結婚時に本籍地はどこにしましたか?「シンプルに皇居」「球場」も

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結婚を控えたカップルには、式の段取りから職場や家族へのあいさつ、住まい選びまで、考えなくてはならないことがたくさんあります。本籍地もその一つ。現在の法律では、婚姻届に書く本籍地については、結婚する2人が自由に決めてよいことになっています。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、結婚前の女性が「本籍地どこにしましたか?」と尋ねる投稿があり、数々の経験談が寄せられました。本籍地を決める際に注意すべき点などについて、専門家に聞いてみました。

トピ主の「さき」さんは、3月にプロポーズされ、結婚準備を進めている女性。婚姻届について調べたところ、本籍地は、日本の土地台帳に記載されている住所ならどこにしてもいいことを知りました。「富士山など観光地にしている例もあるそうですが、皆様はどこにされましたか? やはり、ご主人の実家が多いのでしょうか? 参考までにお聞かせいただきたく存じます」と、トピ主さんは「発言小町」で問いかけました。

皇居・明治神宮・球場・お城なども

この投稿には、70件以上の反響がありました。本籍地に記載した住所は、「新居の住所」と「夫の実家」の二つが目立ちますが、一方で、「シンプルに皇居にしました」(「もちは」さん)、「挙式した明治神宮」(「たんぽこ」さん、「ゆみ」さん)、「夫が(プロ野球の)ソフトバンクファンだから、福岡のドームの住所です」(「たか」さん)といった書き込みも。「酢味噌みそ」さんは「名城100選にも選ばれているお城でお花見の名所。お城はなくならないし、移動しないし、ネットで検索すれば住所もわかります」とコメントしています。

「夫の実家」にした人の中には、モヤモヤした思いを持つケースもあります。

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「くみこ」さんは「義父母がそれなりの年代だったので、『長男はいずれ実家を継ぐもの』という考えで、本籍は実家にされました。遠いです。新幹線で3時間くらい。『(戸籍謄本は)いつでも取りに行くから』と義父母は言ってくれましたが、主人の出張用のパスポートの時は二つ返事なのに、私が旅行に行く時はブツブツ言われました」と振り返ります。

また、「ぼろ」さんは「ものすごく義父母にごねられて、(本籍地は)義父の実家の付近になってます。『義父が長男、そして夫も長男なのだから、本来、君らはそこにいるべきなのだ』ということらしいのですが、今から思えば、義父母に知られないうちに決めちゃえば良かったなあ、と思います。なんか、無駄に嫌な思い出ができちゃいました」と打ち明けました。

夫の実家→変えてしまう人も

「当初は何も考えなかったので夫の実家でしたが、半年後、マンションを購入し、そちらへ本籍を移し、今に至ります」(「おばさん」さん)、「何度か転居する度に本籍も移転してます」(「ばあばの知恵」さん)といったように、住まいの購入や引っ越しにあわせて本籍地を変えている人もいました。

本籍地にはどういう意味があるのでしょうか。決める際に注意すべきことはないのでしょうか。「わたしの家系図物語(ヒストリエ)─調べてカンタン!すごいご先祖がわかる」(時事通信社)の著書がある行政書士の渡辺宗貴さんに聞きました。渡辺さんは、家系図作成代行センター株式会社(札幌市)を興し、15年間に5000件以上の家系図を作成してきました。

本籍地は戸籍を保管しているところ

渡辺さんは「今や本籍地の意味は、『戸籍を保管しているところ』というだけになりました。長く続いた家制度の影響で、『本籍地を大事にするべき』という昔ながらの考え方をする人もいますが、一方で、本籍地を選ぶときに遊び心を反映させる人もいます。どちらも正しいのだと思います」と話します。

渡辺さんによると、日本で初めて本格的な戸籍制度が開始されたのは、1872年(明治5年)。徴兵や徴税が目的で、本籍地と居住地は同一のものとされ、家族の一部が別の土地に移ったときにも届け出る必要がありました。その後、都市化によって本籍地を離れる人が多くなった明治中期には、手続きの簡略化のため「本籍は必ずしも住所地ではなくともよい」と改められました。「日本にはご先祖様が代々住んでいた土地への愛着を持つ文化があり、居住地を変えても本籍地を変えない傾向がありました。現在『夫の実家』を本籍地にされる方が多いのはこのためと思います」と渡辺さん。

第2次大戦後、夫婦を基本単位とする戸籍に変更され、国民健康保険や公的年金などの行政サービスは住民票をもとに運用されるようになり、日常生活で戸籍謄本や抄本を必要とする場面は減りました。2000年代には、運転免許証にも本籍地を記述する欄はなくなりました。「本籍地が自由に設定できるようになり、有名な土地や夫婦の思い出の地に設定する人たちが出てきたことに賛否はあるでしょうが、伝統やしきたりを重んじる一方で、粋や遊び心を忘れない日本人らしさが出ているように思います」と渡辺さんは話します。

相続が発生したときのデメリット

「本籍地を遠いところにしてしまうと、パスポートの申請などで戸籍が必要になったときに手続き上の面倒が生じるという問題はありますね。また、引っ越しのたびに本籍地を動かすと、相続のときに、亡くなった方の生まれてからの戸籍(除籍簿)が必要なので、手続きが煩雑になるというデメリットはあります。でも一方で、ご先祖様が引っ越しのたびに本籍地を動かしていたら、移動の経緯を知ることができて、よりご先祖様のことを身近に感じるというメリットもあると思います」と渡辺さん。

家系図を作っていると、戸籍の保存期間が150年間と決められているため、古い戸籍が次々廃棄されてしまうことに危機感を覚えることも多いそうです。「2代、3代前までは何となくイメージできても、その前というと、ほとんどイメージすらできないという方は多いですね。唯一の手掛かりである戸籍について、関心を持ってもらえればうれしいです」と渡辺さん。

本籍地をどこにするにせよ、安易に決めずに、カップルでよく話し合ってみる必要はありそうです。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】
本籍地どこにしましたか??

渡辺宗貴(わたなべ・むねたか)
家系図作成代行センター株式会社代表 行政書士

北海道釧路市生まれ。行政書士として開業当初、たまたま家系図作成という業務があることを知る。興味から自分の戸籍を取って家系図を作ってみたところ、意外な手続きの面倒さ、古い戸籍の文字を読む難しさを知り、以後、専門業務として扱う。

家系図作成代行センター株式会社:https://e-kakeizu.com/