瀬戸内で非日常を日常に、コロナ後のライフスタイルを探して

瀬戸内は、若い女性の旅行や移住先として注目度の高いエリアです。2022年には3年に一度の瀬戸内国際芸術祭も開催されます。エリア一帯の観光ブランド化を進めている一般社団法人せとうち観光振興機構の金平京子専務理事に、瀬戸内の魅力や今後のプロモーションの方針などを聞きました。

思わず立ち止まる夕日の美しさ

金平さんは東京出身で、せとうち観光振興機構に着任した19年10月から広島市に住んでいます。瀬戸内での暮らしは、どうでしょうか。

広島の夕日
金平さんが撮影した広島の夕日

「海も山も近く、町中を川がゆったりと流れて、緑がとても濃く感じられます。何より、夕日が本当に美しい。仕事帰りに立ち止まって写真を撮るくらいです」。町中を流れる川でサップを楽しんでいたり、海辺でのんびり釣り糸を垂れていたり。都市の暮らしと、自然に親しむアクティビティーがとても近く、「東京で言う非日常が日常なのだと感じています」。

瀬戸内には700もの島々があります。「日常の移動はフェリーですが、ヨットに乗るとまた景色が違って見えます」。穏やかな気候に大小の島々、地酒、アート、かんきつ類といった要素が、イタリアに似ているという声も聞くそうです。

関係人口の拡大を目指す

機構は、瀬戸内海に面した兵庫、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛の7県と地元企業などで組織されています。クルーズ、サイクリング、アート、食、宿、地域産品という6つのテーマを設けて、マーケティングやプロモーションを行っています。このエリア特有の商品を認定する「瀬戸内ブランド」の登録事業も担っています。また、地元企業のプロダクト開発を支援する株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションとともに、せとうちDMO(Destination Marketing/Management Organization)を構成し、地域全体の活性化を図っています。

金平京子さん
瀬戸内ブランドの商品について話す金平京子さん

これまではインバウンドを狙って、海外での情報発信に力を入れてきました。「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー」や「ニューヨーク・タイムズ」で、世界で行くべき旅先として選ばれたこともあります。「ブランド力をつけて、いよいよ実売に結びつけようというところで、新型コロナによって海外客が見込めなくなりました。21年、22年は国内にも目を向けていきます」

コロナで観光産業は大打撃を受けましたが、金平さんは前向きに受け止めます。「オンライン会議が当たり前になり、どこでも仕事ができる時代になりました。パソナが淡路島に本社機能を一部移転するという動きもでてきて、瀬戸内に“関係人口”を増やすチャンスが広がっているともいえます」

総務省によると、「関係人口」とは、観光でもなく、移住定住でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指すのだそうです。旅のスタイルは、団体旅行から、個人で好きな場所を気ままに巡るようになりました。「スロートラベル」というように、観光名所をあちこち回るのではなく、一か所に滞在して時には地元の人とも交流してゆっくり過ごす旅のあり方も。こうした旅と移住定住の中間に関係人口があると考えればよさそうです。

「人々の消費は、モノからコト、そして時間を消費する時代へ変わってきています。今あるモノやコトを磨き上げながら、これまでなかった組み合わせも試していく。そして、ほかでは味わえない時間をどれだけ準備できるかが問われています」

全てはアートだ!

22年は4月から11月にかけて瀬戸内国際芸術祭が開催されます。「芸術祭は香川県の直島などで行われますが、瀬戸内エリア全体を自然や食文化も含めて、アートという観点で見ていくと面白いのではないでしょうか」と、金平さんは言います。

地域での女性の活躍も期待されます。金平さんがこれまで携わってきた各国の政府観光局や外資系企業でのPRやマーケティングでは、多くの女性がトップやマネジャーを務めていました。「瀬戸内でも、起業して活躍する魅力的な女性たちもいます。ただ、観光関係の組織では男性中心のまま。もっと女性が意志決定の場に入ることで、よい変化が生まれるのではないか」と感じているそうです。

コロナが収束して、国内外から人々を受け入れられる日に向けて、金平さんは、「『瀬戸内に来たら、私はこんなふうに過ごせる』というブランドイメージを醸成していきたいと思います」と話しています。

(読売新聞メディア局編集部 小坂佳子)

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読売新聞大阪本社は21年2月に、せとうち観光推進機構と共にせとうちDMOを構成する瀬戸内ブランドコーポレーションと包括連携協定を結びました。読売新聞の記者が、せとうちのライフスタイルを大手小町でも紹介していきます。

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金平 京子(かねひら・きょうこ)
一般社団法人せとうち観光推進機構専務理事

英国政府観光庁日本・韓国代表、ウォルト・ディズニー・ジャパン・マーケティング・マネージャー、オーストラリア・ニュー・サウス・ウェールズ州政府観光局日本局長などを歴任。2011年に東京都中央区副参事(観光・文化振興・特命担当)、2017年にドバイ政府観光・商務局副代表、18年から日本政府観光局アドバイザーを務めた。1910月から現職。

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