孫の写真を勝手にSNSに投稿する義父…ネットに潜む危険とは

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写真はイメージです

子どもの誕生や成長は家族にとってはうれしい出来事。離れて暮らす父母のもとへ我が子の写真を送る人は少なくありません。でも、その写真を知らない間にSNSに投稿されてしまったら……。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、義父や義母のそんな行動に戸惑う声が寄せられています。「孫かわいさ」が高じてのことですが、問題はないのでしょうか。子どもの写真をSNSに投稿する際の“新常識”について、専門家に聞いてみました。

家族だけで共有したかったのに

トピ主「ぷにこ」さんは今年、長男を出産しました。離れて暮らす自分の両親や義理の両親とはあまり頻繁に会うことができないため、家族だけが見られるように設定した写真共有アプリを使って、出産直後から毎日のように息子の写真をアップロードし、親たちに成長ぶりを報告してきました。ところが、義父がその写真を勝手に自分のSNSに載せていたことがわかったのです。夫を通じて掲載をやめるように働きかけましたが、義父は何が悪いのか理解できず、親子ゲンカに発展。「孫の写真を投稿する人はたくさんいる。なぜ自分はダメなのか。犯罪? 考えすぎだ」と、まったく聞き入れようとしません。

義父の友人5000人に見られた?

しかも、義父のSNSには友人として登録された人が5000人以上いて、そのほとんどがネット上だけでつながっている関係です。仕方なく、夫がSNSのサポートセンターに連絡し、写真を削除してもらいましたが、義父は「そもそも孫は嫌がっていない」の一点ばり。義父がまた孫の写真を投稿しては、トピ主さん夫婦が削除依頼をする、その繰り返しだそうです。

困り切った「ぷにこ」さん。「(もう家族の)共有アプリ(のデータ)は消しましたが、既に(義父のもとに)保存されてしまった画像はどうしようもありません。どうしたらわかってもらえるでしょうか?」と発言小町に相談しました。

2歳の子、義母のSNSに無断掲載

この悩みには、「イタチごっこでもいいから削除依頼を出し続けましょう」「誰かからアカウント凍結されるかもしれないと指摘されれば(義父も)やめると思いますよ」「SNS等になじみのない層の人たちは、何がどうやって悪用されて、どんな大変なことになる可能性があるのか、よくわかっていないのでは?」といった意見が寄せられました。

また、2歳の子どもがいる「たぬたぬ」さんは、「義母のSNSへの投稿について」のタイトルで投稿しました。近所に住む義母がやはり、子どもの写真を許可なくSNSに載せていたことがわかったのです。「1枚ではなく頻繁に、3日に1回くらいの割合で載せています。子どもの顔も隠さず、公開範囲が誰にでも見られる状態でした」と言います。「たぬたぬ」さんの場合は、「せめて子どもの顔がわからないようにしてください」と義母にお願いしたところ、以来、子どもの写真を掲載しなくなったそうです。「SNSに孫の写真を載せてコメントをもらうのが義母の生きがいだったのに、ちょっと厳しすぎたのかなと思います。私の判断は正しかったでしょうか」と発言小町に尋ねました。

人物はアップしないという人も

この投稿には、「トピ主さんの判断が正しい」という書き込みが寄せられました。「たぬたぬ」さんの義母と同世代の人からは「私もSNSをしていますが、写真のアップに関しては気を遣います。人物はアップしませんし、風景も建物が写って場所が特定されるような写真はNGです。遠くの有名観光地の風景写真ならまだOKです。自分が住んでいる町が特定されるような写真は絶対にしません」という書き込みがありました。

写真はイメージです

セキュリティーソフト会社のアバストは、昨年5月に国内の20~60歳代のインターネット利用者1000人を対象に行った調査で、自分の子どもの写真をモザイクなしでSNSに投稿した経験があるかどうかを聞きました。その結果、全体の4人に1人が「経験がある」と答え、中でも20代女性の8割が「経験がある」と回答しました。「世代間格差というより、それぞれの人の感受性が違っていて、なかなか共通点を見いだせないのが問題です」とアバスト・ソフトウェア・ジャパン社長の藤本善樹さんは指摘します。

デジタルタトゥーの危険性とは

藤本さんによると、子どもの顔がわかる形でSNSなどインターネット上に掲載することは常に犯罪者に悪用される危険をはらんでいます。閲覧者リストがしっかりと管理されているならまだしも、そうでないSNSアカウントもあります。「インターネット上では、一度情報を公開して拡散してしまうと、自分の手を離れて消すことができなくなることも覚悟しておかなければなりません。これは『デジタルタトゥーの危険性』として知られています」と話します。

例えば、若気の至りで倫理に反する行為をネット上に公開してしまった若者たちが、将来、就職や結婚などのときに、過去の公開情報をもとに選別されてしまう危険性を指します。さらに、藤本さんは「少し進歩的な考え方ではありますが、人工知能(AI)によって人の容姿や行動に関する大量のデータの収集と分析が進むと、『統計的に、こういう特徴がある人にはこんな行動の傾向がある』などと、公開されている情報から勝手に判断されてしまう未来も考えられます。個人にとって、不利益なバイアスが働くことになります。子どもや孫本人が幼くて判断できないのであればなおさら、彼らにまつわる様々な情報を将来にも残る形で公開していくことには慎重であるべきだと思います」と強調します。

顔を隠したほうがよい理由

アバストでは、自社ホームページ上で、SNSを利用するときの留意点として、投稿前にプライバシーポリシーや保護機能を十分確認することや、公開範囲をはっきりとした意思をもって設定することなどを呼び掛けています。藤本さんは「自分や家族が実際に会った知人・友人だけに公開範囲を限定すること。また、子どもの写真を掲載するなら、基本的に顔は写らないようにするか、ぼかしやスタンプなどで隠し、居住地や行動範囲が容易にわかるようなものが写り込んでいないかを入念にチェックしてからアップすることをおすすめします」と話します。

NPO法人「体験型安全教育支援機構」(代表理事 清永奈穂)では、YouTube上で「保護者による就学前乳幼児・児童のSNS等による写真拡散の怖さ」という動画を公開しています。

藤本さんは「こうした動画を活用しながら、ふだんからインターネット上のリスクについて話し合って、我が家のプライバシーポリシーを合意しておくことが大切ですね。SNSが一般的なものになって、私たちの暮らしに楽しみをもたらしているのと同じくらい、危険性があることにも気づくべき。新しい常識として、子どもの写真の扱い方を身近なレベルで話しておきましょう」と呼びかけます。

日々成長するわが子の姿を何かに残しておきたいと思う親心。でも、デジタル時代には、気をつけないと将来、子どもから恨みを買ってしまうような事態が起こりかねないということも、心に留めておくべきかもしれません。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】
義父に写真を投稿されたくない。いい加減にしてほしい。
義母のSNSへの投稿について

【動画の製作者】
NPO法人「体験型安全教育支援機構」

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