角田光代「支援は偽善じゃない。『かっこいい私』を自覚して」

OTEKOMACHIは今年も、国際NGO「プラン・インターナショナル(以下プラン)」などと協力して、「#サポチョコ」のキャンペーンに取り組みます。「#サポチョコ」は、バレンタインチョコレートの販売で得たお金の一部を、途上国の女の子たちへのサポートに役立てる取り組みです。実際、途上国に寄付されたお金は、どんな支援につながっているのでしょうか。プランの支援者として長年、途上国での活動を視察してきた作家の角田光代さんに話を聞きました。

消毒、麻酔なしで赤ん坊に…女性器切除の衝撃

角田さんは、10年以上にわたってプランの活動をサポートしています。2009年にプランから初めて視察の依頼を受けた時には、「寄付に懐疑的でした」と打ち明けます。支援を受ける人の手元に届くまでに、寄付金はどこで誰にいくら差し引かれて、最終的にはいくら残るのか――。自分の目で確かめてみたいと思い、視察を引き受けました。

これまでに、ヨルダンやパキスタン、インドなど5か国に赴きましたが、中でも最初に訪れたマリ共和国が強く印象に残っているといいます。

最貧国に分類されるマリ共和国は、西アフリカに位置し、7つの国と国境を接しています。プランによると、マリではいまだに10人中9人が、女性器切除の施術を受けています。角田さんは、プランが展開する「女性器切除廃止運動」を視察するため09年10月、首都・バマコから車で12時間ほどの目的地を目指しました。

女性器切除(FGM) 女性外性器の一部を切除する慣習のこと。女性から快楽を奪い、処女性を高めるという男性優位の考え方が背景にあるとされるが、明確な起源は不明。国連の調査によると、アフリカを中心に約30か国で行われ、経験者は約2億人に上る。

訪ねたのは、FGMの慣習が続く「ネニ村」と、FGMを廃止したばかりの「イビ村」、廃止して1周年の記念式典を開く「ダガ村」と、状況が異なる三つの村。

ネニ村で施術のデモンストレーションを見た際、角田さんは、その不衛生さに驚きました。青空の下、石の上に寝そべる赤ちゃんの傍らに用意されていたのは、石の塊のような真っ黒にさびたナイフと、水を入れる木のボウル。そんな粗末な器具を使い、消毒もせずに、施術が行われているのです。

他の国や地域でも、何も分からない子どものうちに不衛生な環境で施術が行われるケースが多く、感染症や出血多量で命を落とす子が少なくありません。そういった危険から女の子たちの心身を守ろうと、プランのスタッフは、現地のボランティアや行政機関などと回って、FGMの危険性を訴えたり、子どもたちに性教育を行ったりする活動に取り組んでいます。

慣習の続く村には、なかったモノ

その後、イビ村とダガ村を訪問した角田さんは、FGMを実施している村と廃止した村との間に、決定的な違いがあることに気づいたといいます。

「廃止して式典まで開いたダガ村って、人がとても明るいんですよ。男女がイコールな感じで。ネニ村は、女性たちが暗く、男性に意見を言えない雰囲気でした」

角田さんが、現地を訪れた時の写真(c)プラン・インターナショナル

ネニ村で、女性だけを集めてFGMの話を聞いた際には、何を質問しても「私たちの文化だから」「全員やめる気はない」と習慣を受け入れる答えばかり。「本当はやめたいと思っている」。一人の女性がそうつぶやいたのは、集会も終わりに近づいた頃でした。一方で、ダガ村では、男女がオープンにFGMの話題に触れ、廃止を一緒に喜び合っていたそうです。

「村のおきては、みんなで話し合わないと決められません。男女間で話し合える村は、FGMに限らず開かれていく。風通しの良い村の雰囲気が明るくなっていくのは、必然なのかな」。そんな思いを巡らせます。

いくら持って行かれるかは、問題でなかった

もっとも、イビ村とダガ村も、すぐに廃止が決まったわけではありませんでした。プランが1996年に同国の5地域・180村で活動を始めてから、これまでに完全廃止を宣言したのは90村ほどにとどまっています。イビ村では、廃止の声があがってから宣言に至るまで、5年の歳月を費やしました。根付いた慣習をなくすには、長い時間がかかるのです。

自宅から何時間もかけてイビ村に通っていた同国のボランティア女性も、支援が途切れてしまうことへの危機感を訴えていました。「寄付が彼女たちの活動に直接つながっているかは分かりません。けれど、活動を支える本部自体に資金がなければ、支援は途切れてしまう。渾然一体となったサポート体制を目にして、『誰にいくら持っていかれるかという問題ではない』とハッとさせられました」と、振り返ります。

継続的な支援を実現させるために

新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、今後10年間で、本来であれば守れたはずの200万人の女の子たちがFGMを受けることになる――。国連人口基金(UNFPA)は昨年6月、こんな推計値を発表しました。ロックダウン(都市封鎖)などによって、現地での支援活動が難しくなっていることが要因の一つです。

2度目の緊急事態宣言が発令中の今、私たちはどうしても国内の状況に関心が向きやすくなっています。「それでも、細々とでも他国への関心を持ち続けることが、継続的な支援を実現させるのです」と角田さんは力を込めます。

コロナ禍で迎える今年の「#サポチョコ」キャンペーン。「日本ではなぜか、寄付や慈善活動は、後ろめたさや、『偽善』と言われる恐怖とセットになっています。『誰かをサポートしたい』という基準でチョコを選ぶとしたら、それはすごくかっこいいこと。『かっこいい私』を自覚して、そんな声に打ち勝ってほしい」と、女性たちにエールを送ってくれました。

(読売新聞メディア局 安藤光里)

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今年の「#サポチョコ」実施状況は、下記の通り

ぐるすぐり(オンライン)
販売期間:1月6日(水)~2月14日(日)
販売ページURL:バレンタイン特集 
対象商品:バレンタイン特集ページに掲載されるすべてのチョコレート
松屋銀座(実店舗)
開催期間:2月3日(水)~14日(日)
開催場所:松屋銀座 8階イベントスクエア 「ギンザ バレンタイン ワールド」
対象商品:「ギンザ バレンタイン ワールド」で販売するタブレットチョコレート*一部を除く

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