職場に赤ちゃんを連れてきた女性上司の言葉にあぜん

News&Column

写真はイメージです

出産・育児をしながら仕事を続ける女性が増えています。なかには、育休中に赤ちゃんを連れて職場を訪れる人もいますが、そんな時には周囲への配慮が必要かもしれません。読売新聞の運営する掲示板サイト「発言小町」には、赤ちゃんを連れてきた女性上司の言動に嫌な思いをしたという女性からの投稿がありました。上司の何が問題だったのでしょうか。専門家に聞いてみました。

首も据わらない赤ちゃんを抱かされ……

「仕事場に産まれたての赤ちゃんを連れてきて…」のタイトルで投稿したのは、トピ主「月」さん。ある日、育休中の女性上司が生後1か月半の赤ちゃんを連れて職場にやってきました。女性社員たちが「かわいい~!」と集まってきて、にぎやかなおしゃべりが始まったといいます。「月」さん自身は子供が苦手なため、最初は輪に加わりませんでした。それでも、お世話になった上司だからと、仕事が一段落したところで「月」さんがあいさつに行くと、その女性上司に「抱いてみたら?」と言われました。

まだ首も据わっていない赤ちゃんを、慣れない手つきで恐る恐る抱いてみると、赤ちゃんは火がついたように泣き出してしまいました。「やっぱり人を見てるのね。独身、彼氏なし、子供なしだと、赤ん坊も分かるのね!」。女性上司は一言、そう言い放ったといいます。

産後ハイ? それともマウンティング?

写真はイメージです

「ジョークのつもりでしょうが、大勢の前でそれを言われてしまうと、悪いことをしているわけでもないのに、すごく恥ずかしくなり、同時に『なぜここまで言われるのか』とあぜんとしてしまいました」と、「月」さんは振り返ります。その上司は、1時間も「月」さんのいるフロアに居続け、最後に「他のフロアにもお披露目してきまーす!」と言って、さっそうと立ち去ったそうです。

この投稿には60件の反響がありましたが、「このコロナ禍に赤ちゃん連れで職場に来る?」「勤務時間を狙って来て、仕事を中断させ、最後に暴言吐いていくとは、残念な上司」などと、上司の非常識さを断じる声がほとんどです。

「ジョークのつもりで言ったかもしれませんが、上司の発言は自分自身の価値を下げました。その輪の中で発言を聞いて笑っていた人の中にも、『ひどいこと言う上司だな』と感じた人はいたでしょう。出産後、久しぶりに大勢の人に囲まれてハイになっていたのだとしても、部下にそんなことを言う上司の姿を見て尊敬する人はいないでしょう」(「ままま」さん)と冷静に分析する人もいます。

同じような経験をした友人から愚痴を聞かされたという「さくら」さんは「そもそも『みんなが仕事をしている所』に、『現在無職の人が、暇つぶしに遊びに来る』状態ですよね。しかも、その理由が『赤ちゃんの披露、ママになった私の披露』で、自己顕示欲というかマウンティング願望のかたまり。職場に手続き等の用事があっての赤ちゃん同伴でも、ちょっとあいさつして顔出してすぐ帰るのが常識的な社会人では」という意見を寄せてくれました。

「赤ちゃん苦手」と言いづらい、女性たちの同調圧力

赤ちゃんを苦手と感じていても、なかなかそうは言いづらいという意見もありました。「ヒヨ助」さんは「私も苦手なので、あまり近寄らないでいたい派なのですが、そう言うとなぜか『赤ちゃんが苦手な人=冷酷な人』というイメージができちゃうんですよね……」と指摘します。

「わたしも乳幼児が苦手なので、そういうふうに産休、育休に入った人が遊びに来ていても仕事してます。『かわいいですねー』くらいしか言うことないですし、妊活中の社員だっています。仕事中、女子社員のほとんどがいなくなったら電話とか困るし」と言う「ぶーこ」さんのように、距離を置くケースもあるようです。

仕事に支障のない登場の仕方を

「月」さんの上司の言動は、何が問題だったのでしょうか。「子連れ出勤」の普及に20年以上前から取り組んでいる授乳服メーカー「モーハウス」(本社・茨城県つくば市)代表で、東京大学大学院客員研究員の光畑由佳さんに話を聞きました。

「赤ちゃんを職場に連れてくること自体は、上手にやれば周囲と良い関係を作ることにもつながるので応援したいと思いますが、このケースはあまりにもひどいし、残念ですね」と光畑さんは話します。

まず問題なのは、勤務時間中にあまりにも長い間、他の社員が席をはずすような状況にしてしまったことです。また、赤ちゃんの抱っこを強要し、赤ちゃんが泣き出す状況を作ったことや、赤ちゃんが泣いてしまったら保護者が全面的に責任を負うべきなのに、まるで部下が悪かったかのように言ったことなど、いくつかポイントがあるといいます。

「赤ちゃんの存在を“絶対的な善”と勘違いする人がいますが、職場はあくまで仕事の場。仕事に支障をきたすような時間帯や登場の仕方はダメですね。また、赤ちゃんを苦手とする人が不愉快に思わないような振る舞いをする必要があります。周囲も、赤ちゃん連れだからといって、テンションを上げて近づく必要はありません」と光畑さんは指摘します。

「とくに、育休中のあいさつ回りは、復帰後、自分がどのように仕事をしたいかを話すチャンスです。この上司の方は、自分のことを話すべきでした。赤ちゃんは自然と注目を集めますから、ニコニコと自然体で接してもらうだけで十分だったはずです」

かわいい我が子も、他人の目から見れば、ただの赤ん坊。誰かを傷つけるような言動は許されないのは当然のこと、「産後ハイ」などと陰口を言われないように振る舞いたいものですね。

(読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

【紹介したトピ】
仕事場に産まれたての赤ちゃんを連れてきて…

光畑由佳(みつはた・ゆか)
「モーハウス」代表、東京大学大学院客員研究員

 岡山県倉敷市出身。電車内での自身の授乳体験から、授乳用ブラジャー、授乳服の企画・販売を行う「モーハウス」を設立。古くて新しいワークスタイルとして、「子連れ出勤」を青山ショップや百貨店などで実践中。NPO法人「子連れスタイル推進協会」代表理事。コロナウイルス対策で全国一斉休校となったのを受けて、事業所向けに子連れ出勤マニュアルを公開するなど精力的に活動している。

モーハウス:https://mo-house.net/

NPO法人「子連れスタイル推進協会」:http://kozurestyle.com/

コロナ禍の子連れ出勤で気をつけたいこと:http://kozurestyle.com/news/2020sien/