コロナ禍で関心高まる「失敗しないベランダ菜園」

News&Column

写真はイメージ

新型コロナウイルスの感染拡大で「おうち時間」が増えたことで、家庭菜園を始める人が増えています。とりわけ、マンション住まいでも手軽に取り組める「ベランダ菜園」への関心が高まっています。その一方で、うまく育てられるか心配で、二の足を踏む人も少なくないようです。野菜や花の種の開発・販売を手掛ける「タキイ種苗」(本社・京都市)に、「失敗しないベランダ菜園」のノウハウを聞きました。

外出自粛を機に始めた人も

タキイ種苗が今年7月、全国の男女600人(農業従事者、食料品販売従事者などを除く)を対象に実施したアンケート調査によると、家庭菜園で野菜を作った経験のある人は50.0%。このうち26.5%が現在も作っていると回答しています。また、現在、野菜を作っている人のうちの29.6%が、新型コロナによる外出自粛が広まった今年3月以降に栽培を始めていました。同社の桐野直樹さんは「元々、家庭菜園を始めるには春と秋が良いタイミングなのですが、今年は春先に外出自粛が重なったこともあって、これをきっかけに家庭菜園を始めた人が多いようです」と話します。

家庭菜園には、自宅の庭を利用したり、市民農園などを借りたりするパターンがありますが、桐野さんは、自宅のベランダを使って始めてみることを推奨します。「最小限の道具があれば、思い立ったその日から始められます。こまめに様子を見ることができますし、天気の良しあしによって栽培場所を移動できるので、ベランダ菜園は初心者でも失敗しにくいと言えます」

葉物野菜を標準型プランターで栽培

桐野さんによると、リーフレタス、小松菜、ホウレンソウ、水菜などの葉物野菜は、初心者でも比較的容易に育てられます。「種をまいたら、発芽して、葉が出て、花が咲き、実をつけ、種をつける。それが植物の成長の過程です。つまり、葉物野菜は、成長の初期段階である葉が育った時点で食べ物として『完成品』になるので、栽培期間が短く失敗しにくいのです」

野菜にはそれぞれ生育に適した気温があり、適温の季節でなければ、うまく育ちません。「秋に栽培しやすいのは、葉物や根菜です。市販されている種の袋には必ず『栽培適期表』が載っているので、栽培する野菜を選ぶ時には、これを参考にしてください」(桐野さん)。

用意する道具は、プランター、野菜栽培用の培養土、鉢底石、鉢底ネット、野菜の種、じょうろ、移植ごて、防虫ネット。いずれも園芸用品店やホームセンターなどで手に入ります。

葉物野菜を育てる場合には、標準タイプ(横65センチ、縦22センチ、深さ18センチ)のプランターが適しています。トマトや大根などのように、茎が長く伸びたり、長い根を張ったりする野菜は、もっと大きくて深いプランターを選ぶ必要があります。

栽培する場所は、ベランダの日の当たりが良い位置を選ぶのが基本です。日の光が不足すると、葉の色が薄くなり、弱々しい野菜に育ってしまいます。ただ、小松菜やホウレンソウ、春菊、アサツキ、バジル、ルッコラなどは、半日でも日の光に当たれば順調に育ちます。三つ葉やミョウガなどは日陰でも栽培可能です。

種や用具をそろえたら、種まきの準備に取りかかります。 

①鉢底ネットを敷き、鉢底石を入れる②培養土のプランターの半分程度まで入れる③じょうろで水をかける④プランターの上から2~3センチのところまで培養土を入れる⑤水をたっぷりかける

〈1〉プランターに鉢底ネットを敷き、鉢底石を底から5センチ程度の高さまで入れます。
〈2〉乾燥した培養土が多いため、プランターの半分程度の髙さまで入れて、水をたっぷりかけます。
〈3〉プランターの上から2~3センチのところまで培養土を入れます。
〈4〉水をたっぷりかけます。

次は、種まきです。

①長い棒でまき溝をつける②約1センチの間隔で種をまく③まき溝を土で覆う④水をたっぷりかける

 〈1〉長い棒を培養土に押しつけ、「まき溝」を作ります。棒は、園芸用の支柱棒のほか、菜箸などを使っても構いません。溝を作って種をまくことを「すじまき」と言います。すじまきのほかに、土の上に穴を等間隔に開け、種を数粒ずつまく「点まき」、土の上に種を直接ばらまく「ばらまき」がありますが、初心者には間引きがしやすい「すじまき」が適しています。
〈2〉まき溝に、約1センチの間隔で種をまいていきます。
〈3〉まき溝を培養土で覆います。覆った土は、上からしっかり押さえつけること。
〈4〉水をたっぷりかけます。

「うまく育てるには、まいた種を一斉に発芽させることが大切です。発芽時期をそろえるため、まき溝の深さと、種を覆う土の量をそれぞれ均一にしてください」

野菜の栽培では、アオムシ、ヨトウムシ、コナガなどの「虫」が大敵。種をまいたら、すぐに防虫ネットをかぶせるのがおすすめです。「防虫ネットの上からでも水やりはできます。外から虫が侵入しないよう、洗濯ばさみなどを使って、プランターの周りをネットでしっかり囲んでください」(桐野さん)。

防虫ネットの使用例

水やりは毎日が基本。土の表面が乾いたら、水をかけるようにします。「人間の赤ちゃんが飲む水の量と、大人が飲む量がまったく違うように、植物も、種をまいてから発芽の頃までは、水分は少なめで大丈夫です。成長するにつれて、水の量を増やし、大きく育ってきたら、たっぷりと水をやるようにしてください。また、気温が高い日には多めにやってください」

葉が込み合って生えている箇所で、生育の悪い葉を間引いていきます。間引きをすることで、風通しが良くなり、残った葉がより生育しやすくなります。「ぱっと見て元気そうな葉は残し、弱々しく見える葉は間引きます。どの葉も同じくらいの生育状態なら、残す葉が数センチずつの等間隔になるように間引いていってください」

生育の悪いものは間引きを

葉物の場合、発芽から収穫できる大きさに育つまでの期間は約1か月から1か月半。リーフレタスなどであれば、発芽から3週間程度で、根元から葉先までの長さが10~15センチに育ち、この段階でベビーリーフとして食べることができます。

少ない土で栽培できる「セルトレイ」

プランター栽培に比べて、少ない土で効率良く野菜が作れる方法が、「セルトレイ栽培」です。セルトレイは、農家が発芽・育苗のために使用する樹脂製のトレイで、50や72などの区画に分けられています。

セルトレイに培養土を敷き詰めて、トレイの底に開いた穴から水が軽く漏れる程度に水やりをします。その後、区画ごとに指の腹で軽く土を押し込み、種をまいていきます(点まき)。まき終わったら、バーミキュライト(軽石の一種)もしくは同じ培養土で覆い、軽く湿る程度に水をやります。発芽するまでは、セルトレイの表面が乾かないように日陰に置き、新聞紙などをかぶせておきます。発芽し始めたら、日当たりと風通しの良い場所に移動させます。

セルトレイでは区画ごとに種を点まきしていく(左)一つのトレイにパクチー、スイートバジル、クレソンの3種類を栽培した例

種まきから2週間前後までは、じょうろで毎日、水やりをしますが、3週間前後になったら、トレイの下に「底面給水バット」と呼ばれる資材を敷き、これに水を注ぎます。底面給水バットを使えば、1、2日留守にする時にも水やりの必要はありません。

うまく育たなくても「失敗した」と考えない

植物を栽培する際、簡単に見えて実はとても難しいとされているのが、水やりです。「水やり3年」という言葉があるほどで、栽培農家でも、その時の気温や生育状態などによって水やりの加減を見極められるようになるまでには、それなりの年月がかかるといいます。

桐野さんは「家庭菜園で大切なのは、思ったようにうまく育たなくても、『失敗した』と考えないことです。お店で売られている野菜は、プロの栽培農家が長年の経験と技術で育て上げたものですから、初心者が同じように作れないのは当たり前です。育ちが小さくても、十分おいしく食べられます。まずは育てやすい野菜からチャレンジし、だんだんステップアップして、食生活に役立つものを育てていってください」とアドバイスしています。

(メディア局編集部 田中昌義、写真提供・タキイ種苗)

あわせて読みたい