つらい現実と向き合い、もがいた末に得たもの

ソニンの明日は笑顔vol.3

特技は「過去の苦い思い出を忘れる!」
大人になって気づいた。いや、大人になって習得した技術かも知れない。
忘れる、というレベルじゃない。もはや、記憶がない、というレベル。
たまに、昔のことを、取材やらインタビューやらで聞かれることがあるのだが、いつも詳細を覚えていなくて、なかなかうまく深く話せない。
“特技”を自覚するまでは、ただ単に記憶力の悪い性分だと認識していたのだが、人に言われた時、「“辛かった記憶”を喪失させている」のだと気づいた。

「そんな特技、うらやましい」
なんて声が聞こえてきそうだが、まあこれはこれで、色々紆余うよ曲折あったわけで。

“忘れられたら良いのに…”と思う苦い辛い過去。
“あの失敗がなかったら…”いつまでも付きまとう後悔。

前を向かなきゃいけないのは分かっているけど、忘れるなんて無理。
どう向き合えば、どう処理すれば、消えてくれるのだろう。

ある日、夢で、こんなお告げのような言葉を言われる。
「1.とことん、ソレと向き合いなさい」
「2.ソレを塗り替える、先の明るい話を沢山たくさんしなさい」

さて、私の場合を少し話すと。
幼き時から自分で波瀾万丈はらんばんじょうな方だなと思うけども、特に社会人になってから衝撃的な事件が多かった。
今考えても、逃げたくなるようなことだらけだった。それでも、当時の事務所の社長は、ひたすら私をその現実から目をらさないよう、ひたすら「向き合いなさい。そして腹をくくりなさい」。そう全てをまんま受け止めさせていた。おぉ、ティーネイジャーな私、かわいそうに(笑)。
忘れないと、生きていけなかった。
記憶がない事をこう理由付けていたけど、真剣に向き合って、これ以上ないくらいに受け止めて、底まで行ったからこそ、“消化”したのではないかと。

夢のお告げ「1」。うん、向き合ってた。

これは、最近の話なんだけど。
実は、心理学の勉強を少ししていて。自己防衛機制として“昇華”という言葉があります。
意味合いとしては、《社会的に認められない強い感情や欲求を、社会に認められる形に置き換えて衝動欲求を転換する》。ネガティブなエネルギーを何か他のもので認められるように好転させる、という事で、所謂いわゆる“ストレス発散(あくまで私がここの解釈に合わせて替えた言葉)”にも近いとも言える。

私にも「全てが自分の思う通りにいかなくて、好きな事も出来なければ、嫌なことを頑張っている対価もない」。そんな時期や、「ずっと抜け出せなくて、何にもやもやしているのかわからなくて、常にストレスがまっている状態」。そんな時期もありました。
ただ、今の私は、「ストレス発散は何?」という質問に、「私は別のもので発散するわけでもない、舞台上に立っている事がそのままストレス発散になっている」と答えるでしょう。
仕事がストレス発散なんて、すごいラッキーですねなんて言われるが、そこではない。
舞台の仕事にフォーカスして活動し始めてから、すぐその感覚を得たかというと、そうではなくて。

ある女優さんもテレビで、「(色んな意味で)確立したから、無駄な事が気にならない」というふうに言っていましたが、自分の精神力も含めた中身、そして周りからの意識も、ある程度揺るぎない自分のポジションを得たならば、それは自信に変わって、自分の仕事に思いのまま集中できる。
パーフェクトとは言わないけど、私も長年もがいてやっと、今そこに足を踏み入れているのを実感している。
だからこそ、舞台上にいる時間が、何より私の中で、ストレス発散であり、浄化も昇華できているのだ。

悩みの種のソレに変わる、ポジティブになれる何かについて考え、それを実践して、ソレを塗りつぶすのです。気にならなくなるまでに。

お告げ「2」。どうやらそう生きてるみたいです。

「失恋したら、とことん泣いて嘆いて、そうしたら新しい恋をしなさい。それが特効薬」
あれって、ほんと本質の核心をついているんですね。

【ソニンのお気に入り】
基本的に記憶を残すタイプでない私に比べて、私の実姉は驚くほどに記憶力の良い人で。幼い頃の記憶も鮮明に覚えてて、細かい出来事などもたまに思い出話として言ってくるのだが、私には、さっぱり。そんな姉がこの間、自分の家の整理をしていたらこんなものが出てきたと写真を送ってきた。母親が裁縫が得意で、洋服やカバンをよく作っていたのだが、それだ(写真)。おお、これは見覚えがある! 私覚えてる! と感動していたのだが、姉は、「これはソニンので、これは私ので、これはどこそこ行った時、父親がお土産で買ってきてくれたので、これとおそろいのレターセットもあるはず」とすさまじい記憶力発揮で、この人が私の記憶力を全て吸い取ったんじゃないかと改めて思いました。

ソニン
女優

1983年、高知県出身。ダンスユニット「EE JUMP」としてデビュー後、バラエティー番組などで活躍。現在は舞台を中心に活動。2016年に菊田一夫演劇賞、19年には読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。