後の人生にも影響?「女子校」「共学校」どちらが良いのか

サンドラがみる女の生き方

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ドイツで生まれ育った筆者は20年以上、日本に住んでいますが、今でも日本とドイツの違いを発見するのが好きです。いろんな違いがあるのは面白いし、それについていろいろと考える作業もまた面白いと感じます。

先日、あるドイツ人の知人との会話で、彼が東京女子医科大学病院で受診した話をしたのですが、その流れで東京女子医大のことが話題になりました。筆者が、この大学は世界でも珍しい「女子学生だけの医科大学(大学院は男女共学)」だと話したところ、ドイツには女子大がないため、その知人に大変驚かれました。ただ、ドイツには女子大はないものの、日本の小学校高学年から高校生に当たる学生が通う学校に「女子校」があり、近年、その存在が見直されてきているのです。というわけで、今回は「女子校」について考えてみたいと思います。

ニッポンの「女子大」はヨーロッパ人には不思議?

日本だと「女子大」は当たり前の存在で、驚く人はいませんが、ドイツには「不思議」と感じる人もいます。日本にあまり詳しくない人の中には、「もしかしたら、男性が通う大学への入学が許されていないから、女性だけの大学があるのではないか」と誤解している人もいます。でも、筆者が「日本には共学の大学も多く、女子大に通うか、共学の大学に通うかは自由だし、個々の考え方次第」と説明すると安心されます。実際に日本には、冒頭の東京女子医大のように、伝統があり、教育レベルの高い女子大が少なくありません。

両親に女子校進学を反対される

ドイツの女子校の特徴は、カトリック系が多いことです。学校によっては、シスターがいたり、校内に教会があったりします。ただ、昔と比べて女子校の数は減っています。

実は、筆者は10歳の時、女子校のギムナジウム(大学進学を希望する子供たちが通う8年制学校)への進学を希望しました。ドイツの小学校は4年生までで、卒業後にギムナジウムに進学するのか、それとも、将来は大学に行かずに職人などになるための学校(ハウプトシューレ)に進学するのかを決めなければいけません。筆者は、ギムナジウムに行くことは決まっていたのですが、どこのギムナジウムにしようかと考えた時に、「女子校のギムナジウムに行きたい」と思いました。当時、小学生だった筆者は、男の子よりも女の子と遊ぶことのほうが多かったですし、女子校に行くことが決まっている友達もいたりして、女子校は楽しそうなイメージだったからです。

ところが、親に希望を伝えたところ、反対されてしまったのです。両親はこう言いました。「今は10歳だから男の子に興味がなくても、ギムナジウムには9年(現在は8年ですが、筆者の時代は9年でした)と長く通うので、思春期になった時のことを考えると、同級生に男の子がいたほうがよい」。同年代の男の子がクラスにいれば、男の子にもいろんな子がいることが分かる。同い年の男子の現実を知るのは大切だというのです。

さらには、「周りに同年代の男子がいないと、男性を特別なものとして幻想化してしまいやすい」「10代の女の子の学校生活で、周りにいる唯一の異性が『50代のラテン語の先生』だというのは不健全だ。『ラテン語の先生がすてき!』などと恋愛対象になったら困る」とまで言われてしまったのです。当たり前ですが、これはあくまでも筆者の親の考えですので、必ずしも一般に当てはまるものではありません。

結局、筆者は共学のギムナジウムに通うことになりました。振り返ってみると、確かに良くも悪くも同年代の男子の現実を見ることができ、男の子に幻想を抱くようなことはなかったように思います。

ドイツで「女子校」が見直されている理由

筆者の両親ほど極端ではなくても、「女子校は発想として遅れている」と考えるドイツ人は当時、少なくありませんでした。ドイツ社会では、「男女平等」が大事にされていますが、それを目指す過程で、「男と女を別の空間ではなく、一緒の空間で教育すること」が重視されており、男女を分けることに対して強い拒否感を持つ人も多かったのです。

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ところが近年、ドイツでは「女子校」を見直す動きが強まっています。

今年2月、ドイツ南西部のラインラント・プファルツ州の教育相で、文部大臣会議議長でもあるシュテファニー・フビグ氏が、「数学と物理において、男子生徒と女子生徒は別々に授業を受けることが望ましい。そのほうが後に大学に進学した際、女性が理系の学科を選ぶ可能性が高まり、理系の仕事に就く可能性も高まる」と語って話題になりました。

ドイツの共学校では、例えば、物理の授業で実験をする時、男子生徒が実験の主導権を握り、結果として女子生徒が実験を観察する側にまわってしまうケースの多いことが報告されています。このため、ドイツでは現在、「理系の科目については授業を男女で分けたほうが良いのではないか」という声が高まっているのです。

ドイツではまた、「共学校よりも女子校のほうが、女子生徒が物理などの理系科目に興味を示す」という調査結果が出ています。筆者の友達の中にも女子校育ちのドイツ人がいますが、彼女は「私は女子校に通っても数学や物理が苦手だったけれど、今振り返って良かったと思うのは、それらの科目が苦手なことについて、学校生活の中で一度も『女の子だから数学が苦手なのね』と言われなかったことかな」と語りました。当たり前ですが、女子校には女子しかいないため、「性別によって決めつけられること」がなかったと言います。

さらにドイツでは、「女子校に通う女子のほうが、共学校に通う女子よりも、卒業試験の点数が良い」という統計も出ています。そういったことが、前述のフビグ氏の発言につながったわけです。

社会人になって知る「男性優位」の現実

日本では、「女子校に行って良かった」という声も多いですが、女子校出身の筆者の友達は「居心地は良かったけれど、そのぶん社会に出てから苦労した」と語っていました。なんでも、女子校時代は日本社会が「男性優位」であるという概念をまったく知らずに過ごして、就職して社会人になって初めて「男性優位なんだなあ」と気づかされ、戸惑ったそうです。同期入社であっても、女性より男性のほうが出世の早いことを目の当たりにし、そこで「社会の現実」を知ったといいます。

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その友達は「共学の人は、そういう現実にもっと早く気づいていたんじゃないかな。でも、逆に考えると、女子校はそれだけ私に自信というものをつけさせてくれたんだとも思う」と、複雑な思いを語ってくれました。

こう考えてみると、「女子校か共学校か」は、単純に若い世代が学習する場の問題にとどまらず、場合によっては「大人になってから、社会をどう受け止めるか」にも影響があることが分かります。

社会に出る前の「準備」として、共学校が良いのか、女子校のほうが良いのか。各自の経験によっても違うでしょうし、意見が分かれるところだと思いますが、少子化の影響で日本でも女子校の共学化が進んでいる今こそ、女子教育のあり方などについての議論が必要なのではないでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)。