中高生向け性教育ドラマが、大人の女性に刺さる理由

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(C)AbemaTV,Inc.

ジェンダー問題への関心が高まる中、テレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA(アベマ)」のオリジナルドラマ「17.3 about a sex」(全9話)が、注目を集めています。このドラマは、女子高生の性体験やセクシャリティーなどの悩みを赤裸々に描いたストーリーで、10代をターゲットにした性教育ドラマとして制作されましたが、大人の女性からも支持を得ているそうです。人気の理由や番組制作の背景などについて、プロデューサーらに聞きました。

「胸のサイズ」「経験人数」…人に聞けない性の話

「あさってさ、うち来ない? いつも外だし、おうちデートしようよ」。付き合って間もなく1か月の彼氏にそう誘われた主人公の一人、清野咲良(せいの・さくら)。初体験を覚悟し、スマートフォンで調べたところ、ある調査結果を見て驚きます。

「初体験の世界平均は、17.3歳!?」

親友に「17.3歳って、うちらじゃん。早くない?」と尋ねると、「いつまで子どもみたいなこと言ってるつもり? もう大人だよ?」と諭されてしまいました。咲良は戸惑いつつも、下着を買ったり、ムダ毛処理をしたりと、初体験に向けて準備します。

そんな一幕から始まる「17.3 about a sex」は、「女子が経験人数多いのってダメなの?」「胸のサイズってそんなに大事?」「人を好きになることに、性別って関係ある?」など、気になるけれど、大人には聞きづらい性にまつわるテーマに切り込んだ青春物語。主人公の女子高生とその家族らの姿をリアルに描くと同時に、生物学などの情報を使って、性の知識を分かりやすく伝えています。

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2020年9月からABEMAで配信されると、「全ての中高生と教師、中高生の親に見てほしい」「保健の授業で流してほしい」などとSNSで話題に。SNSマーケティング関連会社が実施した「2020年インスタ流行語大賞」で、「17.3」が8位に選ばれるなど、大きな反響を呼びました。

おなかを殴ると妊娠しない? 女性たちの悩み

今も、閲覧数は伸び続けているそう。視聴者の6割は女性で、20~30代がその半数近くを占めているといいます。

ティーン向けのドラマが、なぜ大人の女性の心に刺さるのでしょうか。ドラマのプロデューサー・藤野良太さんは、その理由について、「女性の初体験」というテーマ設定にあるのではないかと分析します。

「初体験で傷ついている女性って、多いと思うんですよね」。脚本を手がけた女性作家のそんな一言から、このドラマは生まれました。

親友2人に相談する咲良(右)(C)AbemaTV,Inc.

初体験の世界平均が17.3歳だという調査結果を知った藤野さんは当初、コミカルな雰囲気の作品を制作しようと考えていたそうです。しかし、女性作家の言葉をきっかけに、20代の女性や産婦人科医らを取材すると、性教育の遅れや性の話題をタブー視する風潮によって、性に関する正しい知識を得ていなかったために、傷ついた経験のある女性が少なくない現状が見えてきました。

取材した女性の中には、彼氏に「おなかを殴れば子どもはできない」と言われ、誰にも相談できないまま関係を続けていた人や、子どもの頃、テレビ番組に動物の交尾の様子が映ると、気まずそうにした母親を見て、性は触れてはいけない話題だと思ったという人もいました。

「私も恥ずかしながら、性の知識を含め、取材して初めて知ったことばかりでした。いろんな知識を持った上で、主体的な初体験を迎えてほしい。ドラマを通じて性教育を伝えなければと、コンセプトを変えたのです」と、藤野さんは明かします。

視聴者の女性たちからは、自身の経験を重ね、主人公たちに共感するコメントが寄せられています。

「性の知識が足りなかったために、学生時代にレイプのような形で初体験をしました。誰にも言えないままトラウマになり、“普通じゃない自分”に悩んできましたが、ドラマで同じように悩む人がいることや、正しい知識を知って心が救われました」

「10代の頃に見たいドラマだった!」

「主人公の倍の人生を生きている自分でも共感できる。付き合えばセックスして当然と思っている男子にも、求められたら応えてあげるのが当然と思っている女子にも勧めたい」

大人こそ性の知識をアップデートしてほしい

「17.3 about a sex」のほかにも、有料配信サービス大手「ネットフリックス」で、海外の性教育ドラマが配信されたり、ユーチューバーが中高生向けの性教育動画を配信したりと、新しい性教育の形が生まれつつあります。

「17.3 about a sex」の監修を担当した慶応大2年の中島梨乃さんは、“性教育プロデューサー“を名乗り、ユーチューブなどを通じて若者への啓発活動に取り組んでいます。「大人にも性教育に触れる機会を持ってほしい。知識をアップデートすることで、今まで“当たり前“と思っていたことに違和感を持つきっかけになります」。中島さんはそう話します。

中島梨乃さん

例えば、「避妊は男性が準備するコンドームで」と考える女性は少なくありません。ところが、コンドームには性感染症の予防などのメリットがある一方、妊娠率が約15%と比較的高いといわれています。つまり、7回のうち1回程度の割合で、コンドームをつけていたのに妊娠することがあるのです。

望まない妊娠を防ぐには、低容量ピルや避妊リングなど、男性だけに頼らない避妊方法に関する知識を持ち、実践することが大切になります。また、「生理の遅れや痛みは誰にでもあるから」と症状を放っておいたら、実は重大な病気が隠れていたというケースも。健康を保つためにも、性に関する正しい知識を持つことは極めて重要と言えます。

中島さんは「ライフプランが多様化している今こそ、正しい知識を知って、体のことを自分自身で決定できるようになってほしいと思います。健やかに毎日を過ごすためにも、“大人の性教育”は大切なことではないでしょうか」と呼びかけています。

(読売新聞メディア局 森野光里)