太ってるのに中性脂肪の数値が低い…原因と病気のリスクは?

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健康診断の結果を見るたびに、体重、腹囲、コレステロールなどの数値に一喜一憂するという人は多いのではないでしょうか。特に、「中性脂肪」の値は「脂肪」という言葉が付いているだけに、一層気になります。やせているのに中性脂肪の値が高いという人もいれば、太っているのに中性脂肪が基準値を下回るという人も。東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)の臨床検査技師、加藤美咲さんに、中性脂肪の働きや数値が増減する理由などについて聞きました。

――そもそも中性脂肪とは何ですか?

中性脂肪(トリグリセリド、TG)は全身の脂肪組織の主成分であり、エネルギーを貯蔵する役目を担っています。普段は肝臓・皮下・血液中に存在し、エネルギー源としての糖質が不足してくると、エネルギーとして利用されます。「脂肪」という名称から悪者扱いされがちですが、身体活動に必要なエネルギー源となる非常に大事な物質です。

手足の冷え、抜け毛、肌荒れ

――身長158.2センチ、体重59キロでやや太め(BMI23.6)の知り合いの女性が、健康診断の血液検査で中性脂肪の値が基準値を下回っていたと喜んでいました。中性脂肪の値は低ければ低い方がいいのでしょうか?

中性脂肪(TG)の値が低いのは、体内のエネルギーのたくわえが少ない状態であり、疲れやすい、休憩しても回復しにくいといった症状が出る場合があります。また、TGは全身の体温調節の役目も担っており、低値だと、低体温、手足の冷えといった症状が出る場合があります。さらに、TGに溶け込んで体内を巡る脂溶性ビタミン(ビタミンA・ビタミンE・ビタミンK・βカロチンなど)が体内で不足し、免疫力の低下、抜け毛、肌荒れなどの皮膚トラブルも懸念されます。

もう一つの見方として、TGが血中ではなく皮下、もしくは肝臓に比較的多く存在している可能性が考えられます。皮下や肝臓にTGをため込みやすい体質の場合には、血中のTGが低めの値を示すことがあります。特に女性の場合、男性に比べて皮下脂肪がつきやすい性質があります。

日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が推奨している共用基準範囲では、TGの基準値は男性40~234mg/dL、女性30~117 mg/dLとされており、女性では男性よりも低値傾向にあると言えます。

血中のTG値が基準より低くても、皮下や肝臓にTGが多く存在している場合、体全体で見たTGの量は十分と言えますので、前述のような症状が出る可能性は少ないと考えられます。

写真はイメージです

中性脂肪が低い4つの原因

――中性脂肪が基準値を下回る場合、どのような原因が考えられますか。

中性脂肪(TG)が低い原因はいくつか考えられます。主な原因と考えられる四つを紹介します。

【1】極端な食事制限

TGは食事中の主要な脂質成分で一日に50100gほど摂取され、食後には数十mg/dLは上昇するほど食事の影響を受けやすい項目です。食後10時間から14時間以上経過しないと、正確な値を測定することができないとされています。そのため、早朝の空腹時に採血を行い、測定するのが原則です。

極端に脂質を制限したり、食事をとらなかったりすると、TGの値が低くなります。検査時にたまたま値が低かった、というだけなら問題ないですが、この状態が続くと注意が必要です。

【2】過度な運動

運動する際には、私たちの体は普段より多くのエネルギーを必要とします。始めはエネルギーとして糖質が使われますが、糖質が不足してくると、その不足を補う形でTGがエネルギーとして使用されます。

血中のTGが不足してくると、脂肪組織のTGが使用される形となり、皮下脂肪の減少につながります。ただし、脂肪組織のTGがエネルギーとして使用されるまでには、多少の時間が必要です。そのため、アスリート並みの過度な運動をして急激に大量のエネルギーが必要となった場合などには、エネルギーの需要に供給が追い付かない状態となり、血中のTGが大量消費され、値が低くなります。運動は大切ですが、やり過ぎないこと。また、しっかりと栄養を補給した上で行うことが重要です。

【3】何らかの疾患

例えば、肝臓の機能に問題がある場合、私たちはTGを合成、貯蔵することができなくなり、値が低くなります。また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の場合には新陳代謝が非常に活発な状態となり、多くのTGを消費するため、低値になります。ただし、これらの疾患の場合は、TGとともにコレステロールが減少したり、種々の自覚症状が表れたりする場合が多く、TGの値だけで判断することはできません。

【4】体質や遺伝

これまで述べたような原因に当てはまらない場合、体質的にTGをたくわえにくいと考えられます。このような方は食事に気を配り、意識的に脂質を多くとることが大切です。

写真はイメージです

やせているのに中性脂肪が高い理由

――やせているのに、中性脂肪の値が基準よりも高いという男性もいます。

原因として、内臓脂肪が多く存在している可能性が考えられます。見た目でやせ形(皮下脂肪が少ない状態)であっても、外からは見えない内臓部分に脂肪が多くある、いわゆる「隠れ肥満」という状態かもしれません。体形にかかわらず、TGの値が高ければ注意すべきと言えます。

そのほかには、先ほどの女性の例とは逆に、体質的に血中にTGをため込みやすいことが考えられます。男性は女性に比べれば皮下脂肪がつきにくく、どちらかといえば血中のTGの値は高くなりやすいと言えます。TGの値は食事の影響を非常に受けやすいので、食後10時間以上空けないで採血を行ったり、前日の食事で脂質を大量に摂取したりしていれば、一時的に高値となることも考えられます。

TGの値が高いと動脈硬化症のリスクが高まります。動脈硬化とは、動脈の弾性が失われ、動脈の働きが悪くなった状態のことで、そのままにしておくと心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があります。

日本動脈硬化学会が設定した動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、TGの値が150mg/dL以上の状態を「高トリグリセライド血症」と定義しており、動脈硬化症のリスクが高い状態として注意喚起しています。

――中性脂肪の値が低かったり、高かったりする場合、食生活ではどのような注意が必要ですか。

中性脂肪(TG)が高い場合は、TGは食事中の脂質の主成分ですので、肉の脂身や食用油などの取り過ぎは避けたほうがよいでしょう。いわゆる脂っこいものを避け、魚や肉の赤身を選ぶなどするとよいと思います。油を使わない調理法(蒸す、煮るなど)もおすすめです。

アルコールによってTGを分解する酵素の働きが弱くなるため、過度な飲酒も避けましょう。現在では、「糖質ゼロ」と同じように「脂質ゼロ」をうたう食品も多く市販されていますので、それらをうまく活用するのも一つの手かもしれません。

一方、TGが低い場合は、脂質や糖質を一切取らないなどといった極端な食事制限を行わず、様々な食材を適度にバランス良く食べることを心がけてください。脂質を取り過ぎてしまわないか気になる場合は、魚がおすすめです。肉類に比べて脂質成分は少ないですし、調理時に油を使い過ぎることもあまりないと思います。

――中性脂肪の値は低すぎても、高すぎても良くないのですね。基準内の値にするためにアドバイスをお願いします。

食生活の見直しが一番大切かと思います。それから適度な運動も大切です。何事も極端にやり過ぎることなく、余裕を持って継続していくことを目標にするとよいのではないでしょうか。また、TGの値だけですぐに通院の必要性を判断することはできませんが、不調を感じた場合には、かかりつけのお医者さんに相談してみてもよいかもしれません。

(聞き手・メディア局編集部 鈴木幸大)

※参考資料
・日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版 日本動脈硬化学会,2017
・薗田勝:マンガでわかる栄養学 オーム社,2013
今村敏治・脊山洋右:血清脂質とその役割 医学と薬学,198411(2)309-316
豊嶋英明・林千浩・宮西邦夫ほか:血清ビタミンAE濃度に対する血清脂質,喫煙,飲酒の影響 日衛誌,198944(2)659-666
金井正光(監修):臨床検査法提要 改訂第35版_金原出版,2020
東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部コラム「中性脂肪が気になるあなたへ」

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加藤 美咲 (かとう・みさき)
臨床検査技師

1993年、福井県生まれ。2016年、京都大学医学部人間健康科学科検査技術科学専攻(現・総合医療科学コース)卒業。同年から、東邦大学医療センター大森病院臨床検査部にて臨床検査技師として検体検査業務に従事。