1月20日(日本時間21日)に米国初の女性副大統領に就任したカマラ・ハリスさん。ジャマイカ出身の経済学者の父と、インド出身の乳がん研究者の母の間に生まれた彼女は、アフリカ系としても東アジア系としても初めての副大統領というだけでなく、ファッションでも世界中の注目を集めています。
「赤」と「青」を混ぜたパープルのスーツ
CNNや現地メディアによると、就任式では、米ルイジアナ出身、ニューヨークで活躍する若手黒人デザイナー、クリストファー・ジョン・ロジャーズのパープルのスーツとコートを着ていました。大胆な色遣いやドラマチックなシルエットで知られるデザイナーですが、今回のスーツはハリスさんの普段のミニマルな繊細さを表現したような、シンプルなデザインとなっているとCNNは指摘しています。
就任式では、ハリスさんだけでなく、ミシェル・オバマさんはプラムカラー、ヒラリー・クリントンさんも紫色の服を身に着けていました。米NBCテレビのニュース番組「TODAY」のウェブ版によると「紫」は「赤」と「青」を混ぜると出来る色で(赤=共和党、青=民主党)党派の枠組みを超えることを示唆しているのでは、と解説しています。
アメリカでは、ファッションと政治は密接な関係にあるようです。
昨年11月7日の民主党勝利宣言の際、ハリスさんは「私は初めての女性副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。この場面を見ているすべての小さい女の子は、米国の可能性が分かったからです」と支持者らに語りかけました。米「VOGUE」誌によると、この時のファッションは、米デザイナー、キャロリーナ・ヘレラの白いパンツスーツだったそうです。これは、20世紀初頭のイギリスで婦人参政権運動を行った女性たちのグループ「サフラジェット(Suffragette)」のシンボルカラーが白だったからではないかといわれています。2016年7月にヒラリー・クリントンさんが大統領候補の指名受諾演説に臨んだ際に白のスーツを着るなど、女性政治家の服は、政治的意思表示にもなっているのです。

服飾業界紙のWWDによると、ハリスさんが民主党の副大統領候補指名を受諾したときには、ジョセフ・アルチュザラのプラムカラーのパンツスーツ、選挙運動期間中には「オーバーコート」のデザイナー大丸隆平さんが手がけた黒のパンツスーツを着用していました。
パールネックレスとコンバース
パンツスーツを多く着用するハリスさんですが、パールネックレスと「コンバース」のスニーカーも欠かせないものです。8月19日の指名受諾では、カリフォルニア在住のアイリーン・ニューワースがデザインした、南洋真珠とアコヤ本真珠をイエローゴールドでつなげたネックレスをつけていました。このブランドはお気に入りのようで、先日話題になった米「VOGUE」誌2月号の表紙では、パールではありませんがラブラドライトネックレスをしていました。

ハリスさんが選挙活動期間中にスニーカーを履いて全米各地を遊説していたのは、多くの画像や映像からも明らかです。彼女は長年の「コンバース」好きとしてよく知られています。米「The Cut」の2018年8月のインタビューでは、「黒のレザー、白、紐付き、紐なし、暑い季節用、寒い季節用、パンツスーツに合わせた厚底のものなど、(コンバースの)チャックテイラーの全シリーズをコレクションしています」と語るほどです。

もはや世界のファッションアイコンになっているハリスさん。彼女が何を着たのかを調べる人も出てきて、「Kamala’s Closet」や、「What Kamala Wore」といったサイトも登場するほどです。ソーシャルメディアでも同様で、フェイスブックでは「Wear Pearls on Jan 20th, 2021」というグループが、就任式当日にパールを身につけようと呼びかけ、46万2000人ものメンバーが集まっています。他にも「Chucks and Pearls Day, January 20th, 2021」(チャックとパールの日、2021年1月20日)というグループには9万8000人が登録しています。
ハリスさんのファッションについて、ニューヨーク在住のファッションジャーナリスト森光世さんは、一般の人たちにも身近に感じる点を指摘します。
「テーラードのパンツスーツ、マノロ・ブラニクのヒール、シャネルのトートバッグという、いわゆる出世したキャリアウーマンの典型的なファッションを着る一方、ブレザーにTシャツ、ジーンズやレギンスにコンバースやティンバーランドのワークブーツを合わせるという、カリフォルニア・スタイルのカジュアルさもあります。親しみやすい存在であることをファッションでも体現しています」
ハリスさんの副大統領としての活躍はもちろん、ファッションにも目が離せません。
(読売新聞メディア局編集部)