“タダ働き”要求に屈しない、稼げる副業・フリーランスを目指すなら

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自分の得意技を生かして副業を始めたり、フリーランスとして独立したりすることを考える人は少なくありません。しかし、仕事を軌道に乗せるのはひと苦労。スキルが重宝がられて、知人や親戚から“タダ働き”を求められることもあるかもしれません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、身内から無償でイラスト制作の仕事を頼まれた女性から投稿が寄せられています。上手に断るにはどうしたら良いのでしょうか。専門家に聞いてみました。

低姿勢で頼む兄嫁 むげに断れずモヤモヤ

「タダで絵などを頼まれたとき。どうしてます?」のタイトルで投稿したのは、トピ主「しま」さんです。子供の時から絵が好きで、美術大学を卒業。現在の本業は、絵とは無関係ですが、知人からイラストや版下制作などの仕事を頼まれることもあり、「わずかな副収入になっています」と言います。

友人に無償でイラストを頼まれることがあり、そんなときには、「プロのデザイナーさんたちに悪いので引き受けません」とはっきり断ることにしていました。ところが、今回依頼してきたのは、ある企業で正社員として働く兄嫁。仕事絡みで必要になったらしく、「忙しいのにごめんね」と優しい口調で頼まれ、むげに断ることもできませんでした。

トピ主さんは、引き受けることにしたものの、「気合を入れて作って、結局(作品が)使われなかったらがっくりだなあ」と思い、1時間ほどで仕上げてメール送信。でも、「自分として十分にやりきった作品」ではないので、送った後で「これでよかったのかなあ……」と考えこんでしまいました。そこで、発言小町で「特技を生かした労働がお金になったり、ならなかったりするモヤモヤのある方。体験や対処法をお聞きしたいです」と問いかけました。

この問いかけに対して寄せられたのは、ほとんどが“タダ働き”に反対する意見です。

「(トピ主さんは)セミプロというような立場ですね。しかし、これからはプロとしてケジメをつけた方が良いと思います。無償ボランティアをやってはいけません」(「傍流」さん)、「(トピ主さんに依頼した)義姉さん、今は良い人でも、今回のことで会社の人から感謝されるのが『快感』になって、そのうち、『イラストやデザインに困っているの? なら私に任せて。私の義妹はね、そこそこの作品をタダで作ってくれるから。私が言えば一発よ』って言いふらすかもしれませんよ。その時になって断ったら『メンツをつぶされた』って……。ずうずうしい人には『今回だけ』がありません」(「タラ鍋」さん)といった辛口の意見が届いています。

便利屋扱い、わがままなリクエスト

似たような体験談を寄せた人もいます。パソコン関係の資格を持っている「へっぽこ絵描き」さんは、友人のパソコンが不調のとき、便利屋代わりに自宅に呼びつけられたことがあるそうです。「無償で物を欲しがる人って、頼むときには低姿勢。でも、関係性を悪くしないためにこちらが頑張っても、関係は決して向上しないんですよね」。トピ主さんには「今後は『他に有料の依頼があるので、そちら優先です』と言って、ずっとスルーでいいと思います。私もそうしてます」とアドバイスしています。

「断りにくい相手っていますね」と書いたのは「康子」さん。以前ヘアメイクの仕事をしていたとき、「何とも断りにくい関係性の知人の知人」から無料でヘアメイクを頼まれたことがあったそうです。「ササッと適当でもいいから」と言われましたが、そんなわけにはいきません。「自分の技術や腕だけで仕事をしていると、頼むほうは『元手ゼロ』と思う人、いますね。でも、実はそうではないんですよね」と言います。

手作りの布製品などをイベントに出展している「ベーグル」さんからは、「ストレスになることは断りましょう」というアドバイスがありました。「ベーグル」さんのもとには、作品を見た人から「こんな感じのを作ってほしい」「この布地で作って」といったリクエストが寄せられます。しかし、「(私は)定番デザインの物しか作っていません」「預かった布を裁断間違いしてはいけないので、(素材の)預かりはしません」と言ってハッキリ断っているといい、「ここに至るまでには、リクエストに応え、たくさんの嫌な思いをしたからです」と付け加えました。

上手な断り方とは?

自身のスキルによって何らかの収入を得ている人が、タダ働きを依頼されたとき、どうすれば良いのでしょうか。フリーランス・クリエイターを支援するサイト「フリラボ」を運営する「クリエイティブユニバース」(本社・大阪市)CEOの樫本祐輝さんに聞きました。

樫本さんはこれまで、1000人以上のフリーランスや副業をしたい人と面会しましたが、同じような悩みを聞くことが多かったと言います。「個人的なお付き合いや、『親戚から頼まれて』というパターンが最も断りづらいようですね。本来、仕事には予算感やスケジュール感があるし、それがなければ仕事とは言えないのに、そのことも示さずにとりあえず希望を言ってくる。そういう人には、対処法があります」と樫本さん。

具体的には、

<1> 予算とスケジュールについて冷静に問いただすこと

<2> 先約があって、スケジュール的に厳しく応じられないと返事すること

<3> 「クラウドソーシングで探すこともできる」などと、相手に代替案を示すこと

などです。

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「相手から大体の予算感を聞けば、どの程度の仕事を期待しているかがわかります。単価が安すぎて引き受けられないときには、仕事にかかる時間数に直して説明するのもよいかもしれません。フリーランスとして独立を目指すなら、簡単な仕事の発注と支払いの流れをだれにでも説明できるように、自身の仕事用のウェブサイトなどで仕事の流れや値段感が分かる料金表などを公開しておきましょう」と樫本さん。

フリーランスとして活躍している人の中には、ホームページ上に最初からおおよその単価や、「個人からの依頼はお引き受けしかねます」などの断り書きを掲出しているケースもあります。「個人間の取引となるとトラブルも多いので、それだけ慎重になる必要があるということです。トピ主さんの場合、義理のお姉さんと直接ではなく、実のお兄さんも交えて話をするなど、第三者を入れておくくらいの気持ちで」と樫本さんはアドバイスします。

トラブルを避けるために、仕事を受注する時には、書面を交わすことも大切です。見積書でも良いので依頼内容や、成果物の納入期限、代金の支払い期限などを明記しておけば、無用なトラブルを避けることができます。樫本さんは「フリーランスを目指す人は、自分の技術を高めることだけに集中しがちですが、実は、交渉力などビジネス感覚を磨いておくことも同時に求められます」と強調します。

自分の得意技を仕事に 副業に熱い視線

就職情報サービス会社「学情」が、20代専門の転職サイト「Re就活」への訪問者を対象に今年8月に行ったアンケートでは、勤務先の企業で認められていたら、「副業したい」「どちらかといえば副業したい」と回答した人が72.4%に達しました。その理由(複数回答)として、「収入を増やしたい」が67.3%で最も多く、次いで「収入を得る手段を複数持っておきたい」(59.9%)、「好きなことや興味のある仕事に挑戦してみたい」(53.1%)となっています。自分の得意技を生かした副業には、熱い視線が注がれている様子です。

好きなことを副業にできたり、フリーランスとして独立できたりしたら、喜びもひとしおでしょう。でも、自分の働き方を守るのは自分自身。そう肝に銘じておいたほうがよさそうです。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】
タダで絵などを頼まれたとき。どうしてます?

樫本祐輝(かしもと・ゆうき)
フリーランス・クリエイターの駆け込み寺主催者

 1985年生まれ。岡山県出身。Web制作会社を経て、21歳でフリーランスのWebデザイナーとして独立。その後、ゲーム開発会社やマーケティング会社、NPO法人で働いた経験を生かして、フリーランス・クリエイター支援や法人向けコンサルティングを行う株式会社クリエイティブユニバースを創設。これまで1000人以上のフリーランスやクリエイターを目指す人たちの相談に乗ってきた。独立・副業に必要なノウハウを伝えるセミナーを開催するなど活動している。

クリエイティブユニバース:https://c-u.co.jp/labo/ カッシー@フリーランス・クリエイターの駆け込み寺:https://twitter.com/strive