お酒じゃなくても酔える? 人気のノンアルバーに行ってみた

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写真:0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE提供

若者の間で進むアルコール離れ

コロナ禍で家にいる時間が増え、「宅飲み」をする人が増える一方で、ノンアルコール飲料の需要も高まっています。ひと昔前は、「ノンアルコール飲料はおいしくない」というイメージを持つ人が少なくありませんでしたが、お酒に引けを取らない味に進化してきているようです。ノンアルコール飲料専門のバーも、アルコール離れが進む若者層に支持されています。人気の秘密を探りました。

午前から営業…完全ノンアルコール飲料のみのバー

東京・六本木にあるノンアルコール飲料専門バー「0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE」。アルコール飲料は一切提供しない「日本初の完全ノンアルコールバー」をうたい、今年7月にオープンしました。ギャラリーやスタジオなどが入居するアートコンプレックスビル「ANB Tokyo」の階にあり、女性一人でもふらっと入りやすそうな店構えです。

写真:0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE提供

まだ夕方の5時にもかかわらず、おしゃれな店内は若い女性で満席。埼玉県から来たという会社員女性(25)は「話題のお店だったので、友人3人と来ました。最近はコロナで宴会もなく、外でお酒を飲む機会もめっきり減りました」と話してくれました。「アルコールに弱いから、この店を選んだのですか?」と聞くと、女性は「コロナの前から若い人たちの間で、アルコールを飲む機会は減っています。私もお酒を飲まないわけではありませんが、家で飲むことはあっても外ではあまり飲みませんね」と打ち明けました。

「お酒じゃなくても酔える」空間を演出

「日本では、お酒が飲めない人がビールの代用として飲む場合が多いのですが、欧米では、日本よりも健康志向の人が多く、『ノンアルコール専門のバー』が広く認知されています。『ノンアル派』が楽しめる選択肢がたくさんあるんです」と説明してくれたのは、同店の広報担当・河本シャルル徹さんです。

営業時間は、午前10時から午後10時まで(午後3時から4時は一時閉店)で、来店客の約7割が20代後半から30代前半の女性。午前中には、年配の女性客や、「お酒は好きだけど、妊娠中なので控えている」という若い女性客がよく来店するそうです。

「夜の街」のイメージが強い六本木で、午前10時から営業していることに驚きましたが、カフェチェーン店などとは違った雰囲気の中、「お酒は飲みたくないけど、ソフトドリンクでは物足りない」という人の利用が増えているといいます。日常を忘れさせてくれるアートギャラリーのような空間を演出することで、「飲まなくても酔える」のが、お店のコンセプトのひとつ。「アルコールなしで女性にアプローチする男性もいますよ」と河本さんはほほ笑みます。

五感でお酒を飲んだかのような気分に

写真:0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE提供

ジャスミンティーをベースに、ベルジュ(未熟ぶどう)の果汁や、パイナップル、ジンジャーを合わせたフルーツ系のカクテル「アイスランドバブル」(1320円・税込み)を飲んでみることに。カウンターではバーテンダーが、本格的なカクテルのように、見た目にも美しいドリンクを作ってくれました。ガスで膨らませた風船のような泡がグラスの上にのる、遊び心いっぱいの演出が施されています。泡を指でパチンとはじくとスモークがあがり、鼻先にローズマリーの香りがふわっと漂います。一口飲むと、体の中がカーッと熱くなってきて、それまで持っていた「ノンアルコール=ソフトドリンク」という概念が覆されました。河本さんによると、「五感でお酒を飲んだかのような気分」を味わえるのだそう。ジンジャーが利いているせいか、全くアルコールは入っていないのに、ほのかに酔ったような気分になりました。

おいしさアップし、需要拡大

ノンアルコール飲料の需要は、年々増加傾向にあります。サントリーの推計によると、ノンアルコール飲料の国内の市場規模は、2009年には約502万ケース(1ケース=633ミリ・リットル入り大瓶×20本)でしたが、10年後の19年には約4.5倍の約2243万ケースに達しました。20年は、前年比1%増の2266万ケースと推定されています。

同社が今年8、9月に実施したノンアルコール飲料に関するアンケート調査では、ノンアル飲料の需要の大半を占めるビールテイスト飲料の味について、「最近おいしくなったか」との質問に、月1回以上飲んでいる人のうちの92.1%が「おいしくなった」と回答しています。メーカー各社は製造技術の向上にしのぎを削っており、その結果、ノンアル飲料のおいしさがアップしていることが、需要の拡大につながっているとみられます。

若者に「飲みニケーション」敬遠される

一方、ノンアルコール飲料の人気と反比例するように、「若者のアルコール離れ」は進行しています。厚生労働省の2018年の「国民健康・栄養調査」によると、飲酒習慣のある人は、男性が33.0%、女性が8.3%で、20年前(1998年)よりそれぞれ19.2ポイント減、1.1ポイント減となっています。とりわけ、若い世代のアルコール離れは顕著で、20代では、飲酒習慣のある男性が10.6%、女性が5.2%で、20年前(男性30.1%、女性8.5%)から大幅に減少しています。非正規で働き、所得の低い若者が増加していることや、職場の上司や同僚との「飲みニケーション」が敬遠される傾向が強まっていることなどが原因として挙げられています。

お酒の力を借りないと女性に告白できないというのは、令和の時代では古いようです。会社の部下と飲みに行って、「俺の酒が飲めないのか!?」と言ったら、「アルコールハラスメント(アルハラ)」と見なされる昨今。こうした社会変化も後押しして、ノンアルコール飲料の需要はますます増えそうです。(読売新聞メディア局・遠山留美)

0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE

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