トラブルに遭った女性を助けるベストセラー「おとめ六法」の中身

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ストーカーや痴漢、パワハラなど、女性は常に様々なトラブルに巻き込まれる可能性を抱えています。それなのに、もしも自分がトラブルに直面したら、どうしていいのかわからないという人が多いのでは。そんな女性たちをトラブルから守る法律やトラブルへの対処法を解説した「おとめ六法」(上谷さくら、岸本学共著、KADOKAWA、本体1400円=税別)の売れ行きが好調です。著者の一人、弁護士の上谷さくらさんに、著書で訴えたかったことなどを聞きました。

「おとめ六法」は「女性の人生に寄り添う法律の本」と銘打ち、憲法、刑法、民法など六法に加え、DV防止法、ストーカー規制法、著作権法、軽犯罪法、男女雇用機会均等法など、女性の生活を守るために大切な法律をピックアップ。自分が持つ権利を守るために知っておくと役に立つ法的手続きなどを具体的に説明しています。今年5月に出版され、すでに第6刷まで重版されています。

上谷さんは、弁護士としてDV(配偶者や恋人からの暴力)や離婚、性犯罪の案件を多く手がけています。上谷さんによると、トラブルに見舞われた時、「自分が悪いせいで起きたのか」「トラブルに対して法律的に何ができるものなのか」と悩む女性は少なくないといいます。「女性は『自分が悪い』と思い込みがちです。だから、事前に最低限の知識があるだけで、自分が悪くないことが分かり、気持ちだけでも全然違ってきます」と、上谷さんは本書を著した理由を説明します。

DVには精神的な暴力も

本書では、「恋愛」「SNS・インターネット」「学校」「くらし」「仕事」「結婚」の計6章にわたって、生活の場面ごとに起こりうるトラブルを紹介しています。

「恋愛」の章で記されている「DV」には、あからさまに暴力をふるう「身体的暴力」だけでなく、男性が「ブス」「バカ」などと女性が傷つくような発言をしたり、他人の前で女性をさげすむような言動をとったりする「精神的暴力」があります。「女性の相談者の中には、『彼からそのように言われてつらいけど、私は愛されている。だから彼は、私を直してあげようと思って注意してくれている』と言う人もいます。また、『彼はすごく頭がいい。私はバカだから、彼の言うことだけを聞いておきたい』などと言うことがあります。どちらかというと、若い人の方が多いですね」と上谷さん。

本書では「人格を否定するような悪口を言うと、場合によっては民法上の不法行為にあたります。激しい言い方に限らず、冷静に諭すような言い方でも該当します」と解説するなど、DVについて女性が正しい認識を持てるような内容が盛り込まれています。

「イヤだ」という意思表示には様々な方法がある

「仕事」の章では、産休、育休、服装規定、セクハラなどが紹介されています。上谷さんが扱ってきた案件では、職場でのセクハラが特に多いそうです。上司や取引先などが女性との上下関係を利用してセクハラに及ぶ傾向が強いと、上谷さんは指摘します。

仕事の話をしていた取引先の男性が、次第に女性の体を触り始め、「やめてください」と女性が訴えると、男性は「取引がなくなったら困るだろう」と言って関係を持つようにほのめかしたという事例が本書に紹介されています。これについては、「このような要求に応じる必要はない。取引先との関係は、男女雇用機会均等法の“職場”と考えられます。また、刑法の強制わいせつ罪、強要罪、迷惑防止条例違反などにもあたる可能性があります」と解説しています。

セクハラに対しては、「ノー」と言えなくても、「イヤだ」という意思を痕跡として残さないと、「お互いに好きでやっていたんだろう」「大人同士なんだから……」という話で済まされてしまう可能性が高いといいます。そのような時には、社内や外部の相談窓口に相談したり、メモや日記を書いておいたりすることで、セクハラの証拠を確保すべきと、本書では説明しています。

一方、第三者が加害者になるリスクもあると述べられています。たとえば、「Aさんは上司と不倫しているらしい」などの性的な内容のうわさを流すことは名誉毀損きそんに該当するとのことです。

本書を著すに当たって、上谷さんは当初、「網羅的な法律関連本を書くのは難しい」と考えていたそうですが、編集者から「トラブルについての法律があることを知っているだけでも全然違うし、『トラブルに対して何ができるのか、何ができないのか』という知識があるのは有益」と聞き、執筆に取り組み始めたそうです。

本のタイトルは「おとめ六法」ですが、読者を女性に限定したわけではありません。上谷さんは「女性が被害に遭うことが多いので、このようなタイトルになりましたが、性別とは関係ない問題もたくさんあります。また、女性がどんなことで悩み苦しんでいるのかを意識的に考えないと、男性には理解できないかもしれません。本書を読むことで『妻や娘がこういう悩みを抱えているかもしれない』と気づくきっかけになってほしい」と話しています。

(メディア局編集部 杉山智代乃)

上谷さくら(かみたに・さくら)
弁護士(第一東京弁護士会所属)

犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。

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