長野パラリンピック金メダリスト・マセソンさん…共生社会の「公平なルール」とは?

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インクルーシブな社会について講演するマセソン美季さん

今夏の東京パラリンピックを控え、パラリンピックの意義を学び、共生社会について理解を深める「ダイバーシティー&インクルージョン」セミナーが15日、読売新聞東京本社で開かれました。障害の有無、性別・国籍の違いなどを超えて共生社会を実現するために、参加者が語り合いました。

講師は、長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル三つ、銀メダル一つを獲得したマセソン美季さん。冒頭のあいさつで、「目をつぶって全速力で走ってみて、と言われても難しいですよね。障害のあるアスリートを見ると、人間の可能性はとんでもない力を秘めているとつくづく思います」と話しました。

セミナー参加者と語るマセソンさん

日本の親は「じろじろ見ないの」

マセソンさんは、両腕のないパラアーチェリーの選手が、足で弓を引いて競技する写真を紹介。「私は最初、両腕のない選手がどうやってアーチェリーをするのだろうかと疑問に思いました。まず、自分たちが『当たり前』と思っていることを疑ってみることが大事。『できない』と思うのではなく、『可能性』のほうに目を向けて、どうすればできるか考えてみることです」と説明しました。

生活の拠点となっているカナダでのエピソードも。車いすを利用していると、子どもたちがじろじろと見ることがあります。日本では「失礼だから、じろじろ見ないの」と子どもを諭す親がほとんど。カナダでは、親が「うちの子が聞きたいことがあるみたいなの。質問してもいい?」と話しかけられます。「どうやってお風呂に入るの」「どうして車いすに乗っているの」などと質問する子どもたちに説明し、ハイタッチを交わしたそうです。マセソンさんは「こういう経験があると、車いすユーザーを身近に感じられるのではないか」と話していました。

「公平」を実現するルールとは?

セミナーでは、車いす利用者との接し方について、具体的なシチュエーションを想定して考える機会もありました。

運動会で1組と2組が玉入れで勝負をします。1組には車いすの児童が1人います。どのようなルールなら、みんなが楽しく競い合えるでしょう?

4~5人のグループが語り合い、意見を交換しました。

「玉を垂直方向に投げるのではなく、水平に投げるルールにしたらいい」

「2組の児童の1人が車いすを使って、同じ条件で戦う」

「みんなで宇宙に行って、無重力状態で競技をする」

マセソンさんは「こういう場面を想定してみると、どうすれば、みんなが公平にできるだろうかと考えがちです。でも、車いすの児童に『どうしてほしい?』と聞くことがほとんどありません」と指摘。「大切なのは、ルールづくりの段階で当事者に参加してもらうことです。当事者の意見を聞くという姿勢が抜け落ちていることが多くあります」

それぞれが考える「インクルーシブな社会」をつづりました

共生社会へ向けたメッセージ

講演後、共生社会を実現するために、参加者全員が画用紙にメッセージやイラストを書きました。「思いやりを持つこと」「まず行動する」「相手にもっと興味を持つ」などのメッセージを見たマセソンさんは、「共生社会はみんなで作り上げていくもの。どんな社会が望ましいか考え続けてほしい」と呼びかけていました。

セミナーに参加した会社員、黒岩茜さん(27)は、人事関係の仕事に携わっており、人材の多様性や共生社会について関心があったそうです。「海外で暮らしているマセソンさんの話はとても勉強になりました。分からないことは恥ずかしいことじゃなく、知りたいと思うことが大事だと感じました」と感想を語っていました。

5年前に交通事故に遭い、右手が動かなくなったという都内の会社員女性(29)は、「どうやって生きていけばいいか、ずっと悩んでいます。でも、人はそれぞれが違っていいという思いを持つことができました。マセソンさんが話していた impossible(不可能)ではなく、i’m possible(私はできる)という考え方に勇気づけられました」と話しました。

会場に用意された「応援フラッグ」。参加者が東京パラリンピックへメッセージを書いた

for your smile

このセミナーは、OTEKOMACHIが主催し、日本財団パラリンピックサポートセンターの協力で開催されました。

OTEKOMACHIは、女性の活躍やダイバーシティー&インクルージョンを推進する「for your smile キャンペーン」を展開します。個人、団体、企業がだれでも参加でき、インスタグラムやツイッターで #foryoursmile  #oen2020 のハッシュタグで、パラスポーツの応援やダイバーシティー推進のメッセージを集めます。

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この記事はThe Japan Newsで英語で読むことができます。
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