なぜ隣に? コロナ禍に密着してくる「トナラー」の心理とは

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新型コロナウイルスの感染防止で、あらゆる場所で、密を避け、人との距離を意識する毎日が続いています。でも、店内や電車内がすいているのに、わざわざ見知らぬ人の隣に座る人っていませんか。読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」でも、そうした「トナラー」の存在が話題になっています。なぜ密着してくるのでしょうか。トナラーの心理に詳しい専門家に聞きました。

ガラガラなのに、なぜか隣に

「平日の日中ガラガラの飲食店にて」という投稿を寄せたのは、アラ還の「しゅうの舞」さん。ある昼下がり、50席ほどの飲食店に入りました。ランチタイムを過ぎていたため、客は1人で店内はガラガラ。店員に「好きな席を」と促されたトピ主は、密を避けるために先客から一番離れた席に座りました。

ところが、同じように案内されたにもかかわらず、後から来た男性客は、わざわざトピ主の隣の席を選んだのだそうです。密を気にしない男性の行動に、ギョッとしたトピ主さん。「ガラガラの狭くはない飲食店で、このご時世わざわざ隣に座ってくる方って、どんな心情だと思いますか?」と、問いかけました。

飲食店で映画館で…「トナラー」経験談

男性客について、「そら」さんは、「いわゆる『トナラー』ではないでしょうか」とレス。「なんにせよ『ガラガラの場所で隣に来る』時点で少々変な人には違いないので、次から遠慮なく席を移動していいと思いますよ」とアドバイスしています。

「トナラー」に出くわした人たちからの経験談が、多く寄せられました。

◆ 「7割近くが空席の映画館に1人で入った時、見知らぬ男性が隣にピッタリ座ってきました。『こんなにすいているのに、なんで隣に座るんですか!』と言ってしまいました。男性はブツクサ言いながら少し前の列に移動したのですが、そこでもカップルの男性の横にピッタリと座り、カップルが席を移動していました。なぜ詰めて座りたかったのか謎です」(「ハサミ」さん)

◆ 「ガラッガラの電車でなぜかぴたりと真横に座られました。私は20代女で向こうも若い女性でした。どこに座ろうが自由なんですが、私も『???』となりましたね~」(「通りすがり子」さん)

◆ 「コロナ禍なので、ガラガラの店内を確認したうえで、数回ほど入店したことがあります。そんな時に、後から入店してきてわざわざ至近距離の隣のテーブルに座られたことが2回あります。トナラーっているんですね」(「ねこ」さん)

◆ 「このコロナ禍、え~?!とは思いますよね。私なら遠慮せず席を移動させてもらいます」(「三寒四温」さん)

コロナ禍だからこそ増えている?

感染予防のために、密を避けるように言われているのに、なぜ、わざわざ隣に来たがるのでしょうか。目白大学名誉教授で、社会心理学者の渋谷昌三さんは、「コロナ禍だからこそ、トナラーが増えている可能性があります」と話します。

渋谷さんによると、人は普段、無意識のうちに他人と一定の距離(パーソナルスペース)をとって暮らしています。どのくらいの距離か個人差はあるものの、一般的に両手を広げた範囲といわれ、その内側に親しくない人が踏み込むと、不快に感じるといいます。

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例えば、満員電車などパーソナルスペースを確保できない場所では、人は不快な気持ちやストレスを感じやすくなります。そうした時、相手を人ではなくモノとみなす「没人格化」のメカニズムが働いて、不快感をやり過ごすことができるようになっています。

ところが、トナラーと呼ばれる人々は、十分なパーソナルスペースが確保できるような環境でも、「没人格化」を続けてしまいがち。つまり、切り替えが苦手なのではないかと考えられています。

さらに、人は元来、社会不安が強ければ強いほど、不安を和らげるために他者を求めて近づき、集団で過ごそうとする傾向があるそう。火事の時に、大勢の野次馬が集まるのも同じような心理です。

渋谷さんは「コロナ禍で『感染したらどうしよう』と社会不安が高まっているからこそ、人と近づきたくなる人もいます。特に、同じ店に来ている客に対しては、『似たタイプだ』と仲間意識を感じるせいで、より距離が近くなりやすい。矛盾しているように思いますが、そうしたケースもあると思いますよ」と話します。

トナラー避ける2つの方法とは

でも、見ず知らずの他人に密着されるのは困りますね。トナラーについて回避方法はないのでしょうか。渋谷さんは、飲食店に入る場合の対策として、〈1〉壁に隣接しているなど、ほかの人が来づらい隅の席を選んで座る〈2〉後から来る客から顔が見えるよう、ドアに顔を向けて座る――この二つを意識してほしいと提案します。

〈2〉については、面白い実験も。ある大学の先生が、研究室のドアに背を向けて座っていた場合と、ドアを開けると直接顔が合うよう座っていた場合とを比べたところ、ドアに顔を向けて座っていたときのほうが、相談に来る学生の人数が少なかったそうです。

「人は、目が合うと威嚇されたように感じるので、思わず大きな距離(他者を遠ざける)をとるのです。入り口から顔が見えるように座り、客をチラッと見るだけで回避する効果があります」と、渋谷さんはアドバイスします。

視線で縄張りを示す。心地良い距離を取ってもらうには、工夫が必要なんでしょうね。

(取材/読売新聞メディア局 森野光里)

【紹介したトピはこちら】
平日の日中ガラガラの飲食店にて

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渋谷昌三(しぶや・しょうぞう)
社会心理学者

1946年、神奈川県生まれ。目白大学名誉教授。学習院大学文学部を経て東京都立大学大学院博士課程修了。文学博士(心理学)。山梨医科大学(現山梨大学)教授、目白大学教授を経て、現職。「なにげない言動」や「しぐさ」「くせ」などから、人の深層心理を追究する独自の人間観察学を開拓。著書に「面白いほどよくわかる! 心理学の本」(西東社)、「恋愛心理の秘密」(大和書房)など多数。