【国際女性デーシンポ】仕事創出と働き方…地元食材で地域を活性化

3月8日の国際女性デーに合わせ、OTEKOMACHI(大手小町)と読売新聞東北統括本部は2月11日、仙台市でシンポジウム「被災地から考えるSDGs」を開きました。東日本大震災から10年を迎える東北で自分らしく働く女性や若者の挑戦、被災地支援のあり方などについて考えました。

パネルディスカッションの第2部では、仙台市で農園を経営する平松希望さんと、岩手県洋野町で水産業を営む下苧坪したうつぼ之典さんが、「仕事創出と働き方」について語り合いました。
(コーディネーター 読売新聞東北統括本部長 長谷川由紀)

持続可能な水産業へつなげる

意見を交わす「平松農園」の平松希美さんと、「ひろの屋」社長の下苧坪之典さん

――農業と水産業、異なる分野ではありますが、お二人とも地域の活力やネットワークにつながる活動で、被災地に風を吹き込んでいます。

下苧坪 都市部で働いた後、地元に戻り、岩手県洋野町で「ひろの屋」を経営しています。「北三陸の自然と人が生み出す最高の食材、製品で、世界中の食を愛する人を熱狂させる」を目標に掲げ、ウニやワカメなどの水産物をブランド化し、世界に向けて発信することに取り組んできました。

例えば、ウニの養殖は、増殖溝ぞうしょくこうという浅瀬の昆布が群生する環境で育てているのですが、ここを「ウニ牧場」と命名しました。「ウニ牧場」で育つ最高品質のウニとして発信しています。

一方、「海のゆりかご」である海藻がなくなる「磯焼け」という現象が進み、地球環境に影響を与えています。ウニの養殖システムは、海藻を適切に管理して地球温暖化対策に寄与でき、本来出荷のない時期に、漁師の仕事を生み出すこともできます。持続可能な水産業につながる取り組みです。北海道大学などと連携し、北三陸以外の地域にも広がっています。

平松 平松農園は、仙台市の沿岸部、若林区荒浜というところにある個人農家です。私は北陸出身で、震災があった年に東北大へ入学して農業経済学を専攻し、ボランティア活動をしつつ、農業や東北の復興の状況を勉強する機会をもらいました。平松農園のテーマは、「農業を通して、豊かな暮らしを提案する」です。

壊滅的な津波の被害を受け、集団移転で人が住まなくなった土地を借りて野菜を作っています。地域外からの就農者の支援や、地域の方と連携した取り組みを行っています。定年退職後の方とか、時短で働きたい女性の方、障害者福祉施設、就労支援施設の方、コロナ禍で仕事を失った方などの就労支援という意味でも、農業が活用できると思っています。復興を感じてもらえて、人の交流が生まれればと、農園にマリーゴールドを植える活動にも取り組んでいます。

いいもの作れば、地域潤う

――お二人とも、前例にとらわれない活動で、地域やコミュニティーへのこだわりを感じます。業界を超えた取り組みにもつながっています。

下苧坪 漁師がいい生産物を作れれば、地域は潤うんです。漁師が取ったものを買いたたけば、地域の価値が下がる。漁師たちが必死で取ってきたもの、作り育てたものに対して、リスペクトすることが大事です。それをストーリーとともに伝えていきたい。ヨーロッパでは、加工すれば付加価値がついて値段が上がるのに、日本では、生産物を加工すればするほど、値段が下がるんです。流通のあり方を変えていかないと、地域は残っていかないと考えます。

野菜を通して顔が見える関係に

――新型コロナの影響で、「より身近で安心できるものを食べたい」などと、人々の価値観が少し変わってきているようです。

平松 日本の流通システムは優れていて、生産者もがんばっているため、全国どこにいても、一年中トマトが食べられます。恵まれているとも言えますが、野菜や水産物の旬が分からなくなっていくんですね。コロナの影響で、家で料理を作り、食事をすることが増えて、改めて農産物に対しての意識は変わってきていると思います。産直通販サイトの登録者が増えていますし、生産者がSNSを通して直接発信していく機会も増えていると感じます。

私が取り組んでいる消費者と生産者が連携する地域支援型農業では、地域内に新たなコミュニティーが生まれます。生産者が消費者に野菜などを直接届けて、お互いに顔が見える関係を作ることで、地震が起きたときなども、声を掛け合って避難ができたり、安否を確認できたりします。防災意識の向上や暮らし方の提案につながると思っています。

下苧坪 地方と都市部にはこれまで情報の格差がありましたが、新型コロナによってオンライン会議が広がるなど、確実に格差は小さくなっています。ネットでいくらでも情報を仕入れられる時代だからこそ、現地に来てもらいたい。新工場を竣工しゅんこうし、ウニの殻むき体験を初めて消費者向けに実施する計画です。オーシャンビューのデッキで、自分で殻をむき、ウニ丼を食べていただきたい。アフターコロナには、東北に来ていただいて、素晴らしい食材を現地で体験していただく。そんな取り組みがこれから増えていくと感じています。

【あわせて読みたい】

下苧坪之典(したうつぼ・ゆきのり)
「ひろの屋」社長

新しい水産業を目指し、ウニやワカメなどの海藻類、鮮魚など北三陸エリアを中心とした水産物のブランド化や輸出推進に取り組む。冬場でも実入りの良い「ウニ養殖」に挑戦するなど、斬新な手法が注目を集めている。

平松 希望(ひらまつ・のぞみ)
「平松農園」経営

富山県出身。東北大農学部に進学し、復興支援サークルでの活動を通じて、被災地で農業を志す。卒業後、農家での研修を経て仙台市若林区荒浜に「平松農園」を開設、復興に向けた取り組みを続ける。

シンポジウム「被災地から考えるSDGs」
2月11日(木)
メーン会場=ホテルメトロポリタン仙台(仙台市)
サブ会場=NTT都市開発株式会社東北支店ショールーム(仙台市)、クロステラス盛岡(盛岡市)
【主催】OTEKOMACHI、読売新聞東北統括本部
【協賛】日本マクドナルド、東北電力、仙台ターミナルビル
【協力】NTT都市開発、TheJapan News
【後援】内閣府男女共同参画局、東北経済産業局、岩手県、福島県、宮城県、仙台市、福島民友新聞社、宮城テレビ放送、テレビ岩手、福島中央テレビ

Keywords 関連キーワードから探す