テレワークに快適な椅子の「選び方」と間違いだらけの「座り方」

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ワーカホリック提供

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、テレワークが急速に広がりました。自宅でダイニングチェアやソファを“仕事場”にして急場をしのいできたものの、「お尻が痛くて仕事に集中できない」「肩こりや腰痛が悪化した」などと体の不調を訴える人が出ています。テレワークを快適にするため、デスクワークに適した椅子の購入を考えている人も多いようです。ワークチェアの専門家・チェアコンシェルジュに椅子の選び方を聞きました。

テレワークで肩こりや腰痛が悪化

オムロンヘルスケア(京都府)がテレワークをしている20~50代の男女1000人を対象に行った調査によると、テレワークを始めてから体の不調を感じたという人は31%に上っています。特に、「肩こり」「腰痛」「姿勢の悪化」「目の疲れ」などを訴える声が目立ちます。同社は不調の原因について、「普段とは違う姿勢で仕事をすることで、肩や腰への負荷が生じるため」としています。

テレワーク中の姿勢については、「机、椅子を使用している」が67.6%、「床に座っている」が28.5%でした。同社によると、机と椅子が仕事時の体勢や体形に合っていなかったり、床に座って作業を続けたりすることで、猫背やストレートネックなどになりやすく、腰痛や肩こりを引き起こすリスクがあります。

椅子を選ぶ前に正しい座り方を知る

国内外のワークチェア約70脚を取りそろえる専門店「WORKAHOLIC(ワーカホリック)」(東京都中央区)で、チェアコンシェルジュを務める伊藤僚範とものりさん(42)に、最適な椅子を選ぶポイントを教えてもらいました。

さまざまなワークチェアがずらり(ワーカホリック提供)

「座る姿勢は立っている状態と比べると、骨格、筋肉、血流など体の多くの部分に負担をかけています。長時間座って作業を続けるのは、それだけでストレスになるのです。デスクワークに適したワークチェアは、体にかかる負担を軽減してくれます」と伊藤さんは言い、用途に合った椅子の利用を勧めます。

ただ、「椅子を選ぶ前に、『正しい座り方』を知ることが欠かせません」と伊藤さん。「どんなに良い椅子を持っていても、正しい座り方を知らなければ、宝の持ち腐れになってしまいます」と強調します。

ワークチェアを求めて来店するお客さんに、伊藤さんは「普段の仕事のとき、どんなふうに座っていますか」と聞きます。実際に座ってもらうと、ほとんどの人が座面の前の方にちょこんとお尻をかけ、背筋をピンと伸ばした姿勢をするそうです。「きれいな姿勢ですが、これだと、仕事をしているうちに頭が少しずつ前に傾いていき、首や肩に負担がかかります。ノートパソコンで作業をしていれば、どうしても目線は下に向くため猫背になります」と説明します。

正しく座る5つのポイント

デスクワークで背筋がしっかりと伸びた状態を保つため、伊藤さんは、「正しい座り方」を5つの手順で示します。

〈1〉 座面の奥まで深く腰をかける
〈2〉 椅子の背もたれに背中をぴったりと付ける
〈3〉 背もたれの腰部分にあるS字カーブに体をフィットさせる
〈4〉 ひざを直角にし、座面の先端とふくらはぎの間に指2~3本入るよう調整し座る
〈5〉 ひざを直角にして置いた足裏を半歩、または1歩ほど前に出す

「『背もたれに寄りかかって座るのはだらしない』と思い込んでいる人もいますが、背もたれを上手に活用すれば、背中や腰を浮かせずに背筋を伸ばした姿勢が楽にできるようになります」と伊藤さんはアドバイスします。

この状態で、椅子を机の下に潜り込ませ、おなかが机の天板につくくらいまで、椅子と机の距離を近づけるのが理想的です。机の上にひじを置いてみて、肩が上がってしまう場合は、椅子が低すぎるので、高さの調節が必要です。机の上に腕をのせると肘が前に出過ぎてしまう場合や机の角が腕に当たり痛く感じる場合は、アームレストを肘の高さまで調節して利用します。アームレストを使うとひじを体の横まで引くことができ、胸が開くため、深い呼吸でリラックスしながら作業ができます。

一人ひとりの体に合わせて椅子のフィッティングを行うチェアコンシェルジュ(ワーカホリック提供)

「机の高さに椅子を合わせたら床に足がつかない」「背もたれに背中をつけた状態ではノートパソコンの画面が見にくい」などの新たな問題が生じることがあります。仕事用の機能的な机や椅子は、男性が使うことを想定して作られる製品が多く、小柄な女性には「机の位置が高い」「椅子の座面が大きすぎる」ということがあります。

そのため、太ももの裏が圧迫されて血の巡りが悪くなったり、キャスター部分に足を乗せて猫背になったりし、むくみや冷えの原因になる可能性もあります。伊藤さんは「きちんとした姿勢を意識するあまり、反り腰になっておなかがぽっこりというのも女性に多い悩みです」と述べ、体形への影響も心配します。

このような問題には、ノートパソコンを置く卓上傾斜台を活用したり、足元にフットレストを用意したりすることで改善が図れます。卓上傾斜台を使えば、パソコンの画面が高くなり、視線が上がるので首や肩への負担が軽減します。足を置くフットレストは、足が浮かないようにするだけでなく、お尻が前に滑るのを防止する役割もあります。いずれも、専用のものを用意出来ない場合は厚みのある本で代用したり、段ボールなどで作ったりすることもできます。

椅子を選ぶポイントは座面と背もたれ

正しい座り方を知ることで、椅子を選ぶときのポイントが座面と背もたれということが分かります。「座り心地、サイズ感、背もたれのフィット具合を確認し、自分の体に合った椅子を選ぶことです。肩や腰に痛みがあれば、体をサポートするような機能も選択肢に入れてほしいですね」と伊藤さん。

ワークチェアは大きく分けると、座面がメッシュになっているタイプとクッション素材になっているタイプの2種類があります。メッシュタイプは通気性に優れ、蒸れにくく、体の大きい男性や夏場の利用にうってつけ。堅さのある座面は、スプリングで弾むような感触があります。一方、クッションタイプは、お尻のホールド感が良く、包まれるような座り心地が特徴です。細身の体形の人や女性は、メッシュタイプよりクッションタイプを好む傾向があります。

伊藤さんは「体形によって相性がありますし、座り心地の好みは人それぞれです。可能であれば、実際に座って試してみるのが望ましいでしょう」と言います。自宅に仕事用のワークチェアを置くことに、「インテリアになじまない」「部屋が狭くなりそう」などと抵抗感を持つ人もいます。「実物を見てみると、想像していたよりもコンパクトと感じるワークチェアもありますし、様々な色や素材を選べるタイプもあります」と話します。

新型コロナの影響でオフィスを縮小したり、社員の出勤日数を減らしたりするなど、テレワークが常態化する動きがあります。しばらく様子見だった人の中からは、「自宅の仕事環境を見直したい」という声も。伊藤さんは「働く上で椅子はとても重要なアイテムですが、正しい使い方を実践している人はあまりいません。この機会に座り方も見直してみてください」と助言しています。

チェアコンシェルジュが女性にすすめる椅子

自宅のインテリアや内装とのバランスを気にする女性に、おすすめの椅子を伊藤さんが選んでくれました。いずれも、ワークチェアとしてはコンパクトでデザイン性に優れています。色や素材を選べるタイプもあり、他のインテリアとコーディネートがしやすいそうです。

チェアコンシェルジュの伊藤さんが女性におすすめする4脚

(写真手前から、価格はいずれも2020年参考、税込み)

・【イトーキ】 vertebra03(バーテブラ03) 6万2370円

・【ハーマンミラー】 Sayl Chairs(セイルチェア) 10万7800円

・【オカムラ】 Baron Low back(バロン ローバック) 14万6388円

・【スチールケース】 Leap V2 AP モデル(リープ V2 AP モデル) 15万4105円

(メディア局編集部 鈴木幸大)

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