飲食店で漬物ぽろり…自分で拾ったらマナー違反ですか?

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食事中にナイフやフォークを落とした場合、自分では拾わず、店の人に拾ってもらうのがマナーとされていますが、大衆的な食堂でも同じようにするものなのでしょうか。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」では、違和感のあるシーンに出くわしたという女性からの書き込みがあり、議論が沸騰しています。どう考えたら良いのでしょうか。専門家に聞きました。

「漬物って…自分で拾いなさいよ!」

「『落としたので拾って下さい』に対して違和感・・」のタイトルで投稿してきたのは、トピ主「すいか」さん。ある日、友人と「少し混んでいる大衆的な飲食店」に行きましたが、隣のテーブルの30歳代らしき女性が、何か足元にこぼしたのを見かけました。

その女性は、通りかかった店員に「落としたので拾ってください」と声をかけ、店員がテーブルの下で拾っている間、お礼を言わず、足もどけないまま食事を続けていました。しかも、トピ主さんが驚いたことに、落としたのは、漬物一切れ。「え?自分で拾わないの? テーブルにあるティッシュで拾えるじゃん、と思いました」とつづりました。

この投稿に、60件以上の反響(レス)が寄せられました。

「大衆的な飲食店で『お漬物』って…(笑) 自分で拾いなさいよ!」とツッコミを入れたのは「アールグレイ」さん。「ラクシュミー」さんも、「高級レストランでは拾っちゃいけない……って映画で見たけど(笑)。一般的には、食事の後に自分で拾いますよね」とコメントします。

「北風と太陽」さんは、「ドレスコードがあるような高級フレンチレストラン等では、下に物(食器等)を落としたらスタッフを呼んで拾ってもらうのがテーブルマナーとなっていますが、大衆向けの飲食店では、自分の失態は自分で始末するもの」と説明。「チョキ」さんは、「お店の格やスタンスによる」として、「お客様が下を向いて拾うのではなく、きちんと『係』がいてその人の大切な仕事かもしれないからね。お店によってはテーブルごとにフロアー(担当)が、着く場合もある」と寄せました。

いずれも、TPO(Time=時間、Place=場所、Occasion=場合)に応じて行動すべきだという考えのようです。

自分で拾うのは、はしたない?

写真はイメージです

一方で、落としたものは店員に拾ってもらうのがマナーだという声も。「帰り際に『落としてしまったので処理お願い』と言うでしょうね」と「アンジェリーナ」さん。「自分で拾う方が、マナーがなくてはしたないですよ。拾うのは店員の仕事」と続けます。

「いなちゃん」さんも、「大衆的な飲食店であろうと、食事の途中、落としたものを自分で拾うというのは不作法だし、食事の途中で手を汚すのは感染対策上よろしくない」と主張します。「りり」さんも「子供の頃に、レストランなどで何か落としても自分では拾わないと教えられていました。それが当たり前と思っていました」とつづります。他にも、海外住まいが長い人からも、同様の意見が寄せられました。

マナーの本質は思いやりの心

賛否が分かれるところですが、どう考えればよいのでしょうか。テーブルマナーに詳しいマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに聞きました。西出さんは「残念ながら、この女性の行動は、マナーとしての配慮に欠けていたと言わざるを得ないでしょう」と話します。

「というのも、そもそもマナーとは、相手に対する思いやりの気持ち、心から生まれているものです。こういうときにはこうしなければいけないという作法のことではありません。だから、状況などに応じて対処の仕方は変わっていいものなんです」

今回のケースでは、▽気軽な飲食店▽混雑している時間帯▽漬物を落としたのは自分の足元であり、通路など他の客が踏むおそれのない場所――といった条件を勘案すると、忙しい店員をわざわざ呼び止めてまで拾わせる必要はあまりないと考えられます。「お願いします」「ありがとうございます」などのあいさつがなかったのも、残念なポイントです。

どうすれば良かったのか…迷ったときの考え方

「こういうことに正解はありませんが、もし私がその女性だったら、食べ終わって席を立つ直前に、ティッシュペーパーなどを持ち、自分で拾います。そしてティッシュペーパーにくるみ、お皿の上に置くでしょう。わざわざ店員さんにはお願いはしないと思います」と西出さん。

「落としたものをお皿に戻すなんて、と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、ティッシュペーパーで包めば問題にはならないと考えます。そして、店員さんにその旨伝えることができればなおよしと思います。どうしても取りにくい環境であれば、店員さんがお皿を下げにきたり、そばを通ったりした際に、『申し訳ありません』と言って事態を伝えましょう。いずれにせよ、食べ終わったあとの話です」とアドバイスします。

西出さんによると、海外のレストランで、落としたものを客が自分で拾わないのは、チップ制を取り入れる店が多いから。客が拾うと、店員の仕事を奪ってしまうことになるのです。

西出さんは、「マナーに迷った時は、「TPOに人(=person)、自分の立場(=position)を加えた『TPPPO』を考えて行動しましょう。海外とは違う日本の事情や、店の雰囲気、その人と自分の立場を考えあわせて『相手ファースト』で柔軟に動けるようになるといいですね。形にとらわれすぎるのは、本来のマナーではないと思っています。状況に応じて形は変えていいのです」と強調します。

マナーって難しいですね。形に縛られず、周囲への配慮を第一に動けるようになりたいものです。

(読売新聞メディア局編集部 安藤光里)

【紹介したトピ】

「落としたので拾って下さい」に対して違和感・・

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西出ひろ子(にしで・ひろこ)
マナーコンサルタント

美道家。ヒロコマナーグループ ウイズの代表取締役会長。人材育成やマナー研修、コンサルティングなどを行い、NHK大河ドラマ「龍馬伝」や2014年公開映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのマナー指導・監修も務める。近著に『50歳からのマナー』『テレワークマナーの教科書』『さりげないのに品がある 気くばり美人のきほん』など。