コロナ禍のアフリカ諸国で、子どもの「女性器切除」が増える理由

インタビュー

エチオピアで、プラン・インターナショナルの活動に参加する女の子たち

10月11日は、若い女性の権利を広く国際社会に呼びかける「国際ガールズ・デー」です。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう今年、国連人口基金(UNFPA)などの国際機関が、アフリカなどの女の子たちへの「女性器切除(FGM)」が増加していると警鐘を鳴らしています。なぜ、FGMは増えているのでしょうか。国際NGO「プラン・インターナショナル」で、アフリカ支援に取り組む道山恵美さん(43)に話を聞きました。

コロナの影響でFGMの犠牲になる女の子は200万人

コロナの影響によって、今後10年間で、本来であれば守れたはずの200万人の女の子たちが、FGMを受けることになる――。UNFPAは今年6月、「世界人口白書2020」で、こんな推計値を発表しました。

FGMとは、女性外性器の一部を切除する慣習のこと。国連の調査によると、アフリカを中心に約30か国でFGMが行われ、経験者は世界で2億人に上ります。施術には4種類あり、ちつを縫合する方法が最も体に負担がかかるといわれます。世界保健機関(WHO)によると、健康へのメリットは一つもありません。生理痛の悪化や不妊などを引き起こすほか、不衛生な環境で麻酔なしで行われることが多いため、感染症や出血多量で命を落とすケースも珍しくないといいます。

道山恵美さん

それでも施術が行われる理由として、道山さんは「人によって意見は異なりますが、『女の子が大人になるための儀式』『結婚の条件』として行われることが多い」と指摘します。「FGMをしないと、相手の両親が結婚を認めてくれない」と仕方なく施術をしたり、「していないことがバレたら、村八分にされてしまう」と心配した母親が娘に受けさせたり。多くは15歳くらいまでに施術され、大人になってもトラウマを抱える女性は少なくありません。

休校が好機に…増える「施術師」の戸別訪問

根強く残るFGMをなくそうと、国際機関やNGOなどが支援を続けてきた結果、施術経験のある女の子の割合は、1980年代には2人に1人だったのに対し、現在は3人に1人にまで減りました。

ところが、なぜ今、FGMがまた増えているのでしょうか。道山さんは、コロナ禍で次の三つの要素が重なったからだと分析します。

(1)ロックダウン(都市封鎖)で休校になり、子どもたちが家で過ごす時間が長くなった
(2)副業で女の子たちにFGMをする「施術師」が、コロナ禍で本業の収入が減り、施術で収入を得ようとしている
(3)国際機関やNGOが、現地にまで足を運んで活動することができない状況が続いている

FGMの施術が最も多いソマリアでは、休校中の8歳と9歳の女の子がいる家に施術師が戸別訪問し、母親が姉妹にFGMを受けさせたケースがありました。姉妹は、施術後も自分の体に何が起きたのか理解できていないといいます。

実際に、施術師が使っているナイフ。錆びついていて、衛生的でないことが分かります(c)プラン・インターナショナル

「FGMは回復に3週間以上かかるので、学校の長期休暇中に行われるのが目立ちます。収入が減った施術師の中には、長引く休校をチャンスと考え、戸別訪問をしてFGMを持ちかけるケースも出ています」と道山さんは話します。UNFPAが、ソマリアの地域住民や支援スタッフら約1000人に行った簡易調査でも、31%の人がコロナの影響でFGMが増えたと回答。考えられる原因としては、「休校」が39%と最も多く、次いで「施術師の収入」が28%でした。

ソマリアのほかにも、ケニアやエジプトなどからも、FGMが増えているという報告が上がっているといいます。

「やっぱりFGMは当たり前」という意識に戻さないために

コロナ禍で現地での支援が難しい国際機関や民間団体は「FGMをめぐる状況が後戻りしてしまうのではないか」と危機感を抱いています。道山さんもその一人。これまでアフリカ各国をめぐって支援に取り組んできましたが、2月以降、日本国内を出ていません。各地に駐在していたスタッフも、緊急事態宣言を受けて帰国しました。

プラン・インターナショナルでは、10年以上前からエチオピアで「女性性器切除から女の子を守る」プロジェクトを行い、女の子たちの自立を促し、声を上げていくためのサポートや、地域の大人たちがFGMについて議論する場作りなどを進めてきました。7月からスーダンでも同プロジェクトを始める予定でしたが、現在どちらも主だった活動は中断しています。

道山さんは、現地スタッフとやりとりしながら、参加人数と場所を変えて3密を避けて研修などを始められないか調整を続け、形を変えて活動を年内にスタートできる見通しとなりました。

「エチオピアでは、女性が結婚後にFGMを求められ、『受けたくない』と声を上げると、周囲からは『だったら離婚しなさい』と言われたケースもありました。何度も話し、時間をかけて心に根付いた風習への意識を変えてきました」と道山さん。

「プロジェクトが止まってFGMについて話す機会が減り、施術も増えてしまうことで、『やっぱりFGMは当たり前だ』『私にFGMの拒否権はない』などと、住民の意識が活動以前の状態に戻ってしまうのは、あまりにもったいない。できることは限られますが、細々とでも活動を続けて、話す機会を作っていくことが大切だと思います」と力を込めました。

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(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)

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