コロナ禍なのに、赤ちゃんに触らないで! 母親たちの悲鳴

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新型コロナウイルスの感染予防で、人との会話も「マスク越しに」「距離を保って」と注意を払う毎日ですが、赤ちゃんを育てる母親たちの間で「困った問題」としてささやかれているのが、勝手に我が子に触りたがる大人の存在です。子育ての終わった高齢世代に多いようですが、読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、母親たちから嘆きの声が寄せられています。どうすればいいのでしょうか。

後ろにいた女性が我が子の手を……

「勝手に触らないでほしい」のタイトルで投稿したのは、東京都内で生後10か月の息子を育てるトピ主「ワンオペ育児ママ」さんです。抱っこひもを使って赤ちゃんを“前抱っこ”しながら、郵便局の窓口で手続きをしていたときのこと。高齢女性が、いつの間にか自分の後ろに立っていて、赤ちゃんの手を触りながら話しかけていたのです。驚いたトピ主さんは、とっさに「触らないでください」と言いましたが、その女性は「ママに怒られちゃった……」と言っただけで、なかなかそばを離れようとしません。「(この子には)アレルギーがあるので」と伝えると、やっと離れてくれたといいます。

この出来事に納得できなかったトピ主さんは、「勝手に赤ちゃんに触るのはダメですよね?  昔ならよくあることかもしれませんが、現代ではありえないと思います。どう思いますか?」と発言小町で問いかけました。

怖い、でも言いづらい

このトピには、「コロナ禍にそれはない」「やめてほしい」という声が相次いでいます。

「うちも、やられたわ~」と書いたのは、「白桃」さん。赤ちゃんを抱っこしていたら、見知らぬ高齢女性2人が「かわいいわね~」と言いながら、赤ちゃんの足を片方ずつ触ってきたそう。「『こわ~!』と思いましたが、『ありがとうございます~』と言いつつ、すぐ逃げました」と打ち明けます。

「私も5年ほど前まで、抱っこヒモで乳幼児を連れていましたが、勝手に触られることがよくありました」と言うのは、同じく都内在住の「ヤギ」さん。触ってくるのは、やはり高齢者が多かったといい、「あまり気持ちの良いものではなかったですが、『神経質になり過ぎるのも』と思い、抗議はせず(気が弱いので言えなかったのもある)、『どうもー』と足早に立ち去るようにしていました。今のご時世なら勇気を持って抗議をすると思います」とコメントしました。

プニプニして触りたくなるのはわかるけど

「あか」さんからは、「赤ちゃんを見ると、みんなほっぺたやら手やらを触ってくるんです。プニプニして触りたくなるのはわかるけど……。コロナでなくても嫌なのに、今はなおさら怖いですよね。でもなかなか『触るな』とは言いにくい……。トピ主さんを見習って私も勇気を出して言おうと思いました。周囲に人がいるときは、“かわいい手足”にお互い気をつけましょうね」という書き込みがありました。

「私の赤ちゃんに触らないで」という母親たちの声を、どんなふうに受け止めればいいのでしょうか。千葉県松戸市で子育て相談室「いっぽいっぽ」を開いている子育てアドバイザー(公認心理師)の永瀬春美さんに聞きました。

「コロナの流行する前から、お母さんの一部には『知らない人から赤ちゃんを触られるのは嫌だ』という声はありました。今は感染を恐れる気持ちもあって、人によってそうした拒否感が強くなっているのでしょう。周囲も当然、『触れないで微笑みかける』など、関わり方に気をつけないといけませんね」と永瀬さんは話します。

母親の気持ちは聞いてみないとわからない

永瀬さんが所属するNPO法人「子育てひろばほわほわ」では、松戸市の委託を受けて、3歳までの乳幼児とその親を対象にした子育て広場「ほっとるーむ東松戸」を開いています。コロナ禍で、受け入れを一時中断していましたが、7月から再開しました。インターネットによる予約制で、1回に受け入れる親子の数を限定し、回と回との間には、換気と消毒を徹底しています。

来所した母親がベビーカーを折りたたんだり、きょうだいを同時に見るのが大変そうだったりして、スタッフが手助けすることも。「そんなときでも、必ず言葉に出して、『抱っこしましょうか』などと声をかけるようにしています。『助かる』と感じる人も『してほしくない』と感じる人もいて、お母さんの気持ちは聞いてみないとわからないですから」と永瀬さんは強調します。

「アレルギーがあるので」はナイスな返答

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トピ主さんが感じたモヤモヤについて、永瀬さんは「断りもなく、知らない人から自分の赤ちゃんを触られたこと以上に、相手から『ママに怒られちゃった……』と言われたことで、この方は何か罪悪感のようなものを胸にチクッと感じてしまったのでは」と分析します。「自分を傷つけた相手に怒りを感じるのは自然なことです。感情に良い悪いはありません。それでも、この方は、はっきり『ノー』の意思表示をして、『アレルギーがあるので』と相手を責めない言い方で行動を制止できました。ナイスな返答だったと思います」と話します。

永瀬さんによると、感染への不安の感じ方は、人によって温度差があります。トピ主さんと同じように、他人から触られることに拒否感を示す人がいる一方で、触られてもそんなに気にならない人もいます。

強い不安を感じてさまざまな予防対策をした結果、疲れ果ててしまう人もいます。そうした人に「やりすぎだよ」と声をかけても、たいてい受け入れられません。「不安という感情は、危険を知らせ、回避行動を促すアラームなので、無視しようとすればするほど、音量を上げて鳴り続けてしまいます。逆に、『了解』というボタンを押せば、アラームは止まります」と永瀬さんは話します。「まずは『そうだよね。不安だよね』と、ありのままの気持ちを認めることから。わかってもらったという安心感を得て初めて、自分がしている対策を吟味して、どれかをやめるという、次の一歩に踏み出せます。感染のリスクをゼロにすることはできないので、私たちは得るものと失うもののバランスをはかりながら、行動を選択していくしかないのだと思います」と続けます。

「見守ってくれる地域でよかったかな」の声も

「勝手に触ってくるジジババ多数。近所のママ友と話題にすると、あるある。ベビーカーは、夏でも薄手のバスタオルかけて覆っていました。これからの季節、抱っこひもでスッポリ覆ってしまっても。自衛するしかありません」というレスを寄せたのは、「かな」さん。はじめは怒り心頭でしたが、「他人に関心のある地域で、見守ってくれる地域でよかったかな、とも思えるようになった」そうです。

かわいい赤ちゃんへの愛情を示すのにも、時代に合った新しいマナーを身につけないといけないのかもしれません。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】

勝手に触らないでほしい

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