ひな人形買うのはだれ?「立ちびな」が人気の理由と3つの間違い

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ひな祭りの人形はだれが買うの?
3月3日は桃の節句、ひな祭り

3月3日は桃の節句。女の子のいる家庭では、ひな人形を飾ったり、ひなあられを買ったりして準備をしている人も多いのではないでしょうか。女性にとってなじみ深いこの伝統行事を巡っては、「ひな人形は誰が買うの?」「姉妹それぞれに必要?」「いつまで飾っていていいの?」といった疑問の声も上がります。創業180年を超える人形専門店の老舗「久月」(東京・台東区)に話を聞きました。

子の身代わりとなるひな人形

ひな人形の起源について、久月総務部の渡辺進部長は「平安時代の宮廷貴族のひな遊びや、お払いの流しびなに由来しています。王朝文化や宮廷生活についての芝居や物語を通して、江戸時代に庶民に広がりました」と説明します。

ひな祭りにひな人形を飾るのは、子供の健やかな成長や幸せを願うためで、厄払いやお守りの意味があります。

あこがれの貴族文化に由来するため、庶民には高価で、ひな飾りをそろえるのは難しかったそうです。まずは、お内裏様とおひな様の一対になった「親王飾り」だけを買い、翌年に三人官女を買い足し、次に五人囃子ばやしというように、少しずつ買い足していく購入スタイルで、庶民になじんでいったそうです。

立ち姿のひな人形が人気のワケ

渡辺さんによると、平安時代には、「天児あまがつ」という立ち姿の人形が、幼児のお守りとして貴族家庭で盛んに用いられていました。室町時代の頃から座りびなが現れ、現代の主流になっています。そのため、ひな人形と言えば、座った姿を思い浮かべる人が多いと思いますが、ここ最近、立ち姿のひな人形の人気が再燃しているそうです。

マンション住まいの人が増え、「飾るスペースがない」という理由から、立っている夫婦びなの「立親王飾り」などが選ばれています。高さのある屏風びょうぶを添えると、とても豪華に見えます。

豪華に見える立ちびなが人気

また、立ち姿のひな人形が人気の理由について、渡辺さんは「2019年10月の即位の礼で、テレビに映る天皇・皇后両陛下の立ち姿があまりにも美しかったことも影響しているのではないでしょうか」と推察します。

狭いスペースでも華やかに祝える「つるしびな」という飾りもあります。女の子の生活に必要とされる野菜や果物、花、手まりなどをかたどったものをつるす装飾です。ただ、肝心のヒト形の人形ではないので、女の子の身代わりとする意味は持ち合わせていません。

やってはいけない三つのこと

読売新聞の掲示板サイト「発言小町」ではこの時期、毎年のようにひな人形に関する投稿が寄せられています。江戸時代から庶民に伝わる風習なのに、実は知らないことがたくさんあるようです。渡辺さんに、ひな人形に関する「三つの間違い」を聞きました。

【1】 引き継いだり、共有したりしない

ひな人形には、子供の成長と幸福を祈る親の願いが込められています。そして、その子だけのお守りとして、身代わりとなって厄を引き受ける意味があります。そのひな人形を、別の人に譲るというのは望ましくありません。

姉妹がいる場合は、ひな人形ではなく、市松人形や尾山人形でもいいので、それぞれの子に人形を持たせてあげてください。祖先から受け継いだひな人形を供養せずに手元に置いておきたいのであれば、ひな壇には何体飾っても構いません。先祖代々のひな人形も一緒に、にぎやかに飾ってください。

ひな人形はその子だけのお守り(写真はイメージ)

【2】 しまいっぱなしにしない

ひな祭りの時期以外にも、1年に1回は人形の状態を見るようにしましょう。お守りでもあるひな人形は、飾ってこそ、その子の成長を見守ってくれます。子供が何歳になるまで飾らないといけないという決まりはありません。贈った親や家族が「子供が一人前に成長した」と感じれば、その時にお寺や神社に持っていって供養します。

「早くしまわないと、お嫁に行くのが遅れる」という言い伝えが一部にありますが、これは根拠のない話です。「結婚が遅れる」からと、天気の悪い日に人形をしまうのはいただけません。湿気や汚れは人形の大敵です。3月中旬までの天気が良く乾燥している日を選んで、汚れやほこりを払ってからしまいましょう。

【3】 家族間でけんかをしない

黒塗りの台に金屏風を添えた厳かなタイプを好む祖父母世代、やわらかな色調の衣装にピンクの屏風などかわいらしさを重視する親世代。子や孫への思いが強すぎるあまり、両家の祖父母、両親がそれぞれ選びたいひな人形の好みが合わず、店頭でけんかになってしまう家族がいます。

かつて、ひな人形は母親の実家から贈られることが多かったようですが、最近は両家で折半して贈るのが一般的になってきました。

雛人形を選ぶポイントは顔。
ひな人形を選ぶポイントは顔。ピンとくるお顔があるそうです

ひな人形を選ぶポイントは、お顔です。一つひとつ手作りのため、人形それぞれに顔立ちや表情が微妙に異なります。「なんとなく、うちの子に似ている」「このお顔が好き」といった印象を大事に、ピンと来た人形を選ぶと良いでしょう。家族で相談しながら、仲良く選んでください。

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今年もコロナ禍で迎えるひな祭り。渡辺さんは「今年のひな祭りは、ひな人形を飾って娘さんの誕生の思い出、将来の夢や希望などを語り合い、健康や家族の大切さを再認識する機会になるのではないでしょうか」と話しています。

(読売新聞メディア局 渡辺友理)