コロナ禍で人気 ご当地食材でつくる個性豊かなクラフトバター

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「おかやまフレーバーバター」はスティック型でイチゴなどが練り込まれている(「醍醐桜」提供)

地方の牧場などが少量生産する個性的な「クラフトバター」が注目されている。地域の食材を加えたフレーバーバターなど種類が豊富になり、コロナ禍に伴う内食志向も人気を後押ししているようだ。

放牧された牛たちがのびのびと過ごす栃木県那須町の「森林ノ牧場」。国内で飼育されている乳牛は乳量が多いホルスタイン牛が主流だが、この牧場ではコクのある生乳がとれるジャージー牛を飼っている。

国内では非発酵のバターが一般的だが、欧州では原料となるクリームに乳酸菌を加えて発酵させるうまみが豊かなバターが中心。同牧場は2016年から発酵バターの製造を始め、19年に一般販売を開始した。専用の回転式機械でかくはんさせる昔ながらの製法を用い、香り豊かですっきりとした味わいが人気を集めているという。

代表の山川将弘さんは「牛の種類や飼育法、作り方などでバターの個性は異なる。欧州のようなおいしい発酵バターを作りたかった」と話す。

乳牛の飼育環境ストレスフリー

ジャージー牛の様子を見る山川さん(昨年11月、栃木県那須町の「森林ノ牧場」で)

岩手県岩泉町の「なかほら牧場」では、野草で育てるジャージー牛から作った「グラスフェッド・バター」を生産・販売する。同牧場には牛舎がなく、通年で広大な山に昼も夜も放牧する酪農に取り組んでいる。餌には穀物を用いず、牛は山に自生する芝やクマザサ、木の葉などを食べて育つ。

地域の果物でフレーバーバターも

同牧場では非発酵のバターを14年、発酵タイプを17年から販売している。代表の岡田元治さんは「バターの味だけではなく、飼育方法に関心を持つ消費者もいる。ストレスの少ない環境で、牛が健康に育っている」と語る。

バターを作る際、生乳を少量のクリームと大量の無脂肪乳に分離し、クリームをバターの原料に用いる。無脂肪乳は、大手乳業メーカーでは脱脂粉乳などに加工することが多いが、小規模牧場ではどう活用するかが課題になる。森林ノ牧場は半生菓子に使うミルクジャムや乳酸菌飲料の材料に、なかほら牧場はパンの原料として東京都内のパン店に提供している。

自社牧場で生産した生乳を使ったジェラートなどを扱う岡山県真庭市の「醍醐桜」では、県産の果物を使った発酵バター「おかやまフレーバーバター」を20年から販売する。イチゴ、白桃、ブドウ(ピオーネ)などを乾燥させて砕き、できたてのバターに混ぜ込む。フルーツのしっかりとした風味が残るのが魅力だ。

商品開発担当の山本英伸さんは「そのままでも味わえるように仕上げているので、スイーツやお酒のつまみとしても楽しんでほしい」と呼びかけている。

高級食パンブームが人気後押し

バターに詳しい製菓材料販売業「富澤商店」(東京)の長尾絢乃さんは「個性的なバターを少量生産する動きが広がったのはここ数年。近年の高級食パンブームに加え、コロナ禍で自宅で食事をする機会が増え、ちょっと高級なバターでトーストや料理を楽しもうという人も増えている」と話す。手間をかけて少量生産するクラフトバターは、大手乳業メーカーのバターと比べて値段がやや高めで、インターネットでの販売が中心だ。

個性的なクラフトバターは、定番のトーストのほか、クラッカーにのせて味わってもいい。バターをご飯にのせてしょうゆをたらすバターご飯、野菜のバターソテーなど、料理にも活用できる。クッキーなどの焼き菓子の材料にコクのある発酵バターを使うと、香りが豊かになる。「生産者によって味わいが異なるのでいろいろと試してみましょう」と、長尾さん。

冷蔵で保存すると香りが飛んでしまいがちなので、長尾さんは冷凍をすすめる。薄くスライスしてから凍らせると、そのままパンにのせられる。切ってからラップで包み、密閉できる保存袋に入れて冷凍するといいという。(読売新聞生活部 小野仁)

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