森美術館の展示の熱量がすごい! 女性アーティストの年齢に驚き

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森美術館館長
片岡真実館長、フィリダ・バーロウ「アンダーカバー 2」を背景に

世界14か国の71歳から105歳の女性アーティスト16人による「アナザーエナジー展」が東京・六本木の森美術館で開かれています。50年以上のキャリアを持つ彼女たちの絵画や映像、彫刻などの多彩な作品群は、パワフルでエネルギーに満ちあふれています。なぜ今、彼女たちに注目が集まっているのでしょうか。 

コロナ禍の美術展ということで、海外アーティストが来日できず、Zoomなどでつないで展示作業を行ったものもあるそうです。会場の入り口付近に展示されているフィリダ・バーロウ(イギリス)の作品は、28本の柱に34枚のキャンバス、77個の玉で構成されています。iPadをあちこちに配置して、作家が全体を見渡せるようにしながら、同館のスタッフたちが組み立てていきました。初めての試みは、空間把握が難しく、手探りで進められました。バーロウは、5人の子供を育て上げ、定年後の2010年に開いた展覧会をきっかけに国際的な評価が高まったアーティストです。 

森美術館の片岡真実館長は、「準備は大変でしたが、リアルの展示に勝るものはありません。コロナによってデジタルで作品に触れる可能性も広がりましたが、画面越しでは伝わらない素材感、オーラやエネルギーを感じてほしい」と話します。 

16人の展示作品は計約130点。見応えがあり、メッセージ性にあふれています。

ロビン・ホワイト
ロビン・ホワイト&ルハ・フィルタ「大通り沿いで目にしたもの」

キリバス共和国に17年間生活したロビン・ホワイトは、地域の女性たちの共同作業によって作られた樹皮製の布「タパ」を用いています。展示作品の「大通り沿いで目にしたもの」は、幅3.8メートル、長さ24メートルもあります。作品制作にも共同作業が取り入れられ、「ひとりのアーティストだけが作者だという個人主義的な価値観からの解放でもある」と同美術館では解説しています。 

ジェンダー不平等、貧困、人種差別などの社会的課題に取り組んできたスザンヌ・レイシー(アメリカ)の展示では、2013年のパフォーマンス作品「玄関と通りのあいだ」が記録映像で紹介されています。ニューヨーク・ブルックリンの一角。参加者は住宅の玄関前の階段に座り、様々な社会問題について語り合い、それを人々が傍聴しています。作品からは、参加することによる連帯や社会への問題提起が見て取れます。

三島喜美代
三島喜美代と新作「作品 21-A」

日本人アーティスト、三島喜美代の作品は、独特の質感が印象的です。陶にシルクスクリーンを施して作られた、巨大な“新聞”の山。彼女は高度経済成長期に、社会に氾濫する膨大な情報に対する不安感や恐怖感を覚えたといいます。80歳代後半になっても新作に取り組むなど、創作意欲は衰えることがないようです。

片岡館長によると、今回の展示は、ダイバーシティーを重視する世界の社会的潮流と呼応しているといいます。「キャリアの長い女性アーティストへの再評価が急速に進んでいます。そうした女性たちを網羅的に見せるのではなく、個々の芸術観も充分に伝えるため、地域や世代、表現方法の違いなどを考慮して16人に絞りました」と説明します。「フェミニズム的な立ち位置が明らかな人もいるし、ジェンダーとは関係なく芸術性を追求している人もいます。いずれにしても作品を見れば、年齢や性別から想像されるイメージはほとんど吹っ飛んでしまうでしょう」

ベアトリス・ゴンザレスの作品
コロンビアの国民的アーティスト、ベアトリス・ゴンザレスの作品「縁の下の嘆き―携帯電話を持って嘆く」

なぜ、女性アーティストが注目されるようになったのでしょうか。「アートの世界では長らく欧米の白人男性中心の歴史が描かれてきました。実際には、もっといろいろな地域で、様々な人によって作品が作られているのに。一元的にとらえられてきたアートが、この30年ほどで徐々に多元的になってきたのです。草間彌生を始めとする日本の戦後美術の再評価も同じ潮流にあります。本展では女性アーティストを取り上げていますが、性別に関係なく、ぜひ会場に来てほしいですね。アイデンティティーを主題にするというよりは、絶えざる好奇心と自分の進むべき道への探究心に裏付けられた個々のアーティストの生き方、尊厳を感じられることでしょう」

新型コロナウイルスという未知なる困難に直面している今、様々な苦難を乗り越えて創作を続けている彼女たちの作品は、見る人に明日への希望やエネルギーを与えてくれるに違いありません。

 「アナザーエナジー展 挑戦しつづける力­­世界の女性アーティスト16人」

会場 森美術館(東京・六本木、六本木ヒルズ森タワー53階)
会期 4月22日(木)~9月26日(日)
開館時間 月曜、水~日曜10:00~20:00、火曜10:00~17:00(時間短縮営業中)入館は事前予約可
入館料 一般オンライン購入1800円(平日)、同2000円(土日祝)など
※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。

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