国立新美術館ファッションインジャパン、必見のパジャマドレスとは?

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戦後日本のファッションを考察する企画展「ファッション イン ジャパン 1945―2020 流行と社会」(読売新聞社など主催)が9日、東京・六本木の国立新美術館で開幕した。展示物は衣服を中心に、写真や雑誌、広告など、計約820点。ユニークなファッションの発展の軌跡をたどり、社会との関連性を明らかにする。

もんぺからKawaiiまで

日本のファッションは従来、森英恵や高田賢三、三宅一生、山本寛斎らが海外のコレクションで活躍し始めた1970年代を起点に語られがちだった。しかし、実際は明治期に洋装が輸入され、太平洋戦争前のモダン文化や戦後の洋裁ブームといった下地があり、「70年代」が到来。その後、コム・デ・ギャルソンなどの世界的ブランドや「Kawaii」に代表される独特のファッション文化の誕生につながっていった。

企画展では、そうした過程に丁寧に目配り。年代ごとに九つに分けた展示スペースに、時代を象徴する計315点の服飾品と写真などの豊富な資料を共存させ、日本ファッションの変遷を多角的に紹介していく。

ファッションインジャパン展 森英恵/アロハシャツ 映画「狂った果実」衣裳/1956年/日活株式会社 撮影:杉本和樹 大手小町
森英恵/アロハシャツ 映画「狂った果実」衣裳/1956年/日活株式会社 撮影:杉本和樹

プロローグの戦前・戦中期では、洋装を楽しむモダンガールのスナップ写真とともに、華やかささえ感じさせる唐草模様銘仙もんぺなどを展示。山本寛斎のジャンプスーツや森英恵のオートクチュールドレスといったファッション展ならではの王道作品の一方、50年代の映画「狂った果実」で石原裕次郎が着用した衣装のアロハシャツ、80年代の「ツッパリ」男子学生が愛用した変形学生服や90年代のギャル文化を象徴する「ルーズソックス」も並べる。

ファッションインジャパン展 セーター、フレアスカート 金子功 ピンクハウス  制作年不明(左) ブルゾン、ドレス 金子功 ピンクハウス 1986年 大手小町
セーター、フレアスカート/ 金子功/ ピンクハウス/ 制作年不明(左)
ブルゾン、ドレス/ 金子功/ ピンクハウス/1986年

各時代の流行や風俗が端的に表れている雑誌や広告のポスターなども興味深い。服をつくるデザイナーだけでなく、それを着る消費者と両者をつなぐメディアの視点や動向に目を向けているのも、本展の特徴だ。90年代以降になると、流行の発信源が「街」に移り、「渋カジ」「裏原系」などと呼ばれるスタイルが誕生。おしゃれな一般人が「読者モデル」として流行を先導した。2000年代、奇抜な「ゴスロリ」や「モテ系」のコンサバファッションは「Kawaii」文化として輸出された。

「現在から未来へ」と題した最後の展示スペースでは、デザイナーや雑誌編集者ら10人が「ファッションとは何か」をテーマにそれぞれの思いを語る映像を流す。会期中、雑誌編集者や海外の研究者らが日本のファッションやライフスタイルの変遷などについて語り合うトークイベントも予定されている。(敬称略)

日本の装い 歩みたどる…本橋弥生・国立新美術館主任研究員

「日本のファッション史を通観できる初めての展覧会だと思います」。同展を企画した国立新美術館主任研究員の本橋弥生さん=写真=は、そう話す。

「国内の洋装の歴史をまとめて紹介したら面白そう」と5年ほど前に構想。他の学芸員とともにデザイナーやブランドのもとを訪ね歩き、話を聞いたり、作品を集めたりしてきた。

「今回展示する約300点の服飾品の多くがプライベートコレクション。初公開や今後見られない可能性が高いものもあります」と強調する。

特に注目してほしいという服が、日本人デザイナーの草分け的存在の田中千代さんの「パジャマ・ドレス」だ。展示品の中で最も古い1932年に発表された服だが、ボーダー柄とさわやかな配色がエレガント。「ココ・シャネルが活躍していた時代に、これほどモダンな服を作れる日本人がいたことに驚き、誇りに思いました」

ファッションインジャパン展 パジャマ・ドレス/田中千代/1932年/渋谷ファッション&アート専門学校 撮影:加藤成文 大手小町
パジャマ・ドレス/田中千代/1932年/渋谷ファッション&アート専門学校 撮影:加藤成文

作品を集める過程では、日本人デザイナーの力量を再認識する機会が度々あった。たとえば、80年代に人気を集めたメンズブランド「アーストンボラージュ」の佐藤孝信さんは、ジャズの帝王と呼ばれるトランペット奏者のマイルス・デイビスさんと親交を深め、ステージ衣装や私服を手がけていた。「70~80年代は本当に多くの個性的なデザイナーが登場して、世界とつながりを持っていました」と話す。

衣服だけでなく、写真や映像、雑誌、音楽など様々なメディアを通して、日本のファッションの歩みをたどれる同展。「懐かしさを感じるだけでなく、新たな発見もあるはず。ぜひ足を運んでほしい」と話している。

ファッション イン ジャパン 1945―2020 流行と社会

【会期】6月9日(水)~9月6日(月)
【会場】国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
【開館時間】午前10時~午後6時(金・土曜は午後8時) ※入場は閉館の30分前まで
【休館日】火曜日
【観覧料】一般1700円、大学生1200円、高校生800円 ※中学生以下、障害者手帳を持参している人(付き添い1人を含む)は無料。スマートフォンアプリ「美術展ナビチケットアプリ」で日時指定の事前予約が原則必要
【問い合わせ】03・5777・8600(ハローダイヤル)
【展覧会ホームページ】https://fij2020.jp
【主催】読売新聞社、国立新美術館、島根県立石見美術館、日本テレビ放送網、BS日テレ、文化庁、日本芸術文化振興会
【共催】経済産業省
【協力】七彩
【後援】J―WAVE
※開館時間、休館日は変更の可能性あり。最新情報は展覧会ホームページで。

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