「女子力高い」はNG…メルカリの「無意識の偏見」研修とは

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メルカリは無意識バイアスワークショップの研修資料を公開している。大手小町、読売新聞

最近よく耳にする言葉に「アンコンシャス・バイアス」があります。「無意識の偏見」を意味し、社内研修などのテーマに取り入れる企業が増えています。外国籍の社員が多く働く「メルカリ」(本社・東京)も、「無意識の偏見」への理解を深めることに積極的に取り組んでいる企業のひとつ。同社の全てのマネジャーが「無意識バイアスワークショップ」を受講することを必須としています。同社が報道関係者向けにオンラインで開いたワークショップを体験しました。

誰にもある無意識バイアス

無意識バイアスは、自分自身が気づいていない、ものの見方やとらえ方にあるゆがみや偏りのこと。普段の生活の中に根ざした習慣などからくる思い込みは、無意識のうちに培われているといいます。代表的なものに、「子どもを持つ女性は仕事に専念できない」「外国籍だから言葉が通じない」などがあります。

同社アンコンシャス・バイアス・ワークショップ担当のチェン・チーキュウさんは、「ワークショップの目的は、バイアスを全てなくすことではありません」と強調します。無意識だけに、全てなくすことは不可能。チェンさんは、「ワークショップを通して、無意識バイアスとは何かを理解し、自分の判断やコミュニケーションの取り方が無意識バイアスに影響されていないか、セルフチェックする習慣をつけてほしい」と話します。採用や勤務評価などの大事な意思決定を左右する可能性もあるだけに、自分の無意識バイアスに気づくことが大事になります。

ワークショップは、チェンさんを案内役に、企業のプロジェクト会議を想定したシナリオに基づいて進められました。会議の参加者のうち、年長の男性をプロジェクトの責任者だと思い込む事例や、「僕は男性だから、ロジカルに説明してもらわないと」と発言する事例がチェンさんから紹介されました。

チェンさんによると、ジェンダー、人種、年齢などの属性を無意識に個人の能力に結び付けてしまう偏見として、「見た目が年長の人は、若く見える人より専門知識が高いと思われやすい」「2枚の履歴書を比較した時に、男性の名前が付いているものの方が、女性の名前が付いたものより『雇用しがいがある』と判断される」といった例があるそうです。

また、「家事や育児は女性の役割」という無意識バイアスがあると、「パパ社員には出張の打診をするが、ママ社員にはしない」などの言動につながります。

弁当は誰が作るもの?思い込みはないだろうか 読売新聞のサイト「大手小町」
弁当は誰が作るもの?思い込みはないだろうか

互いに気づき、話題にし合おう

印象的だったのが、日常に潜む、傷つける意図のない差別的な言動。「マイクロ・アグレッション(小さな攻撃性)」と呼ばれます。例えば、昼食に手作り弁当を持参した女性社員に対する「女子力高いよね」という発言。これは、「弁当を作ることは女性の仕事である」との思い込みがある証拠です。男性の同僚に「彼女いる?」と聞くのは、「必ず異性愛者である」との決めつけからくる発言です。何げない言葉に潜む偏見に、ハッとする人も多いのではないでしょうか。こうしたことから「メルカリ」は、フリマアプリの性別欄に、「女性」「男性」のほか、「無回答」を設定しています。

無意識バイアスかどうかをセルフチェックする際は、「『客観的な事実に基づいているか』『もし自分が相手の立場だったらどう思うか』などを考えるといい」と、チェンさんはアドバイスします。

グローバル企業がダイバーシティー&インクルージョンを重視するのは、それが社員の創造性や問題解決力などを高め、企業の競争力向上につながるから。多様性のある企業ほど収益が高まり、顧客の理解も深まる傾向があるそうです。

無意識の偏見への理解につなげてほしいと、メルカリの自社サイトでは「無意識バイアスワークショップ」の研修資料の無償公開を始めました。人材採用や人事評価をする立場にある人だけでなく、誰もが「無意識バイアスは自分にも、自分以外の人にも必ず起こるもの」と認識し、お互いに気づき合い、話題にし合うことが、多様性のある職場や社会作りにつながりそうです。

(読売新聞メディア局 谷本陽子)