話題の「婚前契約書」、ひな形もあり自作できるって知ってた? 

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結婚前に「結婚生活を送る上でのルール」などを文書化した「婚前契約書」。欧米の影響を受けて、日本でも契約書を交わすカップルが増え始めています。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、交際中の男性から契約書を交わそうと提案され、戸惑う女性の投稿が寄せられています。婚前契約書とはどんなもので、契約を結ぶならどんな点に気をつけたらいいのでしょうか。専門家に聞きました。

「婚前契約書を交わそうと言われました」のタイトルで投稿したのは、20代の女性「やぱぱ」さん。帰国子女の彼と結婚を前提に付き合っていますが、ある日、彼から「欧米では普通のことだから、結婚前にこの契約書を交わしたい」と言われ、文書を見せられました。その中身は、「夫婦お互いに助ける義務があるので夫婦共に正社員で共働きを続ける」「家事育児も平等負担」「互いの貯金は互いのもので、家計はお互い同額拠出」「浮気は慰謝料200万円」「実家への帰省は交互にする」などでした。

何もかも平等を強調するって、どうなの?

「男女平等の教育を受けてきたし、なんとなく言っていることはわかりますが、これって普通ですか? ちょっと周りでは聞いたことがないので戸惑っています」とトピ主さん。結婚後も仕事を続けることなどには異論はないものの、何もかも「平等」を強調する内容の契約書を交わすことに違和感を持ったといいます。

このトピに380件を超える反響がありました。

完全平等は難しいのでは

「出産や育児面で、完全平等は難しい」(「ゆきだるま」さん)、「育休中は収入が減りますが、その時も同額払うんですか?」(「うさこ」さん)、「彼の作成した契約書は彼に有利なことしか書いていません」(「にゃんじろう」さん)などと、問題点を指摘する声が相次いでいます。

また、浮気の項目については、「『どこからが浮気か』をしっかり明示したほうがいい」(「ハイボール」さん)、「浮気をすることを前提としているようで受け入れがたい。200万払えば、し放題と読める」(「esezou」さん)といった声もありました。

そもそも、婚前契約書は何のために交わすものなのでしょうか。婚前契約の普及に取り組む一般社団法人プリナップ協会を運営する行政書士の多田ゆり子さんに聞きました。

婚前契約の意味とは

多田さんによると、「婚前契約」は、英語で「Prenuptial-agreement」と言い、欧米では略して「プリナップ」と呼ばれています。多くの海外セレブが、離婚時の慰謝料や財産分与の仕方、子どもの養育方法などを取り決めた婚前契約を結んでいたことが報道されたため、主に金銭面の取り決めというイメージが先行しがちですが、金銭以外の事柄で婚前契約を結ぶカップルは少なくないそうです。

「『結婚する前から、離婚を前提に契約を結ぶなんて』とマイナスにとらえる考え方があるのも承知していますが、どんな内容の契約を結ぶかは、カップル次第です。話しづらいテーマも、契約書を作成するプロセスで話し合うことで、結婚する2人の価値観を棚卸しする機会にしてもらえればうれしいです」と多田さんは強調します。

2人で作り上げていくもの

トピ主さんのように、彼から婚前契約の案を提示されたケースについて、多田さんは「提案は第一歩に過ぎません。トピ主さんも、我慢して譲歩するだけではなく、自分がどんなことに価値を見いだしているのか。こういう表現なら条項に盛り込めるけれども、ここは一方的だとか、自分の言い分を主張し、すり合わせをしてほしいですね。結婚の形は2人で作り上げていくものなのですから」と話します。

プリナップ協会では、これから結婚するカップルのために、婚前契約書のひな形をホームページからダウンロードできるようにしているほか、夫婦生活や仕事、育児、住環境、双方の親のことなどについて、お互いがどんな考え方をしているのかをチェックし合えるシートも公開しています。

ペナルティー項目もアリ

初婚カップル用のひな形の一つには、「甲と乙は、婚姻を継続するために貞操を守り、お互いに努力を惜しまず、お互いを尊重し、思いやりと感謝の気持ちを持ち続けることを約束する」「万一貞操義務に反し、不貞行為を行った場合には、その当事者は相手方に対し、年収分の慰謝料を支払うものとする」という項目があります。多田さんは「万が一、約束が守れなかったときには、こういうペナルティーを科しますよ、というのもアリです。約束を守る抑止力にもなるので、互いに納得できる線を話し合うことが大切です」と話します。

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婚前契約書を法的効力のある「公正証書」にするためには、弁護士や司法書士、行政書士に相談するのが近道です。ただし、婚前契約書は結婚前に作成を終える必要があります。民法754条で「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と定められているためです。多田さんは、「財産以外の項目については、婚姻後も両者の合意さえあれば見直しができます。だから、すべての項目について作成後に変更できないと考える必要はありません。1年に1回でも、2年に1回でも、定期的に互いに納得いくまで話し合って『二人の間の決まり事』として作りあげていくのが良いと思います」とアドバイスします。

結婚したい相手と婚前契約について話し合うのは、なかなかハードルが高いようにも思えます。でも、せっかくひな形もあることなので、一度取り組んでみれば、お互いに新たな発見があるかもしれません。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】
婚前契約書を交わそうと言われました

多田ゆり子(ただ・ゆりこ)
行政書士

2005年の開業当初から、離婚・不倫の慰謝料請求専門の行政書士として活動する中で、一般社団法人プリナップ協会を設立。婚前に話し合いをする文化や婚前契約を結ぶ文化の醸成を目指して、婚前契約の普及に取り組んでいる。

一般社団法人プリナップ協会:http://www.konzenkeiyaku.com/