品種増える日本のバラ、くすみピンクが人気の理由とは?

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八重桜を思わせるローズファームケイジの「花見小路」

日本生まれのバラが注目を集めている。従来のあでやかなバラとは趣が異なり、淡く優しい色合いやふんわりとした繊細な花弁などが特徴で、和の室内インテリアと調和しやすい。農家がSNSで直接消費者に花の魅力を伝えていることも人気の背景にあるようだ。

「かわいい」「癒やされる色ですね」。滋賀県守山市のバラ園「ローズファームケイジ」のインスタグラムに掲載されたバラの写真に、ファンのコメントが続々とつく。バラは全てオリジナル品種で、同園では「和ばら」と呼ぶ。

京都市の「サンデーローズマーケット」に並ぶローズファームケイジのバラ。くすんだピンクなど落ち着いた雰囲気が人気だ(提供写真)

2006年に就農した3代目の国枝健一さん(39)が「日々の成長を直接伝えられるのは生産者だからこそ」とSNSで開花の様子や名前の由来などを発信している。育種は健一さんの父、啓司さんが40年ほど前から始め、今では約60品種。海外品種とは異なり、「草花のようなバラで、日本的なたおやかさや柔和な表情をもっている」という。

淡く優しい色、和のインテリアにぴったり

自社サイトでの販売は、コロナ禍で在宅時間が増えた20年には前年の5倍に上った。同園では京都市に昨年開業した米シアトル発祥のホテル「エースホテル京都」でも、毎週日曜に無人販売「サンデーローズマーケット」を行う。「和のインテリアに調和するナチュラルな風情への好感度が高いようです」と健一さん。

静岡県菊川市の「やぎバラ育種農園」の八木勇人さん(39)も同園で育てるオリジナル品種を「アールローズ(芸術のバラ)」と銘打ち、19年から直販をしている。そのうちの一つ「ヴァーズ」は、花卉かき卸売り大手の大田花き(東京)が選定する「フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA」の20年度の優秀賞に輝いた。

昨年10月にバラ特集を組んだ花の専門誌「花時間」(KADOKAWA)編集長の柳緑さんによると、2000~10年の間に国内育種が盛んになり、ここ数年で安定的に生産されるようになったという。国産品種のバラの普及を目指す生産者らの団体「ドリームローズジャパン」のメンバーで今井ナーセリー(広島県呉市)園主の今井清さんは「規模の小さい園にまで育種の輪が広がってきた」と話す。

咲き方も独特な「やぎバラ育種農園」の「ヴァーズ」(左の写真)と、甘い香りなど香りに特徴がある「増田バラ園」のバラの花束(右の写真)(いずれも提供写真)

園の独自性を打ち出す動きも盛んだ。静岡県藤枝市の増田バラ園園主の増田晋太郎さん(40)は、香りが強いバラのみを育てる。甘い香りや、紅茶の茶葉のような香りなど様々で、オリジナル品種も10種まで増えた。「バラは香り、というイメージに応えたい」と増田さん。

花時間編集長の柳さんは「世代を問わず認知度が高いバラの新品種はとても多様で、バラの魅力をさらに押し上げている。農家独自のブランドを打ち出し、消費者とつながる取り組みを行うのも最近の若手生産者の特徴。新品種を育てる生産者への注目もより高まるだろう」と話す。

季節感ある花と合わせて

青山フラワーマーケット渋谷スクランブルスクエア店(東京都渋谷区)店長の佐藤伸広さんに日本生まれのバラのアレンジについて教えてもらった。

日本のバラを主役に春らしい雰囲気でまとめた(東京都渋谷区の青山フラワーマーケット渋谷スクランブルスクエア店で)

「日本のバラはつぼみから咲くまでの表情が豊かです」と佐藤さん。今回用いた「テアトロ」(今井ナーセリー)は中心部の緑色と周囲の淡いピンク色が特徴で、冬咲きの「啓翁けいおう桜」や香りの良いゼラニウムと合わせた。花色の対比を楽しめる。

佐藤さんは「自然にたわむバラの細い茎や美しい形の葉も生かしましょう。バラは通年流通するので、桜など季節感のある花を一緒にいけるのがお勧めです」と助言する。

(読売新聞生活部 野倉早奈恵)

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