レジ袋有料化で注目「魔法の布」風呂敷の魅力

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(写真;PHP研究所提供)

スーパーやコンビニなどでのレジ袋有料化に伴い、店にエコバッグを持参する人が増えました。ただ、繰り返し使うエコバッグには、コロナ禍ということもあって、衛生面を心配する声もあります。そこで注目されているのが、日本古来の風呂敷です。「京都の風呂敷屋さんが教える 一生使える! ふろしきの結び方・包み方50」(PHP研究所)をこのほど出版した、風呂敷専門店「むす美」(京都)の広報担当・山田悦子さんに、風呂敷の魅力と活用法について聞きました。

「特需」で売り上げ5倍に

――レジ袋有料化で、反応はありましたか?

たくさんの反響をいただいています。レジ袋が有料化された7月は、オンラインショップの売り上げが前年同月比で5倍伸びました。今年はコロナ禍でインバウンドの需要が減り、店舗での売り上げは減少しましたが、逆にオンラインでの販売が増えました。

特に、一般のユーザーによるSNSでの拡散や、メディアで紹介されたりした影響が大きく、今まではあまり情報が届かなかった層にも広まりました。これまでは風呂敷というと、どこかハードルが高く、和柄で古くさい印象が強かったようですが、最近ではフランス人デザイナーとコラボしたモダンな柄もあり、様々なファッションに合わせることができます。

「買い物の時、一般的なエコバッグ以外に何かあったかな?」という選択肢の一つとして「風呂敷」を思い出してもらい、その時に、最近の風呂敷の変化もあって、「あれ? 風呂敷ってこんな使い方があったんだ。最近はこんなにおしゃれになったんだ」と再認識してもらえたと思います。

奈良時代は「サウナ用」だった

――風呂敷の由来は?

そもそも「風呂」とは、サウナ式の「蒸し風呂」のことを意味していました。奈良時代には、お寺に風呂が設けられ、発汗作用から心身を清める「沐浴潔斎もくよくけっさい」という儀礼行事として使用されていたようです。(※今も、京都の妙心寺には「浴室」と看板がかかる蒸し風呂を拝観することが出来ます。)それが時代を経て、貴族や武家の間に広まったと考えられています。風呂に着替えを包んでいき、着替えの際には板床に敷いて身づくろいをする。風呂で使う布のことを「風呂敷」と呼んだのです。

もう一つのルーツは奈良・東大寺の「正倉院」に納められている「包み布」の文化です。「つつみ」は「裹」という文字で四角い布のことを表し、天皇の御袈裟や、当時の伎楽の御面を包んで保管するための布として使用され今も現存しています。その四角い布は、時代とともに「つつみ」「ころもつつみ」「ひらつつみ」…などと名称をかえながらも、大切なものを包み運ぶための役割を担いながら使われ続けてきました。江戸時代中期ごろ、それぞれの四角い布は、湯を使う「湯屋」の大衆化や、商業や旅の発展とともに総じて「風呂敷」と呼ぶようになりました。

小池百合子都知事がブームの火付け役

――現代風にアレンジされるようになったのは、いつからですか?

PHP研究所提供

20年ぐらい前からありましたが、2005年、当時、環境大臣だった小池百合子都知事が「クールビズ」や「もったいない」を打ち出し、買い物の時にマイバッグや風呂敷の持参を呼びかけたことがきっかけで、「風呂敷バッグ」が紹介され話題になりました。ちょうど、弊社が東京の原宿に、日本初の風呂敷専門店を出店したタイミングでした。それまでは、風呂敷は百貨店や呉服店にしか置かれていていませんでしたが、その後少しずつ雑貨店やセレクトショップなどに置いていただけるようになったのもこのころからです。それが、若い人にも手にとってもらえるきっかけになったと思います。

――再ブームの要因は?

エコバッグの用途はひとつですが、風呂敷は多用途に使えます。ラッピングやバッグ以外にも、肌寒い時に羽織ることができますし、マスクや、三角巾のような防災防具にもなります。撥水はっすい加工が施されているので、水もくめるし、雨の時はカッパにもなります。1枚携帯していると安心です。

それに、洗って繰り返し使用できることで、衛生面での不安も解消できる上、「風呂敷ってエコなんだ!」と気づいていただけるようになりました。皆さん一人ひとりが「SDGs(持続可能な開発目標)や環境について考えていかなければ、将来大変なことになるぞ」という危機意識を持ち始めているように思います。

3点を結ぶだけであっという間にエコバッグ

――エコバッグとして使うには、どのようなサイズを選ぶといいですか?

ふろしきは弁当を包む45センチ四方ぐらいの小さなものから、布団を包むような2メートル四方もある大きなものまでいろいろなサイズがあります。70センチ四方ぐらいがポピュラーですが、エコバッグにするには、100センチ四方ぐらいの大判が便利です(※正確には正方形ではありません)。

「しずくバッグ」と呼ばれる結び方でバッグを作ってみましょう。風呂敷を表が上になるように広げ、三角に折り、左右の角をそれぞれひとつ結びにし、外表になるようひっくり返して持ち手の部分を真結びにします。3点を結ぶだけで、あっという間に大容量のバッグになり、中身も飛び出ません。最初の端を結ぶ時に布を長めに取ると、底からの立ち上がりが深めになります。結び方を変えれば、トートバッグやリュックサック、巾着バッグ、ショルダーバッグ等変幻自在。そしてたためばコンパクトに仕舞えるのがいいですね。

――材質はどのようなものがいいですか?

衛生面を考えると、綿やポリエステルなど、洗濯機で洗えて乾きやすいものがいいですね。撥水加工してあるものは、汚れが落ちやすく、水ぬれもしないので安心です。

使ってみれば「魔法の布」

――タンスに眠っている、いただきものなどの風呂敷を活用したいですね。

風呂敷は、日本人だったら誰でもなじみがあるものだと思います。でも、ほとんどの方が実際には使っていないそうです。一度使ってみれば、「魔法の布」と実感してもらえるかもしれません。

包むものの形を選ばないので、旅行の時などに風呂敷を1枚、バッグの底に忍ばせておけば、いざという時にさっと出せて便利です。結ばなくても、羽織ったり巻いたりと、バッグ以外にもいろいろな用途に使えるのも気づいていただけるでしょう。また、レジ袋と違いはこんな点も。映画館やコンサートなど静かな場所でも音がしないのがいいですね。使っていただくと、自分なりのアイデアや発見があり、思いがけない喜びが見つかるかもしれません。(読売新聞メディア局編集部・遠山留美/写真提供:PHP研究所)

山田悦子(やまだ えつこ)

京都市出身。京都の風呂敷製造卸業・山田繊維株式会社と風呂敷専門店むす美の広報を務める。風呂敷の魅力、日本文化の素晴らしさを伝えるために、各地でのワークショップやメディアなどを通して、現代に合った風呂敷活用法の提案やスタイリングを行っている。主な著書に「ふろしきスタイル」(NHK出版)、「ふろしきハンドブック」(誠文堂新光社)、「初めてのふろしきレッスン」(小学館)などがある。

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