市への出店に携わりました。当時同僚だった夫が焙煎士を目指すのを機に退職し、栃木に転居。それから「自分たちの店を持とう」と候補地を探すように。

満員電車はこりごりだったので都会過ぎず、温暖でと検討しました。自営で生計を立てる場所、もしかしたら子どもを育てる場所と考えて結構シビアに。大島は来島(くるしま)海峡大橋で市街地まで車で移動できるし、移住者が多いエリアなのも決め手になりました。

今治市の地域おこし協力隊として2017年から3年間、島内のイベント運営や絵本の読み聞かせなどに取り組み、週末はコーヒー店としてマルシェなどに参加。

本のほうは「不用な本を譲ってもらえたらコーヒーを1杯どうぞ」とPRすると、島の方たちが多数持ち寄ってくれました。一番大切にしている暮らし、食、働き方をはじめ、移住関係、文芸、絵本など約4000冊があります。8割が古本、2割は扱いたい新刊をセレクトして仕入れています。

目と手が行き届く小さな店を人の集まる場に

大型書店にいた時は、納品される膨大な量の新刊を棚に並べる日々でした。自分たちの目と手が行き届く、小さな店を持ちたかった。

こりおり舎

新刊が毎日入ることはないけれど、新たな発見もしてほしくて、入れ替えをこまめにしています。新しく入荷するとあの人ならこれをとお薦めすることもあります。

各地に小規模な独立書店が増えています。本を並べた棚を見るとこだわりがわかって面白いものです。ここでは、まちの書店的な雰囲気を大事にしながらうちらしい本との出会いをお届けしたい。

都市部で暮らした頃、季節を感じたのは店のディスプレーや催しなど人為的なものでした。島ではコロナ禍のさなかに開店し、イベントは中止になりましたが、島の花や果物、海空山は季節の移ろいを変わらず伝えてくれます。

隣では鮮度のいい豆を手回しで焙煎してコーヒーを提供しています。味わいつつじっくりと本を選ぶ人もおられ、一方でも両方でも好きな形で楽しんでもらえれば。

しまなみ海道を走るサイクリストも立ち寄ってくれます。店内に宿泊スペースを設ける準備中で、島の人との交流や移住先を探す人の拠点にもなれば。自分たちが好きな本とコーヒーを介して人が集まる場に、島の時を過ごしてもらえるようにと願っています。

私のオススメ

こりおり舎のしおりとコースター
イノシシの皮で作ったしおりとコースター

「プレゼントや旅の思い出に」とこりおり舎では愛媛県内の作家さんたちが手掛けた雑貨も扱っています。コーヒー豆のデザインやロゴの焼き印をつけた本のしおり(税込み600円)やコースター(同300円)が手触りも柔らかくてお薦めです。

大島の北、大三島(おおみしま)や伯方島(はかたじま)でミカン畑の被害を防ぐとともに、捕獲したイノシシを食用や製品にしている「しまなみイノシシ活用隊」のメンバー、重信幹広さん(40)とコラボ。重信さんと妻瑠依さん(35)の移住者夫婦は、「Jishac(じしゃく)」の名で手作りされています。

(読売新聞今治通信部 名和川徹、写真も)

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千々木 涼子(ちぢき・りょうこ)
本と自家焙煎珈琲「こりおり舎」経営

1988年、北海道函館市生まれ。愛媛県の委託で移住者支援などにあたる一般社団法人の事務局長も務める。店名はフランスの学者が唱えた「コリオリの力」から。オンラインショップもある。

読売新聞大阪本社は21年2月に、瀬戸内ブランドコーポレーションと包括連携協定を結びました。読売新聞の記者が、せとうちのライフスタイルを大手小町でも紹介していきます。

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