「ポーズマスク」強いる同調圧力、コロナ感染より気になる周囲の目

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ポーズマスク強いる同調圧力、感染より気になる周囲の目

新型コロナウイルスの感染対策として、マスクの着用が当たり前になりました。通勤電車、スーパー、公園……、どこへ行ってもマスクをしていない人を探すのが困難なほど。でも、中には周囲の目を気にして、「ポーズでマスクをしている」という人もいるかもしれません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、誰もいない道でマスクを外したら、夫から注意されたという内容の投稿がありました。「ポーズマスク」の問題点を専門家に聞きました。

夫の注意は「マスク警察」なのか?

投稿したトピ主「amuh」さんは、夫と2人暮らしの20代女性。人通りの少ない田舎道を夫婦で歩いていたときのこと。マスクが鼻に吸い付いてきたり、メガネが曇ったりするのが不快で、周囲に人がいないのを確認してマスクを外したところ、夫から「ポーズでいいからマスクしようよ」と注意されてしまいました。

いったんはマスクを付け直しましたが、呼吸が苦しくなってしまい、再度マスクを外したと言います。帰宅後、夫から「マスクすると耳でも痛いのか? なぜマスクを外したのか?」と厳しく問いただされました。「人のいない道中で、誰に対してマスクをするのか分からない」と言い返すと、夫は機嫌を損ねて自分の部屋に行ってしまったそうです。

「私の伝え方が悪かったのでしょうか? 夫の注意も“マスク警察”では……と思ってしまうのですが、これは夫に言わない方が良いでしょうか?」と発言小町で意見を求めました。

夫婦げんかに発展しかねない「ポーズマスク」問題。このトピには、周囲に人がいなければマスクを外しても構わないという主張と、マスクをしていない姿を誰かに見られたら非難されるかもしれないと指摘する意見が合わせて90件以上寄せられました。

「ポーズマスク」はトラブルを避ける知恵

「ご主人の気持ちも分かる」と書いた「kuma」さんは、地域で感染者が出たとなれば、「マスクをしないで歩いているのを見かけた」「ああいう人がいるからねぇ」などとやり玉に挙げられると心配します。その後、暮らしにくくなり、仕事がしにくくなる場合もあるとし、「『ポーズだけでも』というのは、あなたや家族を守る知恵でもあるんです」と指摘します。

「ヒヨ」さんも、「ポーズでいいからつける。それは余計なトラブルを避けるという、まともな人ほど取り入れる知恵なのです。夫の言うことは至極まともに感じ、トピ主のような人が感染拡大の実行者だろうと悪い感情をもちました」と率直に意見をつづり、「世の中には『夫派』が多数いること、その人々から悪く思われていることをお忘れなく」と忠告します。

「人通りの少ない道、誰もいないと思ってマスクをはずしたんだろうけれど、いつの間にか、後ろに人が歩いていることもありますよ」(「ことり」さん)と慎重な行動を求める投稿もありました。

もっと科学的に行動してほしい

一方で、人と人との距離を十分に取ることのできる屋外の場合、マスクをはずしても構わないと考えている人もいます。

「もっと科学的に考えて行動してほしいですよね。“ポーズ”とか“世間体”とか感染抑制にまったく寄与しないのに」と書き込んだのは「かっこう」さん。人通りの少ない道で、人との距離が2メートル以上取れるときはマスクを外しているそうです。ただ、“マスク警察”のような人たちから暴力を振るわれるのは怖いので、「手にマスクを持って、必要なときはつけるという意思表示はしています」と注意を払っているそうです。

「コロナ辛い」さんは、「誰もいなくて、苦しいならマスクはずらしていいんですよ。私も息が上がって苦しいので、人がいない場所では片耳からぶら下げています。マスクはあくまでも飛沫予防。自分の飛沫を遠くに飛ばさないように、またはマスクをしていない人から話しかけられた時に飛沫をかぶらないためにするんです」と説明します。

屋外を歩いているときは「あごマスク」にしているという「ピンキー」さんは、「誰に見られているかわからないから、ポーズでマスクをつける気持ちは分かりますが、自分たちで自分たちの首を絞めているように思えます。同調圧力によって、適所で外すこともできない世の中になっている」と指摘します。

マスク着用は感染防止よりも同調のため!?

同志社大心理学部の中谷内一也教授(リスク心理学)の研究グループが昨年3月、マスク着用の程度や理由について、1000人を対象に調査を実施。調査結果をまとめた論文を昨年8月、「マスク着用は感染防止よりも同調のため!?」というタイトルでスイスの科学誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー」に発表しました。

調査では、マスクを着用する理由について、次の6項目について、「まったくそう思わない」(1点)から「非常にそう思う」(5点)の5段階で回答を求めました。

〈1〉 深刻さ(もし感染したら、症状が深刻なものになると思うか)
〈2〉 自分の感染防止(マスクを着用すれば、感染を防げると思うか)
〈3〉 他者への感染防止(マスクを着用すると、他人にうつすのを防げると思うか)
〈4〉 衝動的実施(やれる対策は、とりあえずやっておこうと思うか)
〈5〉 同調(マスクを着用する人を目にすると、自分もつけた方がいいと思うか)
〈6〉 不安緩和(マスクを着用していると、不安感を和らげられると思うか)

各項目の平均値を出したところ、点数が最も高かったのは「同調」の3.47点、最も低かったのは「自分の感染防止」の2.57点でした。研究グループは、この6項目の回答とマスクの着用程度との関係を分析。マスク着用に関連づけられたのは「同調」が最も強く、次いで「不安緩和」が続き、本来の着用目的である「自分の感染防止」「他者への感染防止」との関連はわずかだったと結論づけました。

ポーズマスク強いる同調圧力、感染より気になる周囲の目
写真はイメージです

有効性のないポーズマスクはバカらしいが…

マスク着用が当たり前のように広がっている一方で、「鼻出しマスク」「あごマスク」「耳かけマスク」など、感染対策には不十分な着用スタイルも目に付きます。会話やくしゃみをする際、無意識にマスクを外してしまう人もいます。こうした背景には、感染対策のためにマスクを着ける意識が低いことに一因があるようです。

中谷内教授は「互いに監視しあって、過剰な行動抑制を強いるような同調圧力だけが強まるのは好ましくありません。他の人たちがマスクをしているのを見て、『ああ、そうだった』と気づくという同調行動の良い面もあります。感染対策はバラバラに取り組むより一斉に実施することが必要ですから、同調を一概に否定することではありません」と説明します。

「ポーズマスク」を巡って繰り広げられる夫婦のいさかいについては、「マスクをするのは感染防止に有効だからこそ意味があるのであって、有効性がないのに、同調でポーズだけのマスクをするのはバカらしいと思います。ただ、ポーズマスクを求めた夫にも思うところがあったのでしょう。夫の考えに一度、耳を傾けられてはいかがでしょうか」とアドバイスしてくれました。

(メディア局編集部 鈴木幸大)

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誰もいない道でマスクを外したら

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