はだしで彼の実家へ…スイスイさんが「脱メンヘラ」できたワケ

インタビュー

ネットで生まれた造語「メンヘラ」。感情的な人や、何かに依存しやすい気質の人を指す時などに、広く使われています。訓練を重ねることで、そういった気質から脱却できると話すのは、「元メンヘラ」を自称するエッセイストのスイスイさん。自身の経験をつづった「すべての女子はメンヘラである」(飛鳥新社)が話題となっているスイスイさんに、話を聞きました。

きっかけは、1か月で10キロ痩せるほどの「大失恋」

――著書の中で、自身のことを「ハードメンヘラ」だったと表現していますが。

彼氏から連絡がないと、不安になって「、(読点)」のみのメールを100通以上送り続けたり、彼氏に振られてはだしで家を飛び出し、泣きながら彼氏の実家まで向かったりしていました。今振り返れば、「なんで、あんなことをしたんだろう」と思うこともありますね。

20歳で「脱メンヘラ」を決意してからは、恋愛面は落ち着きましたが、社会人になっても名残はあって。まず、仕事がつらいと、道ばたで突然泣き出す。片付けも苦手で汚部屋おべやに住んでいました。職場でも、机の下に積み上げた荷物が雪崩を起こし、埋もれていた生理用ナプキンが上司の前に飛び出して叱られたこともありました(笑)。

――「脱メンヘラ」を決意したきっかけは?

大学3年生の初夏、人生最大の失恋をしたことがきっかけです。家庭環境や考え方がすごく似ている彼氏で、「あの人がいなかったら私が困る分、私がいなくなったらあの人も困るはず」と思い込んでいたので、ショックは大きかったですね。1か月で10キロも痩せました。失意の中、ふと「私はずっと、相手を傷つける恋愛をしては自分も傷つけることを繰り返したまま、死ぬのでは……」と思い、メンヘラを抜け出そうと決意しました。

――「脱メンヘラ」のため、まず取り組んだことは?

結果的に「脱メンヘラ」の第一歩になったのが、自分の頭の中を全て書き出す訓練でした。失恋と同じ頃、友人に「今日、何していたの?」と聞いたら、「ちょっと今日、考えごとをしていた」と言われたんです。「えっ、頭の中で考えごとするのって、どうするの!?」って、すごく驚いて。

それまで私は、自分の頭の中でじっくり物事を考えたことがなかったんですね。毎日の占いを真に受けて、アドバイスに合わせて無理に行動したり、人に毎日悩みを相談したり。周囲に言われたまま動くのが当たり前でした。そこで、自分は何が好きで、どんな時に嫌だと感じ、何がしたいのか――。それらを全部書き出してみたんです。そうやって頭の中を可視化したら、「自分って、こんなふうに考えていたのか」と客観的に見ることができるようになりました。

「死ぬ前にやりたいこと」100個書いて見えてくるモノ

――著書では、そういった経験などを基に編み出した「脱メンヘラ」のトレーニングを七つ紹介していますね。なかでも「『死ぬ前にやりたいこと100』を書く」は、印象的でした。

友人が書いているのを見て、25歳頃に私も挑戦してみたんです。100個も書き出すとなると、自分でも気づかない私欲までかき集めなければいけません。自分の描く理想が見えてくるはずです。自分の行動軸が分かるので、周囲の声に振り回されることも減りますよ。今でも、都度リストを更新しています。

読者からの反響も一番大きかったですね。「100も挙げられません!」という声をよくもらうのですが、その時は「行きたい国を10か国考えてみて」「着たい服のブランドで20個くらいは埋まるよ」と答えています。「クリームソーダを飲む」と書いた女性もいました。まずはハードルの低いものからでいい。とりあえず、書き切ることが大事です。どうしても書けない時には、私のSNSに連絡くだされば、何かしらお伝えします!(笑)

――「脱メンヘラ」トレーニングの末、「(脱メンヘラのきっかけとなった)元カレに、史上最強の元カノと思われたい」という気持ちが原動力になっていることに気づいたと聞き、驚きました。他の男性と結婚した後だったとか。

そうですね。実は、cakes(ケイクス)というサイトで連載しているお悩み相談にも、読者から「すてきな旦那さんとかわいいお子様2人がいるのに、元カレが大好きだなんて、旦那様やお子様がふびんでなりません」というコメントが来たんです。

トレーニングの結果、「他の人にこう思われたらどうしよう」と悩む境地から抜け出していたので、本当に優先したいことに気づけた瞬間、私は素直にうれしかった。でも、別に自分の軸は、誰にも言わなくていいんです。私は書く仕事だったから、たまたま「元カレが軸」と公表しただけで、みなさんは誰にも言わなければ罪悪感も湧かない。自分の軸にするか迷った時には、それが軸になることで弊害が起きるかどうか、考えてみるといいかもしれませんね。本では、その元カレからメッセージをもらっています。もう名作です。

メンヘラは「素直な気持ちを持つ人」

――「悩まないセブンルール」も紹介していますね。

人生で悩まないことなんてありません。脱メンヘラした私でも、ちょくちょく悩みの種は出てきます。ただ、トレーニングのおかげで、悩んでから解決するまでのスピードを格段に速めることができるようになりました。整理して、すぐ解決に向かう癖がついているからです。「秒で解決できる!」と思えると、気持ちも楽になります。

私の場合、「あ、今全部悪い方向に考えているな」と気づいた時には、セブンルールのひとつ「ファスティング(断食)」が特に効果的。その時その時で効果的と感じるルールは違うと思うので、それを把握しておくといいですね。

――「すべての女子はメンヘラである」というタイトルに込めた思いは。

もはや、女子に限らず全員メンヘラではないでしょうか。メンヘラって、子どもの時の素直な気持ちがある人なのかも。最近、自分の子どもを見て、そう思いました。子どもって、自分の欲をそのまま全力で表現しますよね。そういった欲や感情を抑えているのが大人。メンヘラは、感情をそのまま爆発させてしまうがゆえに、自分を客観的に見られない状態です。

「メンヘラ」という言葉にはマイナスのイメージが付きまといますが、全ての欲を抑えてしまうと、画一化された人生になってしまう。その人にしかない「どうしても譲れないこと」は、さらけ出した方がいいと思うんです。

誰しも、どうしても怒りを抑えられない場面はあるし、感情があらわになることもあります。そういった自分を責めるのではなく、その性質を当たり前とした上で、その性質と共存していくという考え方ができるといいですね。この本が、共存の一助になることを願っています。

(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)

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スイスイ
エッセイスト

1985年、名古屋生まれ。大手広告会社での営業を経て、コピーライター・CMプランナーに。2015年、cakesクリエイターコンテストで入賞し、連載「メンヘラ・ハッピー・ホーム」でエッセイストデビュー。プライベートでは、プライベートではメンヘラを経て100%リア充になり、現在二児の母。