自転車で邪魔な歩行者を避けたのに「すみません」じゃすみません?

News&Column

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、自転車が注目を集めています。通勤にバスなどの公共交通機関の利用をやめて自転車に替えたという人もいれば、副業で自転車を使った宅配サービスを始めたという人も。でも、気をつけないと、思わぬトラブルに見舞われるケースもあります。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、狭い道で歩行者を避けて通ったら、「すみませんくらい言えよ!」とどなられたという投稿がありました。何が問題なのでしょうか? 自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに聞きました。

すみませんくらい言えよ!

自転車の後ろに子どもを乗せて、狭い道をこいでいた投稿者のトピ主「すう」さん。目の前に、男女のカップルが道をふさぐようにして並んで歩いていましたが、男性のほうが自転車の存在に気づき、そっと道をあけるように女性を引き寄せてくれたので、トピ主さんは頭を下げてそのまま追い越しました。しかし、その瞬間、女性の方から「すみませんくらい言えよ!」と大きな声で言われてしまったのだそうです。

自分では、頭を下げながら「すみません」と言ったつもりだったというトピ主さん。マスクをしていたため聞こえなかったのではないかと説明しますが、女性の暴言に驚き、「これまでも、すれ違いざまに舌打ちする女の人もいました。こんなとき、みなさんだったらどうしますか」と意見を求めました。

このトピに180件を超えるレスがありました。「もっと大きな声でお礼を言えば良かった」「聞こえないあいさつはしてないも同然」などのコミュニケーションに関する投稿がある一方、自転車のルールやマナーを問題視する投稿も目立ちました。

写真はイメージです

「夫とわんこと歩道を歩いていたら、後ろから自転車でやってきた、どう見ても60代以降のおばちゃんが『あの、じゃまなんですけど!』と言って、追い越し走り去った。私たちは『じゃまなんですけど』に驚いてよけたけど、みるみる腹が立って、『じゃまとはなんだあっ!』と言いたかったが、言わないまま。今思い出しても腹が立つ!」(「はらたち日記」さん)

「私も歩道を自転車で通ることがあるし、人のことを言えませんが、横2列で歩道に人がいたら、私なら法律通り車道に避けるかな」(「ハニーシロップ」さん)

「歩道か歩道じゃないかは関係ありません。狭い道を通る時、歩行者がいれば降りて通らないと危険です。子どもがいるなら、なおさら考えて自転車乗りましょう」(「匿名」さん)

自転車が歩道を走るのは仕方ない?

一方、道路事情や通行状況を考え、自転車に乗っていたトピ主に同情する声もあります。

「はるは」さんは、「私の場合、ただ、車道を走っていただけなのに(逆走ではありません)、車のドライバーが窓を開けて『道が狭いんだから自転車はこの道を通るな!』と怒鳴られたことがあります」と自らの体験を紹介。「自転車はルール通りに走行しても、歩行者と車の運転者の両方から嫌悪されています。八方塞がりです」と途方に暮れています。

「りり」さんは、「自転車は軽車両、歩道を走るな、という意見もあると思いますが現実には難しいです。狭い日本で自転車と車が安全に走行できる道や、自転車用に作られた道など数少ないからです」と指摘します。さらに、「自転車は、車道か歩道か、その道に応じて走っているだけで、車のようにルール違反したら罰金とか、まだそこまで自転車に対してのルールが徹底されていません」と書き込みました。

電動アシスト自転車の普及で迷惑も加速

自転車の安全利用促進委員会(東京)の委員で自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに、歩行者とのトラブルや自転車の安全な利用方法について聞きました。

遠藤さんは、「このトピを巡っては、歩行者が自転車に道を譲ったときに『すみません』『ありがとう』を相手に聞こえるように言ったほうがいいとコミュニケーションの問題とする意見もあります。しかし、歩行者をまるで邪魔者扱いで自転車が通行するのは、そもそも『すみません』以前の問題です」と指摘します。

写真はイメージです

道路交通法では、自転車の通行について次のように定められています。

〈1〉 車道の左側を通行する
〈2〉 車道の路端に設けられた歩行者が通行するエリア(路側帯)がある場合は、歩行者の妨げにならないように走行する
〈3〉 道路工事などでやむを得ない場合は歩道を走ることができる
〈4〉 歩道で歩行者の通行を妨げる恐れがあれば一時停止する
〈5〉 歩道を走る場合は徐行する

遠藤さんは、最近になって自転車を「迷惑な存在」と感じている人が増えているのではないかと考えています。その理由として、次の2点を挙げます。

〈1〉新型コロナの影響で、宅配サービスの利用者が増え、早く配達をしたい自転車運転者がルールを無視したり、猛スピードで走ったりする様子を目にするようになった。
〈2〉電動アシスト自転車の普及で、子どもを乗せた保護者の自転車が、歩道などでスピードを出して走るようになった。

さらに、自転車が高速道路を走ったり、高齢の歩行者をはねて重大な事故になったりすることが報道され、「自転車は危険」と見る人も増えています。実際に、スマートフォンを操作したり、イヤホンをしたり、傘を差したり、後ろからベルを連打したり……。そんな自転車を目にすることは少なくありませんから、「自転車は迷惑な存在」という見方が広まっているのでしょう。

クルマを運転している意識で乗る

それでは、歩道や狭い生活道路で、自転車はどうすればいいのでしょうか?

遠藤さんによると、やむを得ず歩道を走る場合、自転車はすぐに止まれるように徐行をしなければいけません。徐行は、おおむね時速8キロと言われていますが、自転車の構造上、このスピードで走るのは難しい。であれば、自転車を降りて押し歩くのが安全とされています。白線のない狭い生活道路の場合も同様で、歩行者が前にいれば、安全な間隔を維持したまま徐行する必要があります。

遠藤さんは、「自転車運転者が、自転車をまるで『便利な道具』であるように扱っているのが問題です。自転車は『乗り物』という意識を持って、歩行者の安全を守る必要があるのです。クルマを運転していれば、たとえ歩行者がいても、むやみにクラクションを鳴らしたり、横すれすれを猛スピードで通り抜けたりしないはずです。乗り物に乗っているという意識を持てば、おのずとルールを守り、安全な運転を心がけられるようになります」とアドバイスします。

「クルマを運転しているつもりで自転車に乗ってほしい」と話す遠藤さん

小回りがきいて、駐車スペースもとらず、生活の足として便利な自転車。でも、車道を走れば、ドライバーから邪魔者扱いされ、車やバイクから幅寄せされたり、左折のクルマに巻き込まれそうになったり。危険を感じて歩道を走れば、ルール違反と言われてしまいます。

まずは、交通弱者である歩行者からどんな存在として見られているかを知ったうえで、わが物顔で疾走するのではなく、時には自転車から降りるなど交通ルールをきちんとまもらなければいけません。
(読売新聞メディア局編集部 鈴木幸大)

【紹介した団体】
自転車の安全利用促進委員会

【紹介したトピ】
自転車で歩行者を避けて通った時「すみませんくらい言えよ!」

あわせて読みたい